ツボカビに両生類が大きな被害を受けたときに、私たちは気づくべきだった。
微生物と生物の依存関係ががらりと変わりつつあることに。
新型コロナ・パンデミックは始まりに過ぎない。21世紀は感染症の世紀だ。次は
菌との戦いである。そして頼りの抗生物質は、耐性菌の登場とともに終わる。
なす術はないのか。いや、あると私は考えている。植物のチカラの利用である。

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脱・抗生物質の可能性

さらに、鳥インフルエンザ対策以外の効果も期待できるだろう。GSEはサルモネラ菌を含む800種類の菌・カビ・ウイルスを抑制する能力があるからだ。しかも耐性菌をつくりにくい。この点にも、意義がある。

日本ではあまり認識されていないが、養鶏には耐性菌問題を生んだ黒歴史がある。飼料に抗生物質が大量に混ぜられた時代があり、その結果として耐性菌を発生させてしまい、薬の効きにくい食中毒が発生したという過去である。

鶏への抗生物質投与には目的が二つある。第一は、成長促進だ。1948年、トーマス・ジュークス(Jukes, Thomas H. 1906-1999)が鶏の飼料に抗生物質をまぜておくと、成長が早まることを発見してからである。以後、成長促進剤として急速にひろまった。つい最近まで、人間に使う量よりはるかに多くの抗生物質が鶏に投与されてきたという*23

第二は、病気の予防だ。ヒトの場合は病気になってから投与するものだが、何万羽もの鶏を飼育している現場では、病気の鶏を発見して治療するより、予防的に抗生物質を使うほうが、結果としてコストが安くなるという判断だ。成長促進もできるから、一石二鳥というやつである。

しかし、この抗生物質の投与が大きな問題をひきおこした。耐性菌問題である。やみくもに餌に抗生物質を混ぜていたら、菌の側が耐性を身につけてしまった。これが発覚したきっかけは、患者に抗生物質を投与しても効き目のない食中毒が発生し、子どもたちが命を落としたことである(イギリス)。

これを受けて、世界は抗生物質の投与を禁止する方向に動いた。2015年5月にWHOが国際行動計画を採択。2016年9月の国連総会では、対策の強化を推進することが決議されている。日本もこれを受けて農林水産省が規制を始めている*24

鶏の病気を防ぐために抗生物質を日常的に与えていたら、抗生物質の効かない耐性菌が生まれ、ヒトが危険にさらされるようになった。厚労省の調査によれば、2015‐2017年度の間に国産の鶏肉の59%から薬剤耐性菌が検出されたという。かなり怖い話だ*25。カンピロバクターも怖いし、やはり鶏肉はしっかり火を通して食べるべきだろう。

かといって、なにもしないで鶏が病気になると、そのぶん利益は減る。耐性菌をつくる可能性が低いGSEを活用してみるべきだと思う。新型コロナウイルスによって菌・ウイルスとの厳しい戦いが始まってしまい、菌感染症の治療に抗生物質を多用することが決定的ないま、余計な場面での抗生物質の利用はなるべく避けたい。

抗生物質と異なりGSEに鶏の成長を促進する機能性はないと推定されるが、鳥インフルエンザのみならず、他の病気予防には効果が高いはずだ。養鶏が抗生物質依存から脱却できれば、耐性菌出現リスクを減らすこともできる。

植物のチカラを利用する漢方的アプローチ

GSE利用先進国であるアメリカなどでは、GSEはサプリメントや家庭薬の扱いがされており、たとえば以下のようなベネフィットが紹介されている。

  • カンジダと闘う
  • 抗生物質耐性のある尿路感染症に効果がある(尿路結石の家庭薬)
  • 真菌感染症を治す
  • 水虫・爪カビの改善(外用)
  • 消化器系由来の湿疹の改善
  • 喉・鼻・耳・口腔などに使って感染症対策

出典:6 Grapefruit Seed Extract Benefits You Won’t Believe
https://draxe.com/nutrition/grapefruit-seed-extract/

ほかにも、以下のサイトではGSE濃縮液(うすめて使うタイプのもの)を前提にした利用法が18項目挙げられているほか、注意事項として「飲用は1日1500mgまで」と書かれている。BNUHC-18は最初から薄い水溶液にしたものなので、コップ1杯や2杯では到底この数値にはならない。

18 Amazing Grapefruit Seed Extract Benefits
https://homeremedyshop.com/18-amazing-grapefruit-seed-extract-benefits/

ただし、これらの情報は民間療法的な、まさにサプリメントとしての情報で、用法容量も副作用も明確ではない。日本でいうと、ゲンノショウコを煎じて飲め、みたいな感覚のものだ。ある意味、漢方的である。

つまり、到底「クスリ」と呼べるレベルのものではないから、真に受けるのは危険である。それでもご紹介したのは、抗酸化物質のカタマリであるGSEが、菌・ウイルスとの戦いの武器になりそうな可能性を感じていただけるだろうと考えたからだ。

しかし、カンジダに効果があるのは、ひょっとすると注目かもしれない。現在、アメリカの病院では、抗真菌薬に耐性をもつCandida aurisがひろがりはじめており、問題になっている。感染すると致死率が30‐60%とかなり高い。GSEが感染予防に役立つ可能性がある。
cf.
Candida auris: what you need to know about the deadly fungus spreading through US hospitals
https://theconversation.com/candida-auris-what-you-need-to-know-about-the-deadly-fungus-spreading-through-us-hospitals-202493

さて、ここからはまったくの仮説である。MISTECTを鶏舎で使った場合、鶏舎内のウイルスを減らすだけでなく、鶏が感染することを予防する可能性もあると考えている。空気中を漂ってブラウン運動するGSEを鶏も多少は吸入することになるからだ(新型コロナ対策としてのMISTECTは、人のいない部屋で使うことが前提であり、ヒトが吸入することはない。GSEを露出表面に付着させるための空間散布である)。

すでに軽く紹介しているが、GSEを成分とするアメリカのベストセラー点鼻薬・Xlearを新型コロナの中等症の患者に治療の補助として使ったところ、早く治癒したという研究がある。付記に論文をまとめておくが、GSEの成分である5種類のフラボノイドのそれぞれが、ウイルスに感染することを防いだり、増殖を防いだりする機能性をもっているから、不思議な結果ではない。

共同研究相手を募集

残念ながら、現時点で鳥インルエンザ対策としてのGSEとMISTECTの利用は、仮説ばかりである。1000年単位で菌・ウイルスから我が身を守ってきた植物のチカラを菌・ウイルス対策に使うことを思いつき、MISTECTマイクロスプレッダを実用化し、GSEも調達した*26が、養鶏の現場で確認していただかなければ、先に進むことができない。

興味をもっていただけた方は、以下のフォームからご連絡をいただけると幸いである。まずは感染が発覚した鶏舎で使ってみるなどの実証を重ねていきたいと考えている。

インフォリーフ株式会社お問い合わせ窓口
https://www.infoleaf.co.jp/inquiry/

まとめ

最後に、改めて私の持論をまとめておく。

  • 新型コロナウイルスはヒトの免疫を攪乱する。このため、COVID-19感染が世界規模でひろがったことにより、ヒトと菌・ウイルスとの力関係が一変した。21世紀は「感染症の世紀」になると予想する。
  • ここで懸念されるのは、免疫の攪乱によって目立つ菌感染症の致死率が、新型コロナのそれよりもはるかに高いこと。とくに体力のない子どもの被害が大きい。そして感染症対策として抗生物質に頼ると、次の瞬間に耐性菌が出て、さらに困ることである(現時点でも、致死率30%‐60%と言われるCandida auris感染がひろまる事態となったら、お手あげだ)。
  • 一方で、植物は1000年単位で菌・ウイルスと戦っており、耐性菌を生んだ歴史はない。菌・ウイルスに抗菌性を示す植物エッセンスは多数ある。なかでもGSE(Grapefruit Seed Extract)は効果が高い上に、無臭で扱いやすく、ヒトや動物に安全。劣勢に立たされているヒトの武器になり得る(この点に注目してMISTECTとBNUHC-18を商品化した)。
  • 菌・ウイルス感染に有効なのは、頻繁な手指衛生と環境除菌である(空気感染と飛沫感染する感染症の場合、これにマスクと換気が加わる)。連鎖球菌やRSウイルス、Candida aurisなどの対策として、肌荒れなどの健康被害を気にすることなく使えるGSEは向いている。
  • なかでも新型コロナウイルス感染症は、2023年5月8日をもって5類になることが、大きな転機となる。待機期間という概念がなくなり、ホテルの宿泊客や電車の乗客が感染者だったりすることも増える上、マスクもとる方向なので、生活環境の中でのウイルスがこれまでになく増える。空気感染・飛沫感染への対策が重要なのはもちろんだが、塵埃感染・接触感染へのケアも重要。GSEはその強い味方だ。
  • おそらく温暖化の影響が大きいとみるが、両生類のツボカビ症や鳥インフルエンザの流行にみられるように、動物・生物の世界でもパンデミックが進行している。人獣共通感染症の場合、ヒトへの影響も避けられない。
  • 喫緊の課題は鳥インフルエンザの拡大を防ぐことである。ヒト・ヒト感染する変異は防がなくてはならない。すでに自然界における世界的パンデミックとなっているので、鶏舎の感染防御が重要となる。この面にもふんだんに使って鶏に健康問題を起こさない植物のチカラを借りるのが妥当。抗生物質依存から脱却し、余計な耐性菌が発生することも避けたい。

新型コロナウイルス感染症によって、家畜やペットなどを含む人間社会は、かつてない感染症クライシスに見舞われていくことになると私は考えている。到底、「ただの風邪」とみくびることはできない。

注記

*23 養鶏と抗生物質の問題については、以下の書物に詳しい。
McKenna, Maryn. Big Chicken: The Incredible Story of How Antibiotics Created Modern Agriculture and Changed the Way the World Eats. 2017. National Geographic

この著者へのインタビューがウェブでも読める。
鶏に乱用の抗生物質、耐性菌の温床と識者が警告 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)

*24 農林水産省のこの資料に経緯と我が国の家畜分野での薬剤耐性菌対策がまとめられている。
「薬剤耐性対策」
https://www.maff.go.jp/j/syouan//tikusui/yakuzi/attach/pdf/torikumi-3.pdf

*25 この論文に食肉に混入する薬剤耐性菌の話がよくまとまっている。
「食肉に混入する薬剤耐性菌の現状」(石井良和、2015)
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM1508_02.pdf

*26 私が調達したのは、ココチプラス株式会社が製造する「ココチGSE」である。GSEは油分であり、通常はグリセリンなどの界面活性剤を添加して水溶液にしているが、同社は独自のノウハウで添加物ゼロ、すなわち精製水とGSEのみの水溶液を製造している。すなわち100%天然の植物エッセンス水溶液であり、MISTECTととても相性がいい。露出表面にグリセリンなど余分なものを付着させずに済む。

ココチGSEウェブページ:https://cocochigse.com/


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