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  • 部下をもつ上司
  • 上司を説得したい部下
  • 企業や団体の経営層
  • そして子どもを感染症から守りたい人

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2024年3月26日 第一版
by Offside

日本社会は現在、「こんなのただの風邪」「いつまで怖がっているんだ」というグループと、リスクを理解して感染対策を続けるグループに二分されてしまっている。会社も同じである。もうすっかり対策もやめて、「検査陽性? 微熱なら出てこい。風邪くらいで休むな」という上司がいる会社もあれば、毎日15時には全員が一斉に職場の除菌をする習慣を続ける会社もある。

軽視できる病気ではない

どちらが正解か? 2024年2月29日に発表された
Cognition and Memory after Covid-19 in a Large Community Sample
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2311330
という論文を読めば、答えは即座に出る。新型コロナウイルスが脳に影響を与えることを確認したもので、結果はこうだ。

  • 軽症でCOVID-19が消失した人は、IQの3ポイント低下に相当する認知機能低下を示した
  • 息切れや疲労感が続くなど、症状が解決していない人はIQが6ポイント低下した
  • 集中治療室に入院した人はIQが9ポイント低下した
  • 再感染した場合は、再感染しなかった場合に比べてIQがさらに2ポイント低下した

「軽症でも3ポイント低下/再感染でさらに2ポイント低下」というところが注目だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、症状が軽かったとしても、脳にも影響が出る深刻な病気である。ノーガードにして感染を繰り返すことはまったく勧められない。

免疫にもダメージがあることも判明している。新型コロナ感染後は、他の感染症にかかりやすくなる。2022年には欧米各国で観察されたインフルエンザやRSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、溶連菌感染症などの同時流行が、2023年以降、日本でも観察されるようになった。マルチデミック状態だ。これに多くの人が否応なしに巻き込まれている。一家全員が発熱で病院送り、という例も少なくない。

しかも、2024年からはかなり厄介な病気である麻疹と結核が世界中でマルチデミックに加わりつつある。多数の感染症が同時流行する「感染蔓延社会」となっており、日本も例外ではないのだ。

公助がなくなるからこその共助のはず

周知の通り、2023年には日本も世界に追随した(5類化)。2024年4月からは5類化後も続けていたワクチン接種と治療への国の補助もなくなる。公助がほぼなくなるということだ。

こうなると共助と自助しかない。しかし、国の説明はあたかも「怖い病気ではなくなったから5類にする」と言わんばかりだったので、「公助をやめるなら、共助も自助も必要ない」とか、「これで共助の法的根拠がなくなった」といった誤解が広まってしまった。本当に残念だ。

「公助はもうやめるから、あとは共助・自助を強化して対応してほしい」
と国は言うべきだったし、
「公助がなくなるなら、共助・自助をしっかりやろう。これからは自己責任だ」
と国民は考えるべきだった。麻疹もエイズも5類の病気である。基本、国はなにもしない。だからといって、自分たちもこの二つの病気を防ぐ努力をしないなんて、あり得ない話だろう。

驚くべきことに、5類化とともにいろんな分野で新型コロナの感染対策ガイドラインが廃止されている。信じがたい。国が感染者の隔離などの措置をやめてしまうからこそ、ガイドラインが必要なのだ。共助・自助にあたって依拠すべき指針(これがガイドライン)を廃止してどうする。

共助と自助のうち、最も重要なのは共助である。自助だけで対抗するには、感染力が強すぎるからだ。「かかりたくない人だけがマスクをすればいい」という人がいるが、新型コロナウイルス相手にこれは成り立たない。ほぼ全員がマスクをしていても、そこに混じる感染者がノーマスクならクラスターが起きてしまうのが新型コロナだからである。

「共助の主役」を意識した企業が成長する

共助は組織ぐるみでないと機能しない。どう見ても重要なのが、企業の取り組みである。5類化以降、感染した従業員に「微熱なら、解熱剤を飲んで会社に出てこい」という上司が出てきたかと思えば、「お客様に笑顔をみせるのが大事」とマスクをはぎとる経営者もいる。これでは自助を徹底することさえできない。

はっきりと明言しておく。日本も感染蔓延社会に突入しているいま、企業ぐるみで感染症に対抗しなければ、企業活動にも支障が出ることになるだろう。直面するのは人手不足だ。現に、バスの便数を減らしたり、営業時間を短くしたりといった形で、人手不足の影響が出始めている。

日本よりはるかに既感染者の多い欧米の状況をみるとさらに明白だ。病気が長期化して失業する人が急増し、ミドルマネジメントの突然死が増え、人手不足が深刻化している。ドイツは感染症の影響で景気が後退したと言われているほどである*1

そもそも経営層にも影響は大きい。最近の研究は新型コロナウイルスが脳にも感染し、ダメージを与えることを明らかにしている。軽症で済んだとしても、IQが下がる。認知症にもなりやすくなる*2。その上、心筋梗塞や脳梗塞など心血管系の重大な疾病のリスクが激増する。若くても突然死リスクが高まる。

つまり、新型コロナは中高年が多い経営者に極めて大きなダメージを与える老化ウイルスである*3。感染対策の共助モデルを実行し、経営者と従業員の双方を感染症から守るのは、経営層にも明らかにプラスだ。

共助が重要になるのは、流行中の新型コロナとインフルエンザ、そして流行しそうになっている麻疹は、自助だけでは防ぎきれないからである。なかでも新型コロナは厄介である。初期は麻疹より感染力が低かったが、いまの変異体は麻疹なみか、麻疹以上の感染力をもつ。

感染を繰り返すたびに健康を損なう

まずこれを意識しないと、防げるものも防げない。5類化以降、自爆行為としか思えない事例が頻発中だ。典型的な例を二つ挙げておこう。

  • 検査も拒否して「こんなの風邪」と言って出社し、課の全員が感染
  • 感染療養(発症日を0日として5日が経過し、症状消失)明けの出社で快気祝いの宴会をやり、出席者の全員が感染

こうした感染のたびに、従業員が健康を損なっていく。深刻なのは感染を繰り返すたびにLong COVIDに悩む人が増えることと、その影響で仕事の質が落ち、ミスが増え、働けなくなる人も出ることである。

影響はそれだけではない。マルチデミックが示すように、新型コロナ感染後は他の感染症にかかりやすくなる。たとえ新型コロナによる被害が軽微な人であっても、インフルエンザや溶連菌感染症にかかりやすくなる。従業員の病欠日数が増えるということだ。

「ただの風邪だから気にすることない」「死ぬのは高齢者だけ」という思い込みは、いますぐ捨てたほうがいい。風邪と新型コロナの最大の相違点は、後者が脳や心臓や血管や肺など、ヒトにとって重要な臓器に大きなダメージを与える点だ。現役のサッカー選手が試合中に心臓発作で何人も倒れている*4

今後の日本は、18‐64歳の現役世代の死者も目立つようになるだろう。日本の死者数を予測した研究*5から推定すると、2023/09‐2024/08の1年間に約7,000人の現役世代が死亡する可能性がある。

防衛ラインをどこに置くか

従業員が何度も感染をすると、企業活動に支障が出るだけではない。ひいては社会保険料の負担増となって返ってくる。2024年4月1日からは治療費の公助もなくなるからなおさらだ。感染を野放しにしても、いいことは何一つない。

かといって、いまさら全員にマスクとアルコール消毒を徹底するのも、あるいはリモートワーク主体にするのも難しいだろう。こういう場合、組織としての防衛ラインをどこに設定するかが鍵だ。

私は「感染をゼロにすること」を目標にするのではなく、以下の2点を目標にするべきだと考えている。

  • クラスターの発生を最小限にし、感染しても軽症で済むよう努力する
  • 感染後の体調不良に悩む従業員を増やさないように働き方を工夫する

これほど感染力の強い病気が蔓延中だ。感染ゼロは難しい。しかし、感染した場合の影響を最小限にすることは可能だ。基本的に、ウイルス感染症が重篤なものになるかどうかは、体内に侵入し、増殖しようとするウイルスを、免疫がどの段階で抑え込めるかに依存する。

そこで重要なファクターとなるのが、ウイルス曝露量である。大量に侵入されると、免疫の手が回らない。ウルトラマンも国際救助隊(サンダーバード)も、怪獣や事故が一か所だから間に合っているのである。同時多発されるとお手上げだ。つまり、感染対策をすることは、ウイルスの被害を低く抑えるのに有効な手段でもある。

では、具体的な方策をガイドライン的にまとめていくことにしよう。


感染症に共助で対抗するための私家版ガイドライン

感染症に強い職場環境

なにはともあれ、職場環境を整えよう。ポイントは二つ。第一は高性能空気清浄機の設置である。換気はお金がかからないし、対策として有効だが、窓のあかないオフィスでは対処できない。しかし、諦めることはない。空気清浄機で代用できる。ウイルスなど病原体はホコリに付着して浮遊していることが多く、フィルタリングで浮遊物を減らすだけでも空間中のウイルスを減らす効果がある。

効果を確認しながら空気清浄機を使う

注目はCorsi-Rosenthal Box*6である。DIYを前提とした空気清浄機だが、このデザインが優れているのは、フィルター面積が一般的な空気清浄機の5倍あることだ。国内では、株式会社CLEAIRの「クレアウィンBOX」が同様のデザインだ。同社はエアコンにつけるフィルターも製品化しているから、併用するといいだろう。

一般的な空気清浄機も台数を増やせば効果はある。効いているかどうかを確認するには、微粒子のPM 2.5を測定できる粒子計を使うといい。お勧めはIKEAのVINDSTYRKA(ヴィンドスティルカ)である。PM 2.5が少なければ、それだけ空気清浄機が効いており、感染症に強い職場環境となっている。こういうセンサーで確認し、インジケータがなかなか緑にならないなら、台数を増やすとよい。

あわせてCO2センサーも使おう。会議室のCO2濃度が1,000ppmを越えているようなら、中断してでも換気をするという対応をとる。

ノーマスクにするからこそ手指衛生が重要

そして第二は、手指衛生を頻繁にできるようにしておくことである。新型コロナは主に空気感染で接触感染は稀だという説もあるが、それはみんながマスクをしていた時代の調査だ。飛沫が飛んでいないから、当然、接触感染リスクも低い。

いまは逆である。ノーマスクが増えた。しゃべるたびに飛沫が飛びちり、いろんな表面にウイルスが付着するから、接触感染リスクが大きくなっている。このことは意識したほうがいい。

たとえば、いまは満員電車にもノーマスクで咳をする人が乗っている。ウイルスを吐出している人であれば、頭から全身にウイルス飛沫をかぶることになるから、髪の毛を触ったり、衣服のどこかに触れたりしただけで、手にウイルスが付着する可能性がある。手指衛生はいまこそ重要だ。

一方で、すっかり感染対策がゆるんだ結果、手洗いの習慣が見事に忘れられている。これがわかるのは、細菌性やウイルス性の胃腸炎も流行しているからである。トイレの後ですら、ロクに手洗いをしていないことが想像される。
手指衛生は新型コロナだけではなく、他の感染症も防ぐ。軽視するべきではない。

部分的に全員マスク、という使い分け

いまさら全員にマスクさせるのは難しくても、「会議はマスク」「おしゃべりするならマスク」「接客するならマスク」くらいはできるだろう。どうも日本は、両極端に走りすぎる。やるなら全部やるが、やらないならすべて放棄、という傾向が強い。「部分的に全員マスク」がいまのベストバランスだ。

マスクについては誤解も多い。マスクに期待される効果は
a)ウイルスを吐出するのを口元でとめる
b)ウイルスを吸い込むのを防ぐ
の2つだが、aの効果がほぼ確実であるのに対して、bの効果は限定的だ。鼻まわりなどに隙間をつくっている人も多いからである。しかし、全員がマスクをすれば、効果は極めて大きい。だから自席ではノーマスクで仕事をしていたとしても、「会議では全員がマスク」をするべきなのである。

いまでも全員がマスクをするのが望ましいことは確かだ。しかし、そうもいかないからこそ、換気または空気清浄機で浮遊するウイルスを処理し、手指衛生で接触感染リスクを減らすことで、マスクを外すことによる感染リスク増を中和するのである。

こうした手をうたないでノーマスクにするのは最悪の対応だ。ただの思考停止であるし、この状態でクラスターを発生させた場合、企業の責任を問われる可能性もある。

「制服」を見直す

企業の制服にはいろんな意見がある。ただ感染症対策という点からみると、制服は優秀だ。出勤して制服に着替えることで、通勤の電車内で衣服についた菌・ウイルス・花粉を職場に持ち込まずに済むからである。シェフのコックコートにも同じ効果がある。

外回りの営業担当者も、帰社したら上半身だけでも制服にするほうが、感染症に強くなるだろう。なかでも気になるのがネクタイだ。相手の飛沫を受ける位置にあり、頻繁に手で触るものであって、かつ滅多に洗わない。病原体を多数、付着させている可能性が高い。パンデミック終焉までノーネクタイを会社として宣言してもいいのではないか。夏場のクールビズと話は同じである。洗える服装で仕事をすることを勧める。

感染者への対応

2020年当初は、未知の感染症に対して一斉休校や入国制限、行動制限などで対抗したわけだが、こんなことは長くは続けられない。しかし、この時間稼ぎの間にワクチンもでき、徐々に制限を解除し、ついに5類にするところまできた、というのがここまでの流れだ。

この先は、「誰もが感染する」という前提で考える必要がある。事実、世界では感染率が非常に高くなっており、複数回感染者も目立ち始めた。2022年冬、中国がゼロコロナ政策をやめたとたん、2か月で国民の8割が感染したほどの感染症である。

復帰しても「まだ治っていない」

予防はとても大事だが、感染後の対応はさらに重要だ。しっかりとした社内ルールをつくっておくことが望ましい。理由は風邪と異なり、急性期が終わって職場に復帰してきても「治ってはいない」からである。

まず症状が出てから2週間は、マスクをすることが必須だ。症状が消失していてもウイルスを吐出しており、周囲に感染をひろげる可能性があるからである*7。そして上司は、復帰してきた従業員に無理をさせてはいけない。新型コロナウイルスと免疫との戦いをくりひろげた身体は、あちこちに炎症が残っている傷だらけの状態だ。「病み上がり」に必要なのは安静であり養生だ。

後遺症患者の心が折れる一言がある。
「後遺症? そんなのあるのか。休み癖がついただけだろ」
ひどい倦怠感でベッドから起き上がるのも厳しい、というLong COVID患者は珍しくない。風邪との最大の相違点がここだ。

しかも全員がこうなるわけではないことが問題を複雑なものにしている。上司がLong COVIDとなることなく快復している場合、部下が言っている倦怠感など心身の不調をまるで理解することができない。

辛い症状が長く続いていても、休み休みなら出社もできるし仕事もできる。悩む人材を生かせるか失うかは、周囲の理解と配慮次第だ。

徐々に負荷を増やす

見た目ではわからないが、復帰したばかり人の体内細胞はウイルスにやられ傷だらけになっているし、なおも随所で炎症が続いている。この状態で無理をさせると、Long COVIDを発症しやすい。復帰後2週間は午前を休みにしてもいいくらいだ。少なくとも最初の一か月は残業を禁止するくらいでちょうどいい。三カ月かけて徐々に負荷を増やすといいだろう。

身体的な負荷も段階的に元に戻していく対応をとるべきである。ジムに通うなどの運動も2か月くらいは自重すべき(させる)べきだ。散歩はいいが、ジョギングはダメという感じである。最近、イタリアとスペインのサッカー選手を対象にした研究が発表され、衝撃を受けた。なんと新型コロナウイルスは脳や血管、心臓などの臓器だけでなく、筋肉系にもダメージを与えており、肉離れのような故障が増えていたのである*8

ちょっと深刻な話をする。新型コロナ感染者は軽症で済んだ人でもIQが落ちているとか、空間認識能力にダメージがあるとか、短期記憶が失われるなど、中枢神経系にダメージがあることが多数報告されている。味覚・嗅覚がなくなる人も多い。そして倦怠感に悩んでいる。

この状態で、すぐに仕事に復帰させていいものだろうか。バスや電車の運転士や高電圧環境での電気工事など、健康な人間でも細心の注意が必要な仕事は多数ある。病み上がりの人間には荷が重いこともあるだろう。

認知機能検査を活用する

気になるのは、ここのところ世界から「そんな事故、初めて聞いた」というニュースが流れてくることだ。アメリカではパンデミック中は交通量が減ったのに、事故が増えており、しかも重大であるという研究も出ている*9。短期記憶が落ち、空間認識能力に問題があるなら、交通事故が増えるのも不思議ではない。

企業にとって、従業員の安全を守ることはなにより重要である。新型コロナ感染は事故リスクを高めることを認識し、感染した従業員の「元の仕事への復帰」には、ルールをつくって対応するべきだ。

ひとつ紹介したいのは、運転免許証更新の際、75歳以上のドライバーに実施している認知機能検査である。よくできている。
cf.
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html

たとえば「職場復帰の際は産業医と面談し、その調査に協力すること」というルールにして、認知機能検査を産業医に実施してもらう。合格すれば仕事に全面復帰、不合格なら別カリキュラムで徐々に復帰(ただし3か月は無理をさせない)といった対応が望ましい。

結果が悪ければ休職を検討するとか、万全でなければ一人体制だったところを、二人体制にするといったことも必要だろう。経営や評判に大打撃を受けるような事故は全力で防がないといけない。

新型コロナウイルスは体内に持続感染することもあるし、ウイルスのカケラが炎症を起こし続けたりもする。そして、厄介なことに進行するダメージの多くは自覚することができない(心筋梗塞やくも膜下出血など、発作がおきるまで自覚できないものは多数ある)。本人が自覚できないダメージを発見する上で、健康診断はとても重要だ。

また、Long COVIDは複数回感染でリスクが増える。二度三度と感染を繰り返すことを避けるように指導を徹底するべきだ。

リスクマジメントをしながらの行動

感染対策を「緩める」のではなく、「全部いっぺんにやめてしまう」のが日本人の悪いところである。これはマネジメントとは言わない。リスクを知りつつ、最小限の影響にとどめる努力をする。これがリスクマネジメントだ。

会食ルールをつくる

会食も禁止したかと思えば、毎日やっている。これではウイルスに負け続ける。感染と感染の影響を防ぎながら、会食や接待をするべきだ。以下のルールを勧める。

  • 会食と会食は中4日あける
    会食が連日だと、n回目の会食で感染した場合、n+2回目以降でウイルスをふりまいてしまう。中4日はあけたい。2日目で発症、3日目で確定なら、n+1回目の会食を中止や不参加にできる。
  • リスクの低い店を選ぶ
    換気がよく、従業員のマスクを徹底しているお店を選ぶべきだ。大事な取引先の接待ならなおさらである。事前の下見には粒子計やCO2センサーを持ち込んで確認するといい。
  • 食べ方を工夫する
    話すと驚くほど飛沫がとぶ。テーブル上の食べ物にどんどん落ちる。現時点で明確な証拠はないが、会食でクラスターが発生しやすいことは事実なので、ウイルス入り飛沫ごと口にするのも感染リスクがあると考えるべき。大皿料理は取り分けてもらうほうがよく、料理が出たらまずは食べてしまってから話すほうが安全。
  • 二次会は実施しない
    取引先との接待などの会食では、二次会の設定はやめておこう。接する時間が長くなればなるほど感染リスクは高くなる。かつ、万一メンバーに感染者がいた場合、時間が長くなれば曝露するウイルス量も増えるから、軽症で済まなかったり、Long COVIDになったりする可能性も高まる。

イベントをするなら直前2週間が鍵

そろそろ社内でもカラオケ大会や飲み会、旅行などのイベントが復活しているようだ。しかし、そこでクラスターを発生させると、部・課単位や会社単位で大きなダメージを受けることもある。

直前2週間を「イベント準備期」と定め、感染対策を強化するという対応を勧めたい。感染対策が必要なのは、その場に感染者がいる可能性があるからだ。いなければ、マスクをする必要すらない。

イベント直前の2週間は社内でもマスクをするくらい、やってもいいだろう。「感染を防いでイベントを成功させるんだ」という意識づけにもなる。そして重要なのは、体外診断用抗原検査キットを活用することだ。イベントの1日前に抗原検査で陰性を確認し、当日は体温を確認する。これだけで、リスクを大きく減らすことができる。

これは学校でも同じだ。卒業式や入学式、修学旅行などを安全に挙行したいなら、直前2週間の過ごし方を工夫する。全員マスクの復活もいいし、抗原検査の併用も効果的だ。

通勤や出張の安全を確保する

マスクが「個人の判断」とされてから、電車などの公共交通機関でもノーマスクな人が増えてきた。適切な判断ができない人がこれほど多かったのは残念である。救急車逼迫アラートが頻繁に出ている状況で、公共交通機関や病院などでマスクを外すことは勧められない。

雨が降っていれば傘をさすのが普通の判断だ。現在、日本の公共交通機関は暴風雨状態だと言っていい。隣で咳をしている人は、病院で検査を断り「こんなのただの風邪」と言って解熱剤を飲んで出社している人かもしれない。あるいは、まだウイルスを吐出する時期であるにもかかわらず、「もう治った」とノーマスクで乗った人の可能性もある。普通の傘では間に合わない。N95マスク相当の高性能マスクの着用を勧める。

とくに危ないのは新幹線や在来線特急など、乗車時間が長い列車だ。電車内の換気がイマイチなことは、CO2センサーや粒子計の実測で証明されている。周囲に感染者がノーマスクで乗っていると、通常の不織布マスクでは防御しきれない。この場合も、N95マスク相当の高性能マスクが必須である。

見逃されている問題もある。N95マスクで吸い込むのを防いでも、全身にウイルスを浴びていることだ。つまり、通勤電車から降りたあと、新幹線から降りたあとが問題である。衣服や頭髪、カバンなどにウイルスが付着している。これをどう処理するかである。

この場合のリスクは接触感染リスクだ。衣服や髪の毛、カバンを触ることで手に付着したウイルスを、目・鼻・口にもちこんでしまうことが問題である。ヒトは1時間に平均22回も顔を手で触っているという研究もある*10。無意識のうちに口元に手をあててしまったりする。

衣服や髪の毛、カバンを除菌したいところだが、それはなかなか難しい。もっと実行しやすくて効果も高いのが手指衛生だ。電車を降りたらすぐにやる。仕事中でも頻繁にする。手につくのは許容しても、目・鼻・口にはもちこまない作戦である。

この意味で、制服に着替えて仕事をするのはかなりいい。あとは髪の毛とカバンだ。髪の毛を触るクセをやめる一方、カバンの中身をポーチなどでオーガナイズして、会社に着いたら中身だけを自席に持ち込むようにすると、感染リスクを小さくできるだろう。

プライベートも含めての一致団結が必須

昭和な頃は家父長制の家族を模した組織体が日本の会社であり、従業員はみな家族、という考え方が主流だったと思う。「アットホームな雰囲気」の評判がよく、待遇も年功序列が当たり前だった。

平成・令和と進むにつれて、このあたりの一体感は急速に薄れている。会社というのは利益共同体であるから、これがあるべき姿なのかもしれない。プライベートとは一線を画すのが常識となり、年功序列は微妙に崩れて転職が当たり前となり、人材派遣に頼る比重が大きくなり、上司がうかつに飲みに誘うとパワハラ(異性だとセクハラ)と言われるリスクを抱えるようになった。

しかし、少なくとも新型コロナやインフルエンザ、麻疹のような感染症対策においては、「全員で団結して守る」という意識が必要だ。

そろそろ一部は我慢の限界

団結を強調したいのは、「絶対にかかりたくない」といまなお感染対策をしっかりやっている従業員と、「こんなのただの風邪」とばかりに、なにもかもやめてノーガードになった従業員に二分されているからである。

明らかに前者の負担が大きい。後者が急な発熱で欠勤となった場合、穴埋めに駆り出されるのも前者だ。一方、感染した社員は復帰してきて「全然軽かった。風邪みたいなもの」と勝ち誇ったように言い、前者に対して「まだマスクしてんの?」という。いつぶち切れてもおかしくない。そろそろ我慢の限界である。

企業経営という視点からみて、不公平感をなくすのはとても重要だ。まじめに感染対策を続ける従業員、会社に迷惑をかけないように家庭内感染も防ごうと努力する従業員を大事にしなければ、モラルハザードが起きる。あるいは、このまじめな従業員がまっさきに辞めていく。

この記事は「事業者の共助モデル」を提案している。5類になったとたん、もう感染対策は個人の任意とばかりに、考えることさえやめてしまった企業が目立つが、その結果、感染被害はおさまらず、従業員が分断されている。企業の発展、あるいは存続の絶対条件は、従業員の健康だろう。病欠ばかりでは回るものも回らない。「全員で団結して守る」という意識を取り戻す必要がある。

学級閉鎖と家庭内感染に巻き込まれる

システムセキュリティと話は同じである。ほぼ全員がセキュリティに気を配っていても、たった一人がうかつに添付ファイルをダブルクリックするだけでマルウェアに感染し、その人のPCだけでなく、全システムがダウンする。

同様に新型コロナウイルスも、一人が突破されると全体に影響が出る。それほど感染力が強い。病院には感染対策のプロしかいないはずなのに、しばしばクラスターが起きているのがその証拠だ。患者が殺到しているから致し方ない面もあるとは言え、プロ中のプロが防護服を着ても防ぎきれないことがあるという事実は重い。

そして大きな問題は、2023年に学校の奪マスクが進み、子どもたちの間で感染が爆発してしまったことである。学級閉鎖が急増し、子どもからうつされる親が続出した。しかも、影響はそこで止まらない。新型コロナ感染後は感染症に弱くなるから、親は頻繁に子どもの発熱で会社を休むしかなくなる。

会社は会社、プライベートはプライベートと割り切るのはもはや難しい。家庭のことには立ち入らないようにしたいところだが、否応なしに従業員の欠席が増える。あるいは子どもからうつされたが、まだ発症前の従業員がいつもと変わりなく出社してくる。そしてここから、クラスターが始まることもある。

「家庭の中で真っ先に発熱したのは誰か」を調査したアメリカの大規模調査では、70.4%が子どもから親への感染である*11。日本で調査してもおそらく似た数字になるだろう。学校で感染が蔓延するということは、親が巻き込まれ、親の勤務先が巻き込まれるということだ。

学校の感染対策まで踏み込むのは難しいが、従業員の家庭内感染を防ぐ支援はするべきだと思う。家族に感染者が出た場合の隔離施設(避難施設)を会社が用意してもいい。こうした対応を個人任せにしてしまうと、従業員間の関係も悪くなる。なぜなら、一方的に負担が増える従業員が出るからだ。

使えるツールは二つ――空気清浄機とGSE――

ここからは利害関係者の発言であることをお断りしておく。2020年4月にGSE(Grapefruit Seed Extract)という植物エッセンスと出会い、自らMISTECTとBNUHC-18という二つの商品を開発し発売したからだ。それを踏まえて読んでいただきたい。さて、感染を防ぐにはどうすればいいか。これまでいろんな話が出たが、整理をするとこうなる。

  • ウイルスを吸い込まない
  • ウイルスを目・鼻・口にもちこまない

これを守れば感染することはない。単純なことである。そして前者には換気とマスクが有効で、後者には手指衛生が効く。

ここまでわかっているにもかかわらず感染してしまうのは、徹底しきれないからである。換気しづらい環境は多々あるし、手指衛生もじつはハードルが高い。ノーマスクが増え、どこにウイルス入り飛沫が飛んでいるかわからない現状では、頻繁な手指衛生が必要だ。食事中でも、調味料を手にとったらもう手指が汚染されている。うっかり髪の毛を触っても汚染される。

端的にいって、換気も手指衛生も全然足りていないことが、感染を防ぎきれない原因だ。それを補うのが空気清浄機とGSEである。Corsi-Rosenthal BOXのような高性能空気清浄機が換気を補完し、GSEが頻繁な手指衛生を実現する。

この二つはオフィスでも効果を発揮するが、同じものを従業員が家庭に備えることを補助する対策を提案しておく。全員団結のためである。

GSEを推奨する理由

現状、「頻繁な手指衛生」を実現できるのはGSEしかない。子どもを健康被害なく複数の感染症から遠ざけることができるのもGSEしかない。これが推奨の理由である。石鹸による手洗いは有効だが、仕事中や食事中にいちいち手洗いをするのは無理だ。アルコールはもちろん有効な薬剤だけれども、以下の四つの問題がある。

第一は匂いがきついこと。食事中などははっきり言って使いたくない。仕事中も頻繁に使うと、職場環境がいっきに悪くなる。ヒトが最も苦手とするのは、匂いの攻撃だ。

第二は頻繁な使用で手荒れがひどくなること。これはアルコールが皮膚のタンパク質をこわすからだが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が増えていることを考えると、手指の皮膚のバリア機能の低下はかえってリスクになるだろう。

第三は、乳幼児には危険な薬剤でもあることだ。幼児が急性アルコール中毒を起こして意識不明で搬送された事例もある*12。様々な感染症に手指衛生は有効だが、乳幼児をアルコールで守るのはリスクもあるということだ。

そして第四は、全員が頻繁にアルコールを室内でスプレーすると火災の危険もあることだ。床などの広い面積にスプレーするのも厳禁である。現実に、内外で火災事故が起きている。大量に備蓄することもできない。

GSEはグレープフルーツ種子から抽出した植物エッセンスで、除菌効果はアルコールなみである一方、無臭で使いやすく、頻繁に使っても手荒れすることもない。しかも効果に持続性がある。朝、頭髪や衣服にスプレーして出かけると、その日はずっと抗菌性を発揮する(スプレーがかかった部分だけのことだが、それでも汚染量を減らせることは事実だ)。床に使うのもお勧めである。その日は落ちてきた菌・ウイルスを抑制できる*13

そして、水溶液なので火災の心配もない。大量に備蓄しても安心だ。大規模な天災で断水が続くときなど、感染症予防のために頼れる薬剤である。
cf.
「GSEを災害への備えとしてお役立てください」
https://bnuhc.info/archives/2024/bnuhc18_rollingstock_starter/

植物の知恵を生かす

GSEの内容成分はナリンゲニン/クェルセチン/ケンフェロール/ヘスペリジン/アピゲニンなどの抗酸化物質である(他の除菌剤は大半が酸化物質)。

さて、菌・カビに侵襲されるのはヒトや動物だけではない。植物もだ。グレープフルーツが菌・カビから我が身を守るための成分を使わせてもらおうというのがGSEである。同じく抗菌性をもつ植物は少なくない。日本人は昔から上手に利用してきた。寿司をくるむ笹や柿の葉。弁当のおむすびを包んだ竹の皮などである。緑茶に除菌力があるのは有名な話。そしてこれら植物エッセンスの中で、GSEは飛び抜けて能力が高い。科学的検証で800種類の菌・真菌(カビ)・ウイルスを抑制することが確認されている*14。汚濁環境でも効果があり、しかも持続性がある。

知名度は低いが、新しい薬品ではない。食品や化粧品の添加物として30年以上の使用実績があり、アメリカではGRAS登録され、日本でも既存添加物(食品添加物)指定されている。つまり、安全性は折り紙つきだ(国が動物実験で確認している*15)。

Xlearのような点鼻薬や、イタリアのProdeco Pharmaの吸入薬などにも利用されているし、日本でよく売れている化粧水には保湿剤として添加されている。つまり、飲んでも塗っても吸っても、安全性の問題がない薬品である*16

菌・ウイルスに植物エッセンスで対抗するのは、漢方的なアプローチだと言っていいだろう。吸い込まない対策として高性能空気清浄機を、目・鼻・口にもちこまない対策としてGSEを勧める*17。この二つで「徹底しきれる可能性」が高くなるからだ。

事業者の共助モデルの提唱

全員が団結して病原体を追い払わないと、いつまでも業務に影響が出る。それが感染蔓延社会である。新型コロナウイルスだけではない。インフルエンザやアデノウイルス感染症、RSウイルス感染症も流行っているし、目立たないが細菌性またはウイルス性の胃腸炎も多い。いずれも、手指衛生がおろそかになっていることを示す。そこに麻疹や劇症型溶血性レンサ球菌感染症や結核が加わりそうな状態だ。

深刻なのは、溶連菌感染症(溶連菌=レンサ球菌である)が激増した結果、抗生物質が不足している状態なのに、さらに劇症型が増えてきていることである。特効薬が使えなければ、感染部位をすみやかに切除することだけが治療法となる。すでに劇症型の場合、50歳未満の致死率は30%という数字が出ているが、抗生物質が不足していれば、もっと高くなるだろう。

会社全体がこれから病気を原因とする危機を迎えると考えたほうがいい。新型コロナが2類の時代は、療養期間が長く、それが経営に打撃だと感じたろうが、国が5類にして行動制限を撤廃した結果がこれだ。病欠日数のほうが療養日数より多くなるだろう。しかも、従業員の健康がみすみす損なわれていく。

最新の研究では、だいたい感染者の11%がLong COVIDとなり、そのうちの26%が日常生活に困難をきたしている*18。100人が感染すると、2,3人が仕事を継続できなくなるということだ。そして、この数字は感染を繰り返すたびに大きくなっていく。

もはや公助には何も期待できないいま、感染蔓延社会を個人の努力で切り抜けるのは極めて難しい。空気清浄機とGSEという、対策を徹底するために使えるものはある。これらを事業者が主体となって従業員の家庭に配布するくらいの「事業者の共助モデル」だけが、この危機を乗り切れる方法だ。

相手は非常に厄介なウイルスと菌の連合体である。ヒトの側が一致団結し、共助と自助で対抗するほかない。

注記

*1 Germany entered a recession last year because the average worker needed 20 sick days
https://www.thegauntlet.news/p/germany-entered-a-recession-last

*2 認知症になりやすくなる研究のまとめがこちら。
Long Covid and Impaired Cognition — More Evidence and More Work to Do
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe2400189

IQが下がる件については冒頭で論文を紹介しているが、こうした脳への悪影響について、よくまとまっている記事を三つ紹介しておく。
・COVID Linked to Lower IQ, Poor Memory and Other Negative Impacts on Brain Health
https://people.com/covid-linked-lower-iq-poor-memory-other-negative-impacts-brain-health-8619254
・COVID-19 Leaves Its Mark on the Brain. Significant Drops in IQ Scores Are Noted
https://www.scientificamerican.com/article/covid-19-leaves-its-mark-on-the-brain-significant-drops-in-iq-scores-are/
・COVID’s toll on the brain: new clues emerge
https://www.nature.com/articles/d41586-024-00828-9

*3 ここでいう老化とは、老化と同様の細胞のダメージが新型コロナウイルス感染でも起きるということだ。注2で紹介したレターも、感染で脳は7年分の老化に匹敵する細胞の損傷があるという内容だ。
感染で20年分の老化をするという主張もある。新型コロナ感染後は、60代でも老衰のように亡くなることが多いという。

*4 Third Professional Footballer Suffers Heart Attack During Game In Last 3 Days
https://thepeoplesvoice.tv/third-professional-footballer-suffers-heart-attack-during-game-in-last-3-days/

*5 この研究では、2023年秋冬のブースターワクチンを18歳以上の全員が接種した場合、2023/09‐2024/08の死者数は26,000人減少。65歳以上だけが接種した場合は19,000人の減少と試算されている。つまり、26,000-19,000=7,000人が現役世代における全員未接種と全員接種の死者数の差だ。この数字が、現役世代の死者数予測とみて問題ない。ワクチンを更新した現役世代の致死率はきわめて低いからである。
cf.
Projections of the incidence of COVID-19 in Japan and the potential impact of a Fall 2023 COVID-19 vaccine
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264410X24001178

*6 UC Davis校のリチャード・コルシ(Corsi, Richard)が公表した自作空気清浄機のアイディアをTex-Air FiltersのCEO、ジム・ローゼンタール(Rosenthal, Jim)が具体化したもの。フィルターとファンでDIYする空気清浄機である。5枚のフィルターを使うことが特色。つくり方はウェブなどで公開されている。たとえばこちら
cf.
https://corsirosenthalfoundation.org/instructions/

*7 症状が消えて本人が元気になっても、ウイルスを吐出し続ける病気は珍しくない。たとえばノロウイルスは下痢がおさまったあとも、一カ月くらいは便中にウイルスがいたりする。新型コロナウイルスもおおよそ感染後2週間はウイルスを吐出していると考えたほうがいい。

*8 How long is the long COVID? a retrospective analysis of football players in two major European Championships(プレプリント)
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2023.03.11.23287138v1

なお、上は筋肉系の故障についての研究だが、サッカー選手のパス精度などのパフォーマンスが落ちているという研究もある。
cf.
Impact of COVID-19 on football attacking players’ match technical performance: a longitudinal study
https://www.nature.com/articles/s41598-024-56678-y

*9 複数の研究があるが、2014年‐2018年のルイジアナ州の交通事故データとパンデミック後のそれをつきあわせて、衝突重大度モデルで高齢者の事故原因を分析したこの研究が参考になる。
道路逸脱や車線逸脱など不注意が高齢ドライバーの危険因子である点は変わっていないが、パンデミック中は衝突規模および重大度が悪化しており、違反や衝突時刻や照明も関係するようになった。
cf.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001457523000842

*10 The role of facial contact in infection control: Renewed import in the age of coronavirus
https://www.ajicjournal.org/article/S0196-6553(20)30965-2/fulltext

*11 Smart Thermometer–Based Participatory Surveillance to Discern the Role of Children in Household Viral Transmission During the COVID-19 Pandemic
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2805468

*12 2022年3月、島根県の保育園で5歳の女の子がアルコール消毒剤をなめて急性アルコール中毒をおこし救急搬送されている。この記事が参考になる。海外ではGSEをサプリメントとして飲んでいるくらいで、こうした恐れはない。
cf.
〈注意〉コロナ禍で子どものアルコール中毒事故が急増。アルコール消毒剤、小さじ1杯で命の危険性も【小科医】(たまひよ)
https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=136405

*13 GSEの除菌効果が持続するのは、成分が揮発しにくいからだ。GSEを主剤に使う大手メーカーのキッチン向け除菌剤は「効果一か月保証」をうたう。どの程度持続するかは環境に依存する。
アルコールにしても次亜塩素酸水にしても、他の除菌剤は「その場かぎり」の効果だが、GSEは持続性があることが大きな特長で、しっかり床などに使っておけば、感染者が入室してふりまいても、落ちてきた飛沫のウイルスの多くを抑制できる。
このGSEコーティング作業を自動化するマシンがMISTECTであり、保育園や音楽教室、介護施設などで実績がある。ノーマスクを前提とするなら、ぜひ使っていただきたいシステムである。飛び散った飛沫のリスクを減らせるからだ。
GSEは鳥インフルエンザウイルスを抑制することも確認されており、このシステムを鶏舎で使うと、鳥インフルエンザの予防に役立つことも期待できる。
cf.
https://mistect.jp/

*14 GSEのエビデンスはこちらにまとめてある。
https://bnuhc.shop/pages/evidence

*15 GRASはGenerally Recognized As Safeの略。国が実施した動物実験は、既存添加物の安全性の確認事業であり、GSEは2002年に国立医薬品食品衛生研究所が実施している。

*16 安全といっても、量の問題はある。Prodeco Pharmaの説明を引用しておく。
Safety is another important GSE feature: the harmlessness of GSE has been largely demonstrated as its L.D. is greater than 5000 mg./kg of body weight. This means that an adult should swallow 4.000 times the recommended dose every day for two weeks in order to have a 50% risk of intoxication. In addition to this, grapefruit seed extract does not interact with other medications and does not significantly harm beneficial intestinal flora.
(安全性もGSEの重要な特徴のひとつである。GSEのL.D.が体重1kgあたり5000mg.以上であることから、その無害性はほぼ実証されている。つまり、成人の場合、中毒の危険性が50%であるためには、推奨量の4,000倍を2週間毎日飲み続ける必要がある。これに加えて、GSEは他の薬と相互作用することはなく、有益な腸内細菌叢を著しく害することもない。)
cf.
https://www.prodecopharma.com/en/products/brands/gse

*17 2020年2月、人生初めてのパンデミックをみながら思いだしたのは、ツボカビ症で両生類が大打撃をうけたことだった。そもそもの原因は気候変動で、菌・ウイルスと生物とのバランスが崩れた結果だ。温暖化によって生態系の大変動が起きており、それによって微生物と生物との関係が新しいバランスを求めてダイナミックに動いているということである。
その意味で、新型コロナウイルスはその最初の一撃に過ぎないと考えた。ヒトが例外であるはずもない。温暖化に開発という名の自然破壊も加わり、新しい人獣共通感染症(Zoonosis)が次々と発生する一方、菌や真菌もヒトを攻撃しはじめるだろう。
それに石鹸とアルコールだけで対抗するのは難しい。何かないかと思っていたところ、GSEの存在を知ったのである。2020年4月27日のことだ。そこから製品開発にとりかかり、2020年9月にMISTECTを、2021年1月にBNUHC-18を発売した。どちらも直販サイトで発売している。
https://bnuhc.shop/

*18 Long COVID’s Impact on Patients, Workers, & Society: A review
https://journals.lww.com/md-journal/fulltext/2024/03220/long_covid_s_impact_on_patients,_workers,__.50.aspx

文責:古瀬幸広
科学・医学ジャーナリスト
インフォリーフ株式会社代表取締役
未来社会共創センター統括研究員
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