ツボカビに両生類が大きな被害を受けたときに、私たちは気づくべきだった。
微生物と生物の依存関係ががらりと変わりつつあることに。
新型コロナ・パンデミックは始まりに過ぎない。21世紀は感染症の世紀だ。次は
菌との戦いである。そして頼りの抗生物質は、耐性菌の登場とともに終わる。
なす術はないのか。いや、あると私は考えている。植物のチカラの利用である。

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対策に穴があれば、ウイルスはそこを衝く

これまで、接触感染対策として手指衛生(手洗い)、飛沫感染対策としてフィジカルディスタンシングと全員マスク、空気感染(マイクロエアロゾル感染)対策として換気が重要であると指摘されてきた。

それぞれ、間違いなく効果がある。この三つが基本中の基本だ。しかし、それでも感染流行期に入ってしまうと、国民の大半がワクチンも接種し、ある程度の抵抗力を身につけているにもかかわらず、拡大をなかなかとめられない。

そろそろ、なぜ止めきれないのかを分析しておく必要があるだろう。ウイルスに突破されていることは明白である。

突破されている第一の理由として私が挙げたいのは、マスクマネジメントの失敗である。ノーズフィットを適切に使えず、隙間だらけでマスクを着用していたり、マスクのど真ん中をつまんで位置をなおしていたりする。

マスクをとった場面でのうかつな行動もある。喫煙室や脱衣場のクラスターだ。会食のリスクは言うまでもない。換気のいい店を選んでも、おしゃべりに夢中になると、テーブル上の料理に飛沫をとばしてしまう。マスクを外した次の瞬間には、飛沫感染リスクを頭にいれるべきである。

感染予防では、「距離と時間」という二つのファクターを意識しておくことが重要だ。換気をよくし、感染者から距離をとるだけで感染リスクは減るが、長時間一緒にいると元の木阿弥だったりする。私は会食も、短時間でお開きにするほうがいいと思うし、興がのったのなら、せめて店をはしごすることを勧めている。万一、自分たちの近くの席に感染者がいた場合、長時間そこにいるのはリスクでしかない。短時間なら逃げきれる可能性がある。

その意味で、気になるのは在来線の満員電車よりも、特急や新幹線だ。次の駅まで時間が長いからである。その上、旅行気分でお酒も入ると、周囲に飛沫もとばしまくる。鉄道各社は、座席予約時に「マスク必須車両」を選べるようにしてもらいたい。

さて、ウイルスに突破されている第二の理由として考えられるのが、塵埃感染に代表される「これまで見過ごされてきた感染ルート」である。新型コロナは空気感染だ、とかまびすしいが、接触感染も飛沫感染もするのが実態だ。さきほどの劇団クラスターの事例でいえば、床に手をつくたびに手指衛生すべきだった。

食事中に調味料容器を触ったあとなども同じだ。飲食店はテーブルを拭いているが、調味料容器を清掃しているのを見たことがない。手で触るものなので汚染されている可能性が高く、接触感染を招く可能性があるにもかかわらずである*8。そしてお酒が入り、だんだん声が大きくなると、テーブル上の料理に飛沫をとばしまくっている。

塵埃感染は意識すらされていない。私はトイレでもマスクをきちんと着用した上、短時間の利用にとどめるべきだと考えている。お化粧なおしもやめたほうがいい。ウイルスのついた手で目や唇に触れるからだ。とくに今後、オフィスや学校でマスクを外していくのであれば、飛沫感染に加え、塵埃感染の可能性が高まる。飛沫が床に落ちるようになるからだ。私は気にすべきだと思う。

いまから憂鬱なのが、生徒による清掃だ。ウイルスが付着した塵埃をまきあげながらの掃除になるはずだからである。ノーマスクに移行するならなおさら、掃除中だけでもマスク着用にして、終了後はすぐに使い捨てるように指導すべきだ。

朝一番に清掃するともっといい。乾燥した飛沫核が感染性をもつのは3時間程度だ。放課後より翌朝のほうが、感染リスクは低い。

頻繁な手指衛生と塵埃感染対策は意外に難しい

つまり、換気を大前提とした上で、なおかつ頻繁な手指衛生とトイレやオフィス・学校・自宅の床のケア(塵埃感染対策)が抜けている。そこをウイルスに衝かれているのだと思う。

手指衛生では、石鹸を使った二度洗いがベストである。菌もウイルスもきれいになる。しかし食事中や演劇の練習中に頻繁に手洗いをするのは難しい。そこで一般的にはアルコールを使うわけだが、もう誰もが気づいているだろう。アルコールは皮膚のタンパク質をこわすので、頻繁に使うと確実に手が荒れる。これが問題だ。

次亜塩素酸水という選択肢もある。肌荒れしにくい点ではアルコールより優位だ。性能もいい。しかし、次亜塩素酸水は効果を出すための利用条件が厳しい。非常に不安定な物質なので、出来立てを使うのが原則だ。容器に詰め替えてから何日も経過したものは、除菌能力を失っている可能性がある。そうでなくても、次亜塩素酸は有機物の汚れに反応して水になるので、汚れた手に使うと除菌効果は落ちる。

この悩みをGSEは解決する。冒頭で「対策をラクにする」と書いた通りである。後述するようにGSEは食品添加物として認められているものだから、食事中の頻繁な手指衛生にもぴったりだ。肌荒れしないことも累積皮膚刺激及び感作試験(RIPT)で確認している。GSEは、手指衛生をラクにしてくれる。

床のケア、すなわち塵埃感染対策にもGSEは向いている。「子どもが感染したので、家中をアルコールで消毒しました」というSNS投稿をみてゾッとしたことがある。火災が起きなくて幸いだ(きっと感染対策で換気していたから助かったのだろう)。除菌効果のある70度アルコールの着火点はたったの24度である。床に大量散布すると空気中に揮発したアルコールが充満するから、換気が悪いと料理をはじめた瞬間、爆発する恐れもある。

次亜塩素酸水は爆発・炎上の恐れはなく、はるかに安全だが、酸化物質なのでモノがサビたりするなど環境への影響が大きい。その上、アルコールでもそうだが、次亜塩素酸水も効果は一過性だ。GSEの出番である。無臭で扱いやすく、ヒトに安全で、火災の心配も腐食の心配もなく、そして効果に持続性がある

GSEの中身は複数の植物フラボノイド

GSEは無名の薬剤だが、実用化されてから30年が経過しており、大手企業が多数、化粧品や食品の品質保持剤として採用しており、実績が十分にある。その除菌効果は複数の学術研究で確認されているものだ。

なにより効果に持続性がある点がいい。GSE水溶液は水性塗料のようなものだ。水分が飛ぶと、油分が残り、表面をコーティングし、除菌効果を維持し続ける。ウイルス対策という点では、これがとても大きい*9

なおかつ、GSEはヒトへの安全性がきわめて高い。これも大きな利点だ。次亜塩素酸ナトリウムは皮膚に問題が起きるし、吸い込むと肺炎を起こす。オゾンを空間中のウイルスも抑制するほどの濃度で使うと、その場にいる人間は病院送りである(命を落とすこともある*10)。アルコールでさえ、子どもがなめて急性アルコール中毒を起こす例が出ているし、皮膚が荒れてしまう。

こうした健康面での心配が、GSEにはほとんどない。化粧品に使われているということは、肌に触れても平気でアレルギー問題も起きていないということである。アメリカではFDAにGRAS(Generally Recognized As Safe)登録されているし、日本でもGSEは既存添加物*11という扱いだ。製造に認可のいらない食品添加物という位置づけである。口にしても問題がない。なにしろ海外では、GSEはサプリメントとして知られている。健康のために、日常的に飲んでいるものなのだ*12

当然、中身が気になる。ガスクラマトグラフィー分析の結果をみると、ナリンゲニン/クェルセチン/ケンフェロール/ヘスペリジン/アピゲニンの5種類が確認されている。植物フラボノイドそのものだ。いずれも抗酸化物質で、抗ウイルス作用も認められるものばかりである。とくにナリンゲニンは、新型コロナウイルスの感染を強力に阻害するという研究もある(ただし、まだin vitro研究の段階)。
cf.
Naringenin is a powerful inhibitor of SARS-CoV-2 infection in vitro
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1043661820315632

なお、過去にはGSEから農薬成分(塩化ベンザルコニウムなど)が検出され、問題視されたことがあった。いま、日本に輸入されているのは、農薬汚染のない南米からのGSEである。


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注記

*8 余談だが、とあるホテルのラウンジで、客が出た後、ソファの座面を清掃し、肘かけを拭いていない場面をみて呆れてしまったことがある。人がそこに座っていたのだから、座面にウイルスは付着していない。手で触れる肘かけの清掃のほうが重要だ。ともかく、手が触れるところは汚いのである。クルマのステアリングの菌検査をしたら、公衆トイレの便座の9倍もの菌がいたという。
cf.
How clean is your car? Steering wheels have nine times more germs than public toilet seat
https://www.dailymail.co.uk/news/article-1379830/How-clean-car-Steering-wheels-times-germs-public-toilet-seat.html

*9 「では何日くらい効果が持続するのか」という質問をよく受けるが、床の素材や、使用したGSEの濃度、その上でどの程度人が動くかなどによって変わる。人が歩かない床などは一カ月単位で効き続けると思うが、ドアノブやテーブルは手で触れるところの効力が早くなくなると推定される。

*10 オゾンは新型コロナ患者がいた病室のケアに使われたことから広まったが、病室のウイルス対策に使う濃度は、その場にいる人が死ぬ濃度である(もちろん無人にして自動処理させている)。
濃度を低くするにつれてウイルス抑制効果はなくなる。ヒトがいても平気な濃度だと、ウイルスにも効かない。低濃度オゾンも新型コロナウイルスを抑制できるという実験結果が出ているが、抑制に長時間かかっているのが現実だ。つまり低濃度でも抑制はできるが、感染予防はできないということである(オフィスの会議室を翌朝までに消毒しておこう、という使い方には向いている)。
タクシーなどは消臭目的で低濃度オゾン発生装置をつけている。ウイルスへの効果を期待してはいけない。直前の客がふりまいたウイルスを抑制できているわけではないからである。

*11 既存添加物とは、食品衛生法の1995年改正によってできた分類で、「我が国において既に使用され、長い食経験があるもの」をいう。伝統的に安全性がもう確認されているから、規制はしないということである。これを受けて『既存添加物名簿』が告示されている(厚生省告示第120号。1996)。
いわば規制緩和なわけだが、その一方で、既存添加物の安全性をひとつひとつ国の機関で検証し、名簿の見直しも行われている。GSEは2002年に国立医薬品食品衛生研究所が動物実験で安全性を確認している。
cf.
https://research-er.jp/projects/view/155972/163780

*12 ただし、もちろん「量」が問題になる。塩も水も基本的には安全だが、大量に摂取すると生命にかかわる。安全だからと大量に飲んだりすることは勧められない。また、安全性が確認されているGSEも、ラテックスアレルギーとグレープフルーツアレルギーを同時にもつ方などはアレルギー反応がでる可能性があるから、手放しで「絶対安全だ」というものではない(これはおそらく天然物の宿命だ)。


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