「オミクロンは弱毒化しているし、感染して免疫をつけたい」
「もう風邪と同じでしょ。2類から5類に変更するべき」
「子どもは重症化しないんでしょ。ワクチンも不要じゃない?」

という意見もよく耳にします。「風邪と同じ」にしてしまいたい人もいるようですが、これははっきり言って、かなり危ない意見です。子どもも重症化します。2022年4月29日には、栃木県で基礎疾患のない10歳未満の女児が、新型コロナ脳症で亡くなっています(これで子どもの死亡例は6例目)。

焦点はLong COVIDへ

そもそも弱毒化しているという証拠がありません。重症者数や死者数が減少傾向にあるのはたしかですが、それはワクチン接種が進んだおかげというのもあるからです。

軽症で終わるとしても、大きな問題があります。それがLong COVIDと言われる後遺症です。最近の統計データでは、入院した人のうち約10%は、退院から1年たった時点でも脱力感などの後遺症を抱えている可能性があるといいます。

また、軽症で済んだ人も、脳が萎縮するなどの影響が出ており、脳が10年分くらい老化するとのこと。パンデミックから2年が経過し、こうした後遺症の研究も進むようになったのです。

風邪で後遺症が問題になったことはありません。Long COVID患者の60%は休職または離職を余儀なくされているというデータもあります。もちろん多くの人は、無症状または軽症で終わり、何事もなかったかのように元の生活に戻っているのですが、そうではない人もいる。自分がどちらになるのか、見当もつきません。やはり、かからないほうがいい病気です。

また、専門家のいう「重症/軽症」という分類が、イメージするものとは違うという問題もあります。ここでいう「重症者」とは、肺炎症状の重い人のこと。「軽症」と聞くと、鼻風邪程度で終わるという想像をしてしまいますが、たんに肺炎症状が軽いというだけです。咽頭の強烈な痛みに苦しみながら、

「軽症で済むと言っていたのは誰だ?」

と怒っているツイートがあったりしますが、それでも肺炎がたいしたことがなければ、やはり軽症なのです。ゆめゆめ、「軽症」=「症状が軽い」とは思わないようにしてください。「ものすごく痛く、辛い症状だけれども、軽症」ということもあり得るのです。

すでに感染し、復帰している方も、感染予防策は重要です。半年の間に続けて二度感染した人もいます。ただ、そういう方がワクチンを接種すると、中和抗体が未感染者に比べて、はるかに多く生成されるという研究もあります。

ワクチンはやはり有効。ブースターショットが大事

反ワクチンを主張する方もけっこういらっしゃる。ただ、いまのところの統計データをみる限り、やはりワクチンは有効です。「ワクチンをうっても感染するのだから意味がない」というのは、この病気のことを誤解している意見。

麻疹(はしか)のように、一度かかると二度とかからない病気のワクチンは、接種で感染の心配が(100%ではないが)なくなります。消毒免疫がつく。しかし、インフルエンザは一冬に数回かかったりする病気。一度目で自然免疫がついているはずなのに、やはりまた感染することもある。新型コロナウイルス感染症はこちらのタイプです。

毎日のように発表される研究論文を見ていますが、少なくともオミクロン変異体に対しては、ワクチン2回接種の人と、3回接種の人とで、大きな差が出ています。ブースターショットまでは、早めにうつほうがいいでしょう。

今後は、年に一度、ワクチンを接種するようになるのではないでしょうか。副反応が小さいと話題のノババックスのワクチンがこれから主流になるかもしれません。ワクチンによる免疫獲得なら、後遺症の心配がないという利点があります。

「弱毒化する」は神話の可能性

かなり気になっているのが、「ウイルスは変異のたびに弱毒化するもの」というのが常識になっていることです。この常識があるから、「もう風邪と同じ」という意見が出てくるのでしょう。オミクロン変異体でかなり弱毒化した。これからもますます弱毒化する、という「常識」なわけです。

本当でしょうか。

ウイルス弱毒化説は、「強毒化すると宿主を殺してしまい、自分も生き残れなくなる」ことを背景にした理論です(ウイルス自体に毒はないため、正確には「高病原性/低病原性」と書くべきですが、わかりやすさを優先して「強毒性/弱毒性」で通します)。つまりはダーウィンの進化論でいう「適者生存」説です。弱毒ウイルスは宿主を殺さないから生き残り、強毒ウイルスは生き残れないというわけ。

しかし、新型コロナウイルスの場合、発症前の元気な人がウイルスを吐出し、その時点で次の宿主を見つけています。強毒化しても生き残る厄介なウイルスなのです。進化論的に言うと、新型コロナウイルスには弱毒化を選ぶ「選択圧」はないのです。

さらに、あるシミュレーションによると、新型コロナウイルスのような免疫を回避する能力をもつウイルスは強毒化するそうです(論文)。このシミュレーションが正しいかどうかはわかりませんが、少なくとも、「新型コロナウイルスは変異のたびに弱毒化する」というのは、まったく信頼できない常識であることはたしかです。

強毒/弱毒のどちらに転ぶのかは、変異し、ヒトに感染するまでわかりません。強毒化と弱毒化を繰り返すこともあり得る。風邪の一種が増えた、くらいなイメージでとらえられていることが多い病気ですが、COVID-19はLong COVIDの問題ひとつとっても、どれくらいヒトに影響を与えるのか不明な、未知の病気です。ゆめゆめ侮ってはならないと思います。ワクチンの副反応として心筋炎が話題にあがりますが、感染したほうが心筋炎リスクは高いのです。

小児の肝炎という恐ろしい事態も

冒頭で「数年をおかずに、他のウイルス・菌に悩む日々がやってくるだろう」と考えたことを書きました。そうはなって欲しくないのですが、やはりやってきた。

この4月に入ってから、欧米で主として未就学児(1-6歳)の急性肝炎が続々と報告されています。4月24日時点で、12か国で169例が報告されており、そのうち17人が生体肝移植を受け、残念なことに、1名は死亡しました。WHOもCDCもアラートを出し、注視している状況です。

小児の急性肝炎の報告が真っ先にあがったのはイギリスでした。その段階では原因としていろんな可能性が考えられた(毒物ということもあり得る)。しかし、すぐにアメリカ、デンマーク、スペイン、オランダなどでも同様の小児の急性肝炎患者が出たため、毒物説などは棄却。いまはアデノウイルスが関係しているのではないかと疑われています

アデノウイルスはプール熱の原因ウイルスとして知られているウイルスです。珍しいウイルスではない。しかし、なぜ突然、小児の肝炎を誘発するようになったのかは、まだ解明されていません。変異体かもしれないし、他のウイルス(いまだと真っ先に新型コロナウイルスが疑われる)との共犯かもしれない。

イギリスでもアメリカでもデンマークでもイスラエルでも発生、という地理的な関係からいって、いつ日本で患者が出てもおかしくない状況です。「新型コロナウイルス対策で、いつもの子どもの遊びができないまま育った年齢の児童に、アデノウイルスがつけこんでいる」という説も出ています。

この説が正しいとすると、日本の子どもたちも発症する条件が整っている可能性がある。つまり、対岸の火事ではないかもしれない。未就学児が突然肝炎で苦しむなんて、むごすぎます。対策として手洗い励行が言われていますが、これは、アルコールがアデノウイルスには効かないからです。

子どもを守るための最低限のこと

アデノウイルスは糞口感染しますので、GSEでトイレ清掃をしっかりやることで、リスクを減らせる可能性があります。論文をあさると、アデノウイルスを抑制する植物フラボノイドとして、クェルセチンやアピゲニンが出ているのですが、この二つとも、GSEの成分です。とくに保育園・幼稚園は、トイレ消毒が必須といっていい事態になったと言えるでしょう。

新型コロナウイルス感染症にしても、原因不明の小児の肝炎にしても、子どもがターゲットになることほど辛いことはありません。親としては、どうしようもないところがある。保育園・幼稚園での感染リスクが高い。まっとうな感染予防策がとられていることを期待しつつ、せめて帰宅後にケアを頑張るほかない。

お迎えに行って帰宅したら、真っ先に親子でお風呂がいいでしょう。そして着ていたものはすべて洗濯機へ。親子というのがひとつのポイントです。身体中、ウイルスまみれの我が子を抱いて帰宅している可能性があります。

おむつを持ち帰らせるところもあるようです。「帰宅後、便の様子をみて、子どもの健康状態を確認してもらいたい」という趣旨だそうですか、アデノウイルスも新型コロナウイルスも、大便中にひそむことで知られているウイルスです。私なら密閉状態のまま捨てます。いや、便が感染原因になる可能性を伝え、持ち帰りをやめるように交渉するかな。

ちなみに、介護施設でGSEに切り換えているところでは、「真っ先にスプレーすると、瞬時に匂いが消えてありがたい」「肌にしみないので、評判がいい」という感想があがっています。おむつの処理にGSEを使うのは、いろんな意味で推奨です。匂いが瞬時に消え、しみたりもしない上に、ウイルス対策もできます。

換気とマスクだけでいいのか

4月に入ってから、「ついに新型コロナウイルスの空気感染を認めた」と話題になっていました。これは難しく微妙な話で、国は2020年の夏あたりから、「換気が重要」と盛んに広報していましたから、空気で感染することを否定していたわけではない。ただ、空気感染というと、麻疹のように、満員電車でひとり感染者がいるだけで、全員にうつってしまうような感染形態を想像してしまうので、この表現を避けてきたのではないかと思います。

感染者が吐出したウイルスの大半は、唾液などに包まれていて重いので、下に落ちます(だから床のケアが重要になる)。しかし、空気中を漂ったままのウイルスもいる(エアロゾル)し、落ちたウイルスの体液が乾燥すると、ホコリに乗って舞い上がり、空気中を漂う(塵埃)。これらを吸いこんでの感染があるので、換気を頻繁にしよう、という話になっている。加湿器の使用が推奨されるのは、湿気によって空気中を漂うウイルスを下に落とす作戦です。

一方で、接触感染のリスクは小さいから、ドアノブなどの清掃も一日一回で十分、という話になっています。これはその通りだと思うのです。なぜなら、手指消毒を頻繁にやっていれば、手にウイルスが付着しても問題はないからです。

ただ、接触感染を無視していいわけじゃない。鳥インフルエンザウイルスの研究者は経験から、「胃腸から感染すると重症化しやすい可能性がある」と言っています(記事)。危険なのは食事中です。通常、胃液でウイルスは死活するはずですが、食べ物と一緒だと胃液がうすまり、感染するリスクがある。

事実、感染者の一部は消化器症状が出ています。胃腸に感染したということです。そして、それが長引くこともある。感染後10か月にわたって、便にウイルスのRNAが排泄されているという研究も出ています。「感染した子どもが、ずっと下痢している」という報告もある。

食事中は、頻繁に手指消毒するのが正解です(入口だけでなく、テーブルの上にBNUHC-18を常備したワタミさんの判断は正しい、と私は思っています。これは私からの提案ではなく、ワタミさんからの希望でした)。

飲食店でのBNUHC-18。左は麻布十番ピッコロ・グランデ。右はワタミ経営のTGI. FRiDAY’S

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[2022/05/09追記]
オミクロンは弱毒化していなかった、という研究が発表されました。
Omicron as severe as other COVID variants -large U.S. study