新型コロナの時代遅れのデマその1

とっくの昔にデマであることが確定しているのに、いまだにそれを信じ、ふりまわす人がいる。その否定に時間をとられるのは、あまりにもバカバカしい。せめて明確に否定されたデマは、さっさと捨て去っていただきたい。「まだそれを言うのか。情弱と言われても仕方がないぞ」というデマをまとめておく(きっとこの記事は続編を書くと思うので、その1をつけておく)。


[デマ01]
「交通事故死者でもPCR検査陽性なら新型コロナ死者にして煽った。厚労省の通達で明らかだ」
[ファクト01]
これは速報ルールである。「死者の統計」は医師の死亡診断書を集計するから(人口動態統計)、交通事故死者を新型コロナ死者に振り替えるなどという処理はされていない。そもそも交通事故の年間死者数は多くても3,000人だ。その全員を新型コロナ死にしたところで、恐怖を煽れるような嵩上げにはならない。

この速報ルールは、「新しい未知の感染症が、社会にどの程度の悪影響を与えているか」を迅速に把握するためのものである。交通事故死者に新型コロナ感染者が多いなら、「風邪のような症状があり新型コロナ感染が疑われるときは、運転を控えましょう」という注意喚起を出すこともできる。妥当でかつ意味のある速報のルールだ。また、速報制度を動かしていたのは、迅速に影響を把握する必要のあった初期だけである。いまは感染者数の把握は、定点観測に移行している。

なぜ速報ルールを運用していたのか。それは、全国の死亡診断書を集計するのに日数がかかるからだ。人口動態統計の発表はだいたい3,4か月後である。感染者・死者が急増するすごい波がきているのに、3か月たたないと波の存在すらわからないようでは、予防の役に立たない。12月に「9月に津波がきていたようです」と発表されてもなんの意味もないだろう。


[デマ02]
「PCR検査は信用できない。開発者のキャリー・マリス博士は、『PCRは実験のための判断材料として使用するものであり、決して病気の診断に使ってはならない』と言っている」
[ファクト02]
そうはやしたてる人が内外にいるのだが、じつはキャリー・マリス博士自身が自伝で「感染症の診断に使える」と書いている。
Kary B. Mullis: Dancing Naked in the Mind Field. Bloomsbury Publishing PLC. 1999.
のChapter 10から引用する。
“It would find infectious diseases by detecting the genes of pathogens that were difficult or impossible to culture.”
(培養が困難あるいは不可能な病原体の遺伝子を検出することで感染症を発見する。)

また、マリス博士はポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)の発明でノーベル化学賞を受賞したわけだが(1993年)、いま使われているRT-qPCR装置の開発者ではないことにも留意しておきたい。マリス博士の成果を原理としながら、様々な改良を経て、定性検査だけでなく、定量検査もできるRT-qPCR装置ができあがっている。

島津製作所の遺伝子解析装置・AutoAmp。抗原検査キットとPCR検査装置はこんなに違う。

[デマ03]
「日本はPCR検査を盲信し、Ct=40でも陽性にし、健康な人も新型コロナ患者にしたてあげた。そもそもオレンジジュースでも陽性にするインチキだ」
[ファクト03]
PCR検査で陽性/陰性を決めているわけではない。体温計や血圧計が診断しないのと同じだ。医師がPCR検査の結果を参考にしつつ、診察をして診断するのである。Ct=40くらいだと、陽性判定することも、陰性判定することもある。
「10日くらい前に風邪の症状があり熱も出ましたが、いまはもう元気です」というCt=40と、「夫が一昨日からひどい熱です」という妻のCt=40は異なる。前者は「もうほぼ急性期が終わっているCt=40」であり、後者は「これから症状がひどくなり、きっと明日にはCt=20になっているCt=40」だ。これを判断するのが医師である。

「オレンジジュースでも陽性」と言い出した段階で、PCR検査を何も理解していないことがバレる。これは化学的な反応で陽性を判定する抗原検査の話だ。PCR法ではなく、イムノクロマト法でウイルス抗原に反応するキットを、オレンジジュースの酸で壊しているだけのことである。

PCR装置の説明動画がYouTubeにあったので紹介しておく。
What is PCR and qPCR?


[デマ04]
「日本は専門家がPCR検査をなぜか抑制し、感染拡大を抑えられなかった」
[ファクト04]
2020年当時、突然のパンデミックに日本のPCR検査リソースは足りておらず、抑制するしかなかったのが実情だ。なにより優先するべきは、発熱者の診断である。当初は検体をとって検査に出しても、結果が出るのに数日かかった。もしもこの時期に感染者と濃厚接触者に限定せず、希望者全員や住民すべてのスクリーニング検査にPCR検査を開放していたら、結果が出るのは数か月後だっただろう。これでは治療の役に立たない。
また、こうしたPCR検査の抑制(正確には、感染者と濃厚接触者への重点的な使用)が、感染拡大を抑えられなかった原因だというのはかなり怪しい。「全員を検査して陽性者を見つけ出せ。検査が基本だ」とワイドショーのコメンテーターが主張していたが、それだけでは感染拡大を抑えることはできない。見つかった陽性者と濃厚接触者を2週間程度、完全隔離しないといけないからである。
しかも、全国一斉に何度も繰り返さない限り、封じ込めはできない。これは感染者が出るたびに全員検査と隔離を徹底した中国(ゼロコロナ政策という)が、結局は封じ込めを諦めたことをみても明らかである。


[デマ05]
「そもそもウイルスが存在しないのに、何を言っている? いろんな役所に『新型コロナウイルスの存在証明をする行政文書』の開示請求をしているが、『そのような文書はない』という返答ばかりだ」
[ファクト05]
パンデミック対応で多忙を極めている最中に、役所のリソースを奪ったのはあなただったか。ウイルスが実在することを証明することは役所の業務に含まれていないから、「行政文書がない」のは当たり前だ。じつは、あなたがあなたであることを証明する行政文書も、役所はもっていない。出生届や婚姻届を管理しているけれども、DNA検査で実の親子であることを確認して戸籍に加える作業はしていない(だから産院で子どもをとり違えたまま成長するといった悲劇も起きる)。役所は提出された書類を管理するだけの組織だ。ウイルスの存在を証明する行政文書などつくるはずもない。以後は、「威力業務妨害だ」と言われないように注意したほうがいいだろう。

新型コロナウイルスの写真を見せてもどうせ信用しないだろうから、これだけは書いておく。たとえば万有引力も目に見えるものではないし、写真に撮ることもできない(当然、役所が「万有引力の存在を証明する行政文書」をもっているはずもない)。
しかし、万有引力が「ある」と仮定すると、星の動きも説明できるし、探査衛星を火星や木星に送ることもできるから、「ある」という仮定を支持する人が圧倒的に多いのである。これを否定したいなら、「万有引力がある」と仮定すると、事象の説明に矛盾が出ることを証明する必要がある。

月を有人で周回して戻ってくるアルテミスII計画も根底で支えているのは万有引力の法則による計算

同じように、「ウイルスがある」と仮定すると、ウイルスゲノムの一部だけをターゲットにした新しいmRNAワクチン(第一三共のダイチロナ)でも効果があることや、変異していることや、飛沫やエアロゾルで周囲に感染がひろがることなどが説明できる。
ダイチロナはわかりやすい例だ。新型コロナウイルスのSタンパク質のRBD(受容体結合ドメイン)のみをコード化したmRNAワクチンであり、治験で効果が確認されている。「ウイルスは存在しない」と主張したいなら、行政文書の開示請求などという的外れで迷惑なだけのやり方ではなく、ダイチロナに効果があることをウイルスの存在なしに説明できないといけない。

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真
https://doi.org/10.1038/s41597-024-04182-3

[デマ06]
「mRNA新型コロナワクチンは健康被害が過去のワクチンに比べてはるかに多い。明らかに薬害だ」
[ファクト06]
「カローラはセンチュリーに比べると事故件数がはるかに多い。明らかに欠陥車だ」と言っているようなものだ。販売台数も違えば、使われる場所も違う。おそらく最も事故リスクが低いのは天皇陛下が乗るセンチュリーだが、だからといって格別安全なクルマというわけではない。パトカーや白バイに先導され、ゆったり走っているだけである。
他のワクチンと比べてmRNA新型コロナワクチンの健康被害が多いように見えるのは、100歳の高齢者にも、脳梗塞やがんを患っている人にも接種したからである。カローラ状態だ。他のワクチンはほぼ10歳までにうちおわる。センチュリーである。年あたりの接種人数も当然、新型コロナワクチンよりはるかに少ない。

何度でも書くが、「薬害だ」と騒ぐ人たちは、副反応疑い報告の仕組みを理解していない。接種後に死亡すると報告されるが、その中には、

  • ワクチン接種が原因で死亡した人
  • たまたま死亡する直前にワクチンを接種した人

の両方が含まれている。1と2を区別するのが、副反応疑い報告の目的のひとつだ。くも膜下出血寸前の人がワクチンをうったあとに亡くなった場合

  1. ワクチンとは無関係に発作を起こした
  2. ワクチンがきっかけで発作を起こした
  3. ワクチンのせいで発作を起こした

の3つの可能性がある。大変残念なことだが、これは解剖してもわからない。だから事例を集める。
2や3が事実なら、くも膜下出血を副反応疑いとする報告が多いはずだし、ワクチン接種群にくも膜下出血の患者・死者が増えているはずである。ところが、大規模調査でも、全死因死亡においてワクチン接種者のほうが(割合が)少ないという結果だ。
cf.
■COVID-19 mRNA Vaccination and 4-Year All-Cause Mortality Among Adults Aged 18 to 59 Years in France
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.46822

■Mortality for causes unrelated to COVID-19 by number of doses and by time since administration of COVID-19 vaccines: a retrospective cohort analysis in the Treviso province, Italy (2021-2025)
https://doi.org/10.1016/j.ijid.2026.108392

病死や老衰だけでなく、事故や自殺も含めた「全死因死亡」において、mRNA新型コロナワクチンを接種群の割合が低いということは、端的にいうと「新型コロナワクチンを接種した人のほうが死亡リスクが低い」ということである。有名人が亡くなると「ワクチンのせいだ」とコメントする人がわんさか登場するが、まるで的外れだ。そもそも訃報を利用してそういう投稿をするのは破廉恥きわまりない。


[デマ07]
「しかし、ワクチン接種開始以来、死者数が激増しているではないか。これがワクチンのせいでなければ、なんなんだ?」
[ファクト07]
団塊の世代の高齢化だね。突出して人口の多い世代(1990年に40歳)が、2025年には75歳になっている。人口の少ない世代と比較して、死者数が増えるのは自然の成り行きだ。2015‐2019年の死者数平均と比較した数値で「ワクチン以後、死者が激増している」と煽る言説は、人口の調整ができていない。

2000年に50歳の世代の人口が突出している(団塊の世代)。2025年に75歳。

[デマ08]
「しかし、ワクチン接種以来、死者が増えていることは事実だろう。2020年は過少死亡だったんだぞ。こんなに死者が増えるワクチンを接種したのは人道に対する罪だ」
[ファクト08]
それはワクチンを接種したことを背景に、2020年から実施してきた数々の行動制限をゆるめ、鎖国もやめ、外国人観光客を受け入れるなど、感染拡大を容認する政策に転換したからだ。新型コロナは合併症/後遺症の多い病気だから、急性期がおわったあとの死亡リスクが高くなる。超過死亡は、その数を把握するためのものだ。
cf.
■Methodology for estimating global excess deaths associated with COVID-19
https://www.who.int/publications/m/item/methodology-for-estimating-global-excess-deaths-associated-with-covid-19

そして、もしもワクチンを接種していなければ、はるかに多くの死者が出ていたことだろう。このことは、ゼロコロナ政策をやめた瞬間、オミクロンが国民の間にひろがり、たった2か月で187万人もの死者を出した中国が示している(中国は自国製の不活化全粒子ワクチンを接種し、mRNAワクチンは接種しなかった)。2022年12月からの2か月間のことである。この事実は、オミクロンで弱毒化したわけではなく、mRNAワクチンが効いていたことの証左でもある。
cf.
■Excess All-Cause Mortality in China After Ending the Zero COVID Policy
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.30877

そもそも「超過死亡」という概念は、インフルエンザの見えない影響を把握するためにWHOが考案したもので、急性期の死者だけでなく、その後の合併症などによる死者増を見積もるものだ。いろんな算出方法があるが、基本的な考え方は「感染者数から推定した死者数」と実死者数の比較である。後者が多ければ超過死亡になる。
ワクチン接種のあと、行動制限を撤廃し、新型コロナ感染者増を容認したことが、超過死亡増の原因である。これは新型コロナという病気が、急性期のあとも後遺症や合併症で命を奪っていることを示す。

「接種のたびに超過死亡が増えている」のではなく、感染の波がやってくるタイミングでワクチンを接種していただけである。これを「ワクチンのせいだ」というのであれば、「ワクチンを接種しないほうが、超過死亡は少なくなる」ことを証明しないといけない。
これはじつのところ、正反対であることが国際比較で明らかになっている。ワクチンの接種率の高い国のほうが超過死亡も少ないのだ。
cf.
■Comparison of vaccination and booster rates and their impact on excess mortality during the COVID-19 pandemic in European countries
https://doi.org/10.3389/fimmu.2023.1151311


[デマ09]
「ワクチンどころか、同調圧力を受けたマスクや感染対策に効果はなかった。さんざんみんながマスクをしたが、それでも感染の波は抑えられなかったじゃないか」
[ファクト09]
24時間365日、マスクを着用した人はいない。会食でも自宅でもマスクは外している。そして、この二つがスーパースプレッディングスポットだ。感染の波を抑えきれなかった主因がこれである。新型コロナウイルスは感染力が極めて強い。防護服でかためた医師たちが、ちょっとしたことで感染してしまうウイルスだ。外出時にマスクをしたくらいでは防ぎきれない。

しかし、「抑えることはできた」というのが事実である。マスクなどの感染対策の効果は、封じ込めたかどうかではなくて、感染者増がゆるやかで、ピークが低いことが示す。初期のスウェーデンと日本の新型コロナ死者数の比較グラフを出しておく。このグラフを見比べて「日本の感染対策に意味はなかった」というのは、それこそ意味がない。

青線が日本の100万人あたりの新型コロナ死者数。

ゆるやかな上昇と低いピークは医療崩壊を防ぐ。結果として、日本人は大半が新型コロナに感染する前に新型コロナワクチンを接種することができた。これが欧米と比べて日本の被害が比較的小さい理由である(ワクチンは感染前に接種したほうが、効果が高い)。


[デマ10]
「新型コロナで死亡するのは高齢者だけで、若者や子どもにはただの風邪だ。風邪に特別な対処は必要ない。高齢者を守るために若者にまで自重を促し、重症化リスクの低い子どもや若者にまでワクチンをうったのは間違っていた」
[ファクト10]
新型コロナウイルスを一言で表現すると老化ウイルスである。身体中にダメージを残し、老化に匹敵する損傷をもたらす。70歳が90歳の身体になれば当然、致死率が高くなるが、20歳が40歳の身体になっても、致死率はさほど変わらない。しかし、中高年がなる病気に見舞われる。Long COVIDと呼ばれる後遺症にもなりやすい。新型コロナは若者にも子どもにもダメージが大きい病気だ。免疫にもダメージがあり、さまざまな感染症に弱くなる。子どもも若者も、なるべく感染しないほうがいい。最もよろしくないのは、ノーガードで何度も何度も感染することである。致死率だけでこの病気を評価するのは間違っている(詳しくは拙著『制御不能――新型コロナウイルスの不都合な真実』あけび書房を参照)。

子どもにmRNA新型コロナワクチンを接種するのは正しい。そのことは複数の研究が示している。ウイルスが体内で暴れるのを早期に防ぐ免疫を身につけるのがワクチンである。
cf.
■Evaluation of mRNA-1273 Vaccine in Children 6 Months to 5 Years of Age
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2209367

■Evaluation of mRNA-1273 Covid-19 Vaccine in Children 6 to 11 Years of Age
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2203315

■Assessment of Efficacy and Safety of mRNA COVID-19 Vaccines in Children Aged 5 to 11 Years: A Systematic Review and Meta-analysis
https://doi.org/10.1001/jamapediatrics.2022.6243

■Safety outcomes following COVID-19 vaccination and infection in 5.1 million children in England
https://doi.org/10.1038/s41467-024-47745-z

■Effectiveness of 2024–2025 COVID-19 Vaccines in Children in the United States — VISION, August 29, 2024–September 2, 2025
https://cdc.gov/mmwr/volumes/74/wr/mm7440a1.htm

関連記事

以下の過去記事も参考にしていただきたい。

科学的事実に基づくマスクのFAQ
研究結果に基づくワクチンのFAQ
アベノマスクを擁護する
令和の怪談:子どもの未来を奪う医療デマの流行

追記

mRNAワクチンのことを「遺伝子製剤」と表現する人の発言や記事は、スルーすることを勧める。mRNAはタンパク質の製造レシピを塩基配列で表現したものであり、ヒトの遺伝子を改変して効果を発揮するものではない。