ツボカビに両生類が大きな被害を受けたときに、私たちは気づくべきだった。
微生物と生物の依存関係ががらりと変わりつつあることに。
新型コロナ・パンデミックは始まりに過ぎない。21世紀は感染症の世紀だ。次は
菌との戦いである。そして頼りの抗生物質は、耐性菌の登場とともに終わる。
なす術はないのか。いや、あると私は考えている。植物のチカラの利用である。

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「植物のチカラを借りよう」と考えた理由

この二つの理由から出した私の結論は、「感染症の世紀を乗り切るには、植物のチカラを借りるしかない」である。

野菜を含む植物の病気を調べてみるといい、我々人間と同様、菌・カビ(真菌)・ウイルスにやられている。「桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿」という表現を聞いたことがある人もいるだろう。桜は菌に弱く、切り口から菌の侵入をゆるし、枯れてしまうことがある(この事実を知っていると、桜の枝を折って持ち帰る人物への怒りが増す)。対して梅は菌に強いことからの成句である。

GSEが除菌能力をもっているのは、我が身を守るためと推定できる。そして、注目は戦いの歴史の長さである。GSEの歴史ではない。グレープフルーツの種子が菌・カビ・ウイルスと戦ってきた歴史だ。

グレープフルーツはブンタンとスイートオレンジの自然交配で生まれたとみられており、その歴史は300年ほどになる*15。この間、種子は菌・カビ・ウイルスと戦い続け、そしていまのところは耐性菌・耐性ウイルスが観察されていない。もしもGSEを無力化する耐性菌や耐性ウイルスが出現していたら、発芽もできず、あるいは発芽してもすぐに感染し、絶滅しているだろう。

これは希望である。新型コロナウイルス感染で免疫がダメージを受け、菌感染症が増えると抗菌薬で菌対策をすることになるわけだが、世界中で抗菌薬を使いすぎると、次の瞬間には、薬剤耐性をもつ連鎖球菌などが登場してくる可能性がある。

ここが厄介なのだ。手軽な薬剤で手軽に菌をやっつけにかかると、耐性菌が出てしまうリスクがある。疥癬の特効薬で、ノーベル賞もとったイベルメクチンも、新型コロナ対策で注目され、無意味に(効果がないことは複数の研究で確認されている)多用された結果、薬剤耐性の疥癬が登場しているようだ。本当に迷惑な話である。
cf.
BREAKING! Extensive Ivermectin Misuse During The COVID-19 Pandemic Is Possibly Leading To Rising Cases Of Drug Resistant Scabies!
https://www.thailandmedical.news/news/breaking-extensive-ivermectin-misuse-during-the-covid-19-pandemic-is-possibly-leading-to-rising-cases-of-drug-resistant-scabies

対して植物エッセンスは、GSEに限らず、100年単位、いや1000年単位で耐性菌問題をつくりだしていない。笹の葉や柿の葉、ハランの抗菌作用が効かない耐性菌が登場し、寿司弁当が全滅したという経験をするまでは信用していい。頼るべきは植物の知恵、というのが私の意見である。

GSEや緑茶フラボノイドは抗酸化物質であり、除菌・不活化の仕組みが他の薬剤とは異なる。事実、GSEはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)に対しても抗菌作用を示すことが確認されている。
cf.
Grapefruit Seed Extract as a Natural Derived Antibacterial Substance against Multidrug-Resistant Bacteria
https://www.mdpi.com/2079-6382/10/1/85/htm

「ブラウン運動」を利用してGSEを自動コーティング

ヒトに安全で気楽にたっぷり使えるものでありながら、菌・カビ・ウイルスを抑制でき、効果に持続性があり、いまのところ耐性菌問題とも無縁な植物のチカラを借用するのがGSEだ。

冒頭で触れた通り、私は感染拡大しはじめるとなかなかおさまらないのはなぜかと考え、塵埃感染が「穴」ではないかと考えていたところに、この植物エッセンスに出会った。

次の課題は、GSEを使って、環境消毒をどう実施するかである。床などから飛沫核やウイルスが付着したホコリが浮遊して、それを吸い込む塵埃感染と、うかつな接触感染の両方を阻止したい。この二つの穴を塞いだら、あとはマスクと換気でなんとかなるはずだ。

そこで実用化したのが、MISTECTマイクロスプレッダである。GSE水溶液をミクロン単位で空間中に噴霧する装置だ。

MISTECTマイクロスプレッダ MS-IP01(2021年8月26日発売)

MISTECTマイクロスプレッダは、ブラウン運動という自然の物理現象を利用して、部屋全体を手間なくGSEコーティングするシステムである。JAXAが特許をもっている特殊なノズルを使ってGSE水溶液を空間に噴霧する。空間除菌装置だと誤解されることが多いが、そうではない。

放出されたGSE水溶液は瞬時に蒸発し、GSE成分のみが空間中を漂う。空間噴霧はこれが目的だ。GSEをブラウン運動させ、室内の隅々まで拡散させることが目的である。そして時間の経過とともに、GSE成分は室内の露出表面に付着していく。複数の実験で、よく表面に付着することは確認している。

つまりこれは表面除菌システムであり、自動GSEコーティングシステムである。利点を列挙しよう。

  • ヒトに安全なので、気楽に作業ができる
    薬剤の入れ換えからなにから、ルーズにやって問題ない。
  • 手作業が不要になる
    室内のどこにでもいいから設置して、タイマー稼働させるのみで終わる。
  • 設置場所も問わない
    どこに置いてもブラウン運動で自然と室内の全体にGSEがひろまるので、すべて適当でいい(ただし空調はとめたほうがいい)。
  • 室内を濡らさない
    GSE水溶液を床に散布すると、要は水をまくのと同じだから影響が大きい。MISTECTマイクロスプレッダは水分を蒸発させてGSE成分のみを飛ばすので、室内は濡れない(湿度はあがる)。
  • 短時間で終わる
    成果を出している使用例は、200㎡あたり50ml/日の噴霧で、MISTECTマイクロスプレッダはたったの6分間の稼働である。
  • ランニングコストが安価
    極めて効率よく室内の露出表面の全体にGSEをコーティングできるため、ランニングコストが安価で済む。

この装置は、マスクを外す部屋(ウイルス入り飛沫が落ちる部屋)やトイレに効果的だ。塵埃感染と接触感染を防ぐ(空気感染は防げない)。ノーマスクにしたオフィスやクラスルーム・レッスンルーム、マスクをとる喫煙ルームや舞台、トイレなどでの利用を想定している。

保育園で実施中の様⼦。上に向かって GSE ⽔溶液を噴霧する。⽔分は
瞬時に蒸発。GSE のみがブラウン運動をし、露出表⾯に定着する仕組み

ホテルのルームメイク前、病院の防護服を脱ぐところ

加えて、ぜひMISTECTを使ってもらいたい場面が二つある。ホテルの部屋と医療従事者が防護服を脱ぐ直前である。

ホテルの部屋は新型コロナウイルス感染症が5類になる2023年5月8日以降、厄介なことになると考えている。感染者に対する療養期間(つまり、「感染性があるから出歩くな」という期間)がなくなるからだ。感染していようが自由に外出してよい。「コロナ陽性? 熱がないなら出てこい」と無茶をいう上司も登場してくるだろう。

日本では国が医学的根拠なく療養期間を短縮したあと、極めて大きな被害が出た第8波が発生している。5類化は療養期間の短縮どころか、撤廃だ。そしてもちろん、ホテルの部屋でマスクをし続ける人はいない。

当然に、ウイルスを盛んに吐出する人の宿泊が増え、ベッドメイクや清掃で感染するリスクが高まることになるだろう。塵埃感染を考えれば、次に宿泊する人に感染することも十分にあり得る。パンデミックから3年が経過して、ついにウイルスが野放しになるわけである。チェックアウト後にMISTECTを数分間実施するだけで、このリスクを減らせる。

一方、防護服を着替える瞬間は、医療従事者にとって最も緊張する瞬間だ。たとえば小部屋にMISTECTを設置して頻繁に噴霧し、そこで一休みするようにしてもらえば、髪の毛から防護服の隅々までGSEが行きわたるので、着替えの緊張を緩和することができる。人のいない部屋で実施するのが前提のマシンだが、医療従事者は高性能マスクをきちんと着用しているので、吸い込むこともない(むしろマスクのウイルスを抑制する結果になるだろう)。

感染対策では、距離と時間を意識するべきだと書いた。ワクチンも接種済で、ある程度の免疫がある場合は、ゼロウイルスではなく、レスウイルスでいい。大量のウイルスに曝露しないようにすればいいのである。

しかし、知らずと積み重ねてしまうことがある。ホテルのシーツの処理が典型例で、1枚や2枚の処理ではどうということはなくても、部屋を重ねていくごとに少しずつ曝露し、閾値を越えてしまう(感染してしまう)ことがある。ルームメイクの前のMISTECTで、シーツも含めてウイルス量を減らすことで、それを避けられるはずだ。

本当は家庭でもぜひ使っていただきたい。家庭内感染を防ぐのにぴったりの装置だ。自宅療養の感染者の動線に使うといい。しかし、申し訳ないことだが、価格の問題がある。MISTECTのような「自動的にやってくれる感」はないが、家庭ならGSE水溶液で、スプレーして使うことが前提のBNUHC-18のほうがいいだろう。

お勧めはフレアソルスプレー(超ミストスプレー)との組み合わせである。細かい霧となって噴霧できるタイプだ。重点的にGSEを使っていただきたいのが、トイレと洗面所である。前者は便に汚染されるし、後者は歯みがき終了時の口すすぎでウイルス入り飛沫が拡散する。トイレと洗面所にGSEを使っておけば、効果の持続性に期待できる。

注記

*15グレープフルーツはミカン科の植物で、発見されたのは1750年代のこと。西インド諸島で見つかったものだ。その後、系統分析がされ、ブンタンとスイートオレンジの自然交配で生まれたものと分析されている。そのきっかけとなったのが、1693年にブンタンの種を東インド諸島から西インド諸島に輸送したことだという。
cf.
Grapefruit History
https://www.thenibble.com/reviews/main/fruits/grapefruit-history.asp


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