ツボカビに両生類が大きな被害を受けたときに、私たちは気づくべきだった。
微生物と生物の依存関係ががらりと変わりつつあることに。
新型コロナ・パンデミックは始まりに過ぎない。21世紀は感染症の世紀だ。次は
菌との戦いである。そして頼りの抗生物質は、耐性菌の登場とともに終わる。
なす術はないのか。いや、あると私は考えている。植物のチカラの利用である。

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GSEにはエビデンスがあり、MISTECTには実績がある

GSEには800種類の菌・カビ・ウイルス・寄生虫に効果があることが研究で確認されている。もちろん、インフルエンザウイルス・新型コロナウイルスを含むし、ノロウイルスも抑制する。食品や化粧品の品質保持剤として使われてきた30年の実績があり、食中毒原因菌から連鎖球菌、MRSAなど気になる菌やカビの多くにも効果がある。

GSEでなくても、効果のある植物エッセンスは多数ある。ヒノキチオールなども、おそらく使えると思う*16。こうした他の植物エッセンスではなく、GSEを選択した理由は以下の通りだ。

  • 過去30年間にわたって、多数の食品・化粧品の品質保持剤や点鼻薬・吸入薬などへの活用実績がある上、健康被害が出ていない
  • こうした利用が進んでいるため、エッセンス抽出が工業化されていて、生産も安定している
  • 水溶液は無色透明でかつ無臭だから、非常に扱いやすい

つまり、入手が安定しており、ヒトへの安全性が確認されていて、無臭なのが大きい。このGSEを効率よく室内の露出表面に付着させるMISTECTは、保育園やクリニック、音楽教室、音楽ホール、老人介護施設、飲食店などで実績をあげている。しかもウイルスだけなく、菌・カビ・匂いにも効果がある。

MISTECTは室内の露出表面に潜む菌・カビ・ウイルスを持続的に抑制するシステムである。落ちてくるウイルスを表面で抑制し、室内全体の「感染性のあるウイルス量」を減らす。とくに効果があるのは塵埃感染と接触感染の予防である。空気感染対策はできないが*17、これは換気や空気清浄機との併用で解決できる。

これからノーマスクが増えてくる。満員電車などリスクの高い場面や、病院の待合室など基礎疾患のある感染弱者がいる場面ではマスクを継続すべきだと思うが、そうではない場所でのマスク装着率はさがってくるだろう。

だからこそ、GSEコーティングが効果を発揮する。マスクをとれば、大量のウイルス入り飛沫がテーブルや床に落ちることになるからだ(逆に、マスクをとらないなら、飛沫が落ちることもないので、トイレ以外では塵埃感染対策も不要である)。

GSEは国が安全性を確認した既存添加物であり、海外ではサプリメントとして飲まれている。化粧品の品質保持剤に使われているし、アメリカのベストセラー点鼻薬Xlearの主要成分でもある。そして、イタリアの製薬会社Prodeco Pharmaは、GSEを成分とする吸入薬を販売している。

つまり、GSEは世界中で飲んだり塗ったり、点鼻したり吸入したりしている植物エッセンスだ。この安全性は、本当にメリットが大きい。点鼻薬Xlearを新型コロナ患者に治療の補助として投与したら、早く治癒したという研究もある*18。その論文でも強調されているのは、GSEの安全性だ。

MISTECTは鳥インフルエンザも視野にいれて開発

もともと鳥インフルエンザウイルスは鳥たちと共存しているウイルスだった。感染しても(鳥たちは)無症状というウイルスだったのである。それがある日、家禽の中で変異し、高病原性鳥インフルエンザウイルスが出現したという経緯だ。

当初は、家禽限定の病気だった。自然界の鳥たちには無関係だったのである。しかし、ウイルスは本当に厄介だ。自然界にひろがらないように対策をしていたにもかかわらず、感染がひろがりはじめる。2010年頃には、野鳥が高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染して死んだり、感染した野鳥を食べた他の動物が死んだりするのが目につくようになった。

この事実を把握していたので、MISTECTは新型コロナウイルス対策だけでなく、鳥インフルエンザ対策も視野にいれて実用化した。GSEを効率よく室内の露出表面に付着させることができるMISTECTなら、鶏舎内の鳥インフルエンザウイルスを劇的に減らすことを期待できるからだ。これで感染確率を下げることができるはずである*19。また、GSEは鶏の唾液や糞に対しても、ウイルス抑制効果を期待できるから、周囲への波及を抑止できる可能性もある

ところで、鳥インフルエンザが発生すると、全数を殺処分している。2022‐2023シーズンは2023年3月28日時点で鳥インフルエンザの発生は26道県82事例に及び、合計約1,701万羽が殺処分されている(農林水産省「令和4年度 鳥インフルエンザに関する情報について」)。

発生後速やかに殺処分されている理由を考えてみたことがあるだろうか。懸念されているのは、密度の高い養鶏場で感染が蔓延すると、ウイルスに変異機会を大量に与えてしまうことである。そこから、ヒト・ヒト感染する高病原性鳥インフルエンザウイルスが発生してしまうかもしれない。それを防ぐための殺処分である。

これまでも粛々と発生のたびに殺処分されてきたのだが、これまでは「たまたま」で「運の悪い」出来事だった。しかし、2022年から様相はがらりと変わっている。これまでと変わった点を列挙しておこう。

第一に、同時多発的に世界で発生するようになった。世界中の養鶏業において殺処分が続いていることから*20、鶏卵の価格まで上昇している。高病原性鳥インフルエンザウイルスが、渡り鳥とともに世界を旅している証拠だ。こうなるともう、伝播を防ぐのは難しい。

第二に、2022年以降、鳥から感染したとみられる哺乳類の大量死が世界中で発見されている。北半球でも南半球でも、キツネ、イタチ、タヌキやアシカ、アザラシなどがH5N1に感染して死んでいる。しかも、スペインで起きたミンクのH5N1感染例では、哺乳類から哺乳類への感染が観察されている。明らかに鳥類だけの病気ではなくなってきた。哺乳類もターゲットになるように変異しているということだ*21

そして第三に、ヒトに感染する例の報告が増えている。以前からヒトに感染する例はあったが、これだけ動物への感染例があるのだから、増えるのも当たり前だろう。

こうした変化から、WHOもH5N1がヒト・ヒト感染をしはじめるリスクがあると警告をしている。まだヒトに感染した例のみで、ヒトからヒトへの感染は確認されていないが、眼前に迫っていると考え、備えるべき段階だ。
cf.
WHO says avian flu cases in humans ‘worrying’ after girl’s death in Cambodia
https://www.theguardian.com/world/2023/feb/24/who-says-h5n1-avian-flu-cases-in-humans-worrying-after-girls-death

この記事(微生物との戦争――ヒトと動物、環境と微生物の葛藤)で紹介したが、2023年1月に発表された研究で、高病原性鳥インフルエンザウイルスがシベリアの冷凍庫に保管され、渡り鳥とともに世界中を旅していることが明らかになっている。

もはや、大変残念なことだが、防御を固めるしか養鶏を守る有効な方法論はない。

鶏に悪影響なく、鶏舎内全体に使えるGSE

しかし、困ったことに、頼れる薬剤がない。これは、多くの薬剤が生物にとって有害だからである。ウイルスに効果のある濃度で薬剤を鶏舎に散布すると、鶏が薬剤のために不健康になる。これでは元も子もない。

これは新型コロナウイルス対策でも直面している問題である。高濃度オゾン発生器をオフィスに置けば、空間中のウイルスも全滅させられる。しかし、そうすると、その場にいる人間も病院送りだ(最悪、死亡する*22)。

小鳥を飼っている人なら、アルコール主体の除菌ティッシュでケージを清掃するのは禁忌だとよく知っているだろう。農林水産省が「鳥インフルエンザウイルスを消毒できる」といって推奨している薬剤は、逆性石けん、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、消石灰である。ヒトの足元を消毒したりするのには使えるが、鶏舎全体に噴霧できないものばかりだ。

次亜塩素酸水を鶏舎内で噴霧している事例もあるようだが、実効性はかなり疑わしい。次亜塩素酸は有機物に反応して除菌効果を失う上、効果に持続性がないから、相当頻繁に噴霧をして、ビシャビシャにしないとウイルス対策にはならないだろう。これでは鶏舎内の環境がむしろ悪くなる。しかも、効果はその場限りで、噴霧後に落ちてきた鳥インフルエンザウイルスを抑制することができない。

GSEなら、有機物が多い鶏舎の環境でも効果を発揮できる。海外では小鳥のケージの清掃にGSEを使えと言われているくらいで、安全性も高い(我が国でも食品添加物・既存添加物としての安全性確認を動物実験で行っている。国立医薬品食品衛生研究所:2002年度)。

そしてMISTECTは、GSEの水分を飛ばし、GSE粒子のみをブラウン運動で拡散するシステムである。鶏舎全体の露出表面に付着し、落ちてくる鳥インフルエンザウイルスを抑制し続ける。環境を悪化させることなく、かつ、効果が持続する点が重要だ。これは実験してみないとわからないが、水をはじくため除菌が難しい羽毛にも付着し、効果を発揮する可能性もある。

現時点では実証できていないので、あくまでも可能性である。ただ、GSEの菌・カビ・ウイルスを抑制する能力とMISTECTの性能(新型コロナウイルスを対象にした実績や消臭能力の高さ)からいって、

  1. 鳥インフルエンザの感染リスクを減らす能力
  2. その感染をひろげない能力

があると考えている。


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注記

*16 たとえばこの論文をみると、ヒノキチオールも新型コロナ対策に活用できる可能性は十分にある。
cf.
Zn2+ Inhibits Coronavirus and Arterivirus RNA Polymerase Activity In Vitro and Zinc Ionophores Block the Replication of These Viruses in Cell Culture
https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1001176

*17 浮遊中のウイルスにGSE成分が空気中でぶつかる確率は天文学的に低い上、ぶつかったとしても抑制できる保証がない(それを確認する実験を行うことさえ難しい)。空気感染対策のベストは換気だ。続いて空気清浄機だろう。環境によっては、222nm紫外線の導入を考えるのも手である。

*18 Xlearに新型コロナの中等症患者の治癒を早める効果があったという研究はこちら
Potential Role of Xylitol Plus Grapefruit Seed Extract Nasal Spray Solution in COVID-19: Case Series
https://www.cureus.com/articles/43909-potential-role-of-xylitol-plus-grapefruit-seed-extract-nasal-spray-solution-in-covid-19-case-series

さらにXlearの成分のうち、GSEが新型コロナウイルスを抑制していることを確認した研究がこちら(プレプリント)
A Nasal Spray Solution of Grapefruit Seed Extract plus Xylitol Displays Virucidal Activity Against SARS-Cov-2 In Vitro
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.11.23.394114v1

*19 GSEが鳥インフルエンザウイルスを抑制することは、研究で確認されている(日本の大学の研究だ)。
cf.
Inhibitory effect of grapefruit seed extract (GSE) on avian pathogens
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/81/3/81_18-0754/_article

*20 鳥インフルエンザ感染が確認された場合、全数を殺処分する。これは周囲への拡がりを抑えることだけが目的ではない。鶏の間でインフルエンザウイルスが感染を繰り返すと、変異体の発生確率が高まるからこその処分である。恐れているのは、増殖時の変異によってヒト・ヒト感染をするH5N1ウイルスが生まれてしまうことだ。

*21 多数の報道・報告がある。

◆ペルーで大量のアシカがH5N1で死んでいるという報告記事
First birds, now mammals: how H5N1 is killing thousands of sea lions in Peru
https://www.theguardian.com/environment/2023/mar/21/bird-flu-peru-sea-lions-suffer-death-beach-aoe-h5n1

◆オランダで見つかったキツネやイタチ、タヌキなどの死亡例を解剖したら、H5N1に感染していた上、ウイルスは主に脳から見つかり、鳥類から通常感染したと思われるという論文
Zoonotic Mutation of Highly Pathogenic Avian Influenza H5N1 Virus Identified in the Brain of Multiple Wild Carnivore Species
https://www.mdpi.com/2076-0817/12/2/168

◆アメリカ北東部の海洋哺乳類に鳥類からのH5N1が波及しているという報告。死んだアザラシのウイルスゲノムの調査で、哺乳類への適応に関連するアミノ酸置換を含む変化があったという。
Highly Pathogenic Avian Influenza A(H5N1) Virus Outbreak in New England Seals, United States
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/29/4/22-1538_article

*22 低濃度オゾン発生器なら人体に健康被害を及ぼすことはないが、一方でウイルスの抑制にも40分程度かかるので、感染予防には役立たない(消臭能力はある)。


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