GSEの合成殺菌剤成分含有問題を解説した前の記事の続きである。
この記事では、なぜ私がマイナーな存在であるGSEに注目し(ネット検索でも、小田急のロマンスカーに負けている)、その普及が必要だと考えたのかをまとめる。
なお、この記事に関しては、最初に注意書きが必要になる。私はGSEを普及させるために、MISTECTとBNUHC-18という二つのGSE製品を開発したからだ。つまり、利害関係者である。この先は、それを踏まえて読んでいただきたい。
「感染症の世紀」の到来
GSE(Grapefruit Seed Extract)に注目した理由を簡潔にまとめるなら、「アルコールと石鹸だけでは21世紀を乗り切れないと考えた」からである。じつに大げさな話だ。しかし、大まじめに書いている。
私は2020年に新型コロナウイルスパンデミックを経験し、ある仮説をたてた。それは以下のようなものだ。
- 新型コロナウイルスパンデミックの発生は偶然であるが、必然でもある。新規の感染症が登場した背景には、乱開発や地球温暖化などによる人獣共通感染症発生リスクの増大や菌・真菌の生態バランスの変化があるからだ
- 今後、人類は次々と感染症に襲われる日々がやってくる。生態バランスの変化が起きている上、新型コロナウイルス感染の影響が残るからだ。21世紀は「感染症の世紀」となるだろう
4年が経過して、この仮説はもう検証されたといっていいだろう。まず、もう次のパンデミックが危惧されている。H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスの脅威が高まったからだ*1。
前回のパンデミックが約100年前のスペイン風邪だったから、次も100年後だろうと思いたいが、それは甘い期待のようだ。Mpoxもパンデミックを起こす可能性はあるし、MERSの感染者も確認されている上、古株の結核も感染拡大の様相を見せている*2。世界で、そして日本でも流行しているマイコプラズマ肺炎は、すでにパンデミック状態にあるという人もいる。
そして見逃せないのが、日和見感染の増加である。HIVや麻疹や新型コロナウイルスと違って、日常的に接する菌/真菌/ウイルス(と場合によっては原虫)に突然牙をむかれる感染を言う。日和見感染の代表格として、カンジダ症やクリプトスポリジウム症*3などがある。溶連菌感染やアスペルギルス感染も入れていいだろう。溶連菌(レンサ球菌)もアスペルギルスも、どこにでもいる菌・真菌だからである。
「牙をむかれる」と書いたが、それはヒトの側がガードを下げてしまうからだ。新型コロナウイルスに感染することで、病原体に対する免疫ガードが下がってしまうことは、もう明白な事実である*4。日頃から様々な病原体にジャブをうたれていても、いちいち免疫がガードしていたから、感染しなかっただけだのだが、その前提が崩れてしまった。ロックダウンもマスクもしなかったスウェーデンも、子どもたちがマスクをしなかったイギリスも、現状はさまざまな病原体による感染者が急増している。Xのこの投稿をみてほしい。
「第二次攻撃でQOL低下」の瀬戸際
2023年に国が世論をミスリードした日本は*5、「状況にあわせた感染対策をする」という当たり前のこともできなくなってしまった。とくに問題は必要な場面でもマスクをしない人が増えてしまったことだ。人が多い閉鎖空間では、病原体への大量曝露を避けることが必須である。
マスク以上に問題なのが、もう手洗いさえもいい加減な状態となっていることだ。「新型コロナは空気感染だ」という宣伝が行き届いた副作用といってもいいだろう。新型コロナ対策に重要なのは換気や空気清浄機である。しかし、だからといって、手洗いが無意味だというわけではない。新型コロナも接触感染リスクはあるし、それ以上に、手洗いで防ぐことができる感染症は多数ある。
マスクをやめ手洗いもやめた日本は、もうすっかり感染先進国の後を追う立場となってしまった。2023年も2024年も、複数の感染症(新型コロナ/インフルエンザ/手足口病/RSウイルス感染症/アデノウイルス感染症(咽頭結膜熱)/溶連菌感染症/百日咳等)がほぼ同時に流行する国となっている。
戦争にたとえるのはいいたとえとは思わないが、わかりやすいので使わせてもらう。2020年、いきなり襲ってきた新型コロナウイルスに対しては、高い公衆衛生の意識とワクチン接種でうまく対処したのが日本である。世界的にみて、日本の被害は異常値かと思うほど低い。
しかしこれは、第一次攻撃への対処がうまくいっただけである。むしろ問題は、新型コロナウイルスに国民の大半が感染してからの第二次攻撃だ。ここで対処を間違えると、確実に負ける。第二次攻撃のほうがはるかにすさまじいからである。
第一次攻撃は新型コロナウイルス単独だったが、第二次攻撃は菌・真菌・ウイルス・原虫の連合軍だ。新型コロナ感染でヒトの側のガードが下がっているからである。その上、新型コロナの複数回感染で、Long COVID発症率もきわめて高くなる。
すなわち、第二次攻撃を想定するなら、感染対策を強化するくらいでないといけないのに、「もう心配ないみたいだ」と周囲に流されて、マスクも手洗いもやめてしまった人が多いのがいまの日本だ。瀬戸際である。もはや、感染対策を続ける人とそうでない人との差が、劇的に開いていくばかりという状態である。
いまだに「高齢者しか死なない病気だから、怖がる必要はない」という人がいる。たしかに若い世代の致死率は低い。しかし、むしろ私が気にしているのは、子どもと現役世代のQOL(Quality of Life)の低下だ。新型コロナ感染で免疫のガードが下がっているから、「子どもが2週間おきに発熱している」という例も増えてきた。次々にいろんな病気に感染して病院通いが続くだけでもQOLは落ちる。遊びに行く時間もお金も病気に吸い取られてしまう。
Long COVIDの症状が重いと、味覚・嗅覚・聴覚が失われたり、ブレインフォグに見舞われたりする。短期記憶に障害が出ると勉強も仕事も大変だ。そして、10代でも突然、ダイアベティス(糖尿病)になる可能性があり*6、新型コロナの再感染で喘息、COPD、肺疾患、肺がんを発症するリスクも高くなる*7。新型コロナウイルスは宿主のQOLを奪って、ぬくぬくと暮らすウイルスだといえる。
感染対策が必要なのは、むしろこれから
すなわち、第二次攻撃を受け始めたいまこそ、感染対策を強化するくらいでいけないのである。その理由は、以下の二つである(詳しくは「重要なのは感染後という大事な話」を参照)。
- 大量のウイルスに曝露しての新型コロナ再感染は、重症化リスクとLong COVIDリスクが高くなる
- 感染後の免疫状態だと、様々な感染症に容易に感染してしまう。日和見感染を発症するリスクも高く、他の感染症による病院通いが続く
「感染対策を」と言っただけで反発を受けてしまうのが昨今だが、なにも2020年に巻き戻せと言っているわけではない。人流を削減せよ、イベントをやめろ、どこでもみんなマスクしろ、というのは感染対策ではなく、未知の病原体に対する緊急避難である。現段階ではここまでする必要はない。
「菌・真菌・ウイルスの連合軍に襲われている」といっても、現状、対策のわからない未知の病原体はそこに含まれていない。なにをすれば防げるのかは、もうわかっている。2019年までのお気楽な生活より負担は大きいが、病原体の土砂降り状態が続いているのだから、面倒でも傘をさして歩くほかないのだ。以下にまとめておく。
- 人の多い閉鎖空間ではマスクをする(マスク率が低い場面なら高性能マスクが望ましい。マスク率が高ければ不織布マスクでいい)
- 手指衛生を頻繁にし、トイレなど石鹸のある環境なら丁寧に石鹸で洗う(二度洗いが望ましい*8)
- 換気できる部屋なら換気を頻繁に行う(換気が難しい部屋には空気清浄機を置く。Corsi-Rosenthal Box*9が望ましい)
- 会食では「熱々のうちに食べる」ことを徹底する(飛沫が多数ふりそそいだ冷たい料理を口にすると、様々な感染症にかかるリスクがある*10)
- 帰宅したらまずは風呂に入り、着ていたものは洗濯機に入れる
ワクチンを年に一度は更新し、これだけの感染対策をするだけで、新型コロナの重症化も菌・真菌・ウイルス連合軍の攻撃もかなりの程度、防ぐことができる。もっと言えば、H5N1やMpoxなど、今後の流行が懸念されている感染症についても同様だ。日頃からこれくらい対策を続けていれば、感染確率はかなり低くなる。
さらに科学的にやりたいなら、CO2センサーや粒子計を持ち歩くのもいい。CO2濃度が1,000ppmを越えているところ、粒子計が警告を発しているところではマスクをし、長居をしない。もしもオフィスがそうなら、換気や空気清浄機で対応するといいだろう。きれいな空気で仕事をすると、能率もあがる。
GSEは環境除菌に威力
さて、GSEの話として書き始めたのに、上の対策にGSEの3文字を入れていない。ワクチン/マスク/換気(空気清浄機)/手洗い/会食時などでのちょっとした工夫を徹底することで対処できる話だからだ。私は、GSEは必須のものとは考えていない。対策をラクにするものである。「電動ドライバーにしたら、家具をラクに組み立てられたね」という程度のものである。
GSEを導入するとラクになることが二つある。第一は、対策の「穴」を埋めることができること。そして第二は、対策をより容易にし、しかも徹底できることだ。
第一の利点でいう「対策の穴」の筆頭が、床である。ノーマスクが当たり前の部屋であれば、ウイルスや菌・真菌まみれの飛沫が大量に床に落ちている。その処理に使えるのは、現状、GSEだけだ。
アルコールを床に大量散布すると、可燃性ガスが充満することになり、爆発炎上の危険がある。次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水は、有機物に反応してしまうので、床に散布しても効果はうすい*11。GSEは植物エッセンスを水溶液化したもので、中身は抗酸化物質のカタマリである。床の広範囲に噴霧しても発火の危険なく、匂いの問題もない*12。
しかも、GSEの成分は揮発しにくいため、効果に持続性があることも大きい。床清掃にたっぷりと使っていれば、しばらくは落ちてきた菌・真菌・ウイルスを抑制することを期待できる。アルコールにせよ塩素系の薬剤にせよ、効果は噴霧したときだけだ。GSEは除菌というより、抗菌が可能な薬剤である。
もしも、家にイヌやペットがいる家庭なら、GSEでの床清掃はぜひ実行して欲しい。イヌやネコも新型コロナに感染するからだ。そしてこの習慣は、イヌやネコの致死率も高いH5N1が万一流行した場合にも、ペットを守るはずである。
床のリスクは見過ごされてきた
感染者がいると、床が汚染されることは間違いがない。カナダ・オンタリオ州の2つの病院で行われた研究で、更衣室、会議室、職員用洗面所などの医療従事者エリアの床から新型コロナウイルスが検出されているし、その量と病院内の新型コロナ症例数および集団発生数との間に強い関連があることが確認されている*13。病院内に感染者が増えれば、床のウイルスも増えるということだ。
「当たり前だろ」と言いたくなるが、注意したいのは病室だけではなく、医療従事者の更衣室や会議室、専用トイレなど、感染者が使わない部屋の床から検出されている点である。新型コロナウイルスのエアロゾルが想像以上に遠くに届くこと、そして靴底でも運ばれることを示している(医療従事者が調査の間、不顕性感染していたという可能性もわずかながらあるが)。
床対策の必要性については異論もある。「床を舐める人はいないから気にする必要はない」という説だ。これは暴論だと私は思っている。理由は、床をハイハイする子もいれば、素足で歩くペットもいるし、体育館などでは床に体育座りをするからである*14。床にケアがなければ、接触感染待ったなしだ。とくにネコは、足裏を舐める癖があるので、床から感染する可能性が高い。
ところで、不思議に思ったことはないだろうか。病院には感染症のプロがいて、院内感染が起きないように全員で取り組んでいる。それでも、クラスターがしばしば起きてしまうのが新型コロナウイルス感染症だ。病棟ではHEPAフィルターを使った空気清浄機も動いているし、空間を分け、レッドゾーンではPPEで身を守るなどの対策を徹底してもいる。それでも院内感染を止めきれない。
その理由は「感染力が強いからだ」と説明されているけれども、私は対策に穴があるのではないかと疑っている。そして、それが床対策だ。上で紹介したオンタリオ州の病院での研究が、この仮説を補強する。思わぬところの床にも新型コロナウイルスがいることは確実である。
床に直接座ったりしない限り問題ないだろ、と思いたいが、床に直接カバンやリュックや紙袋を置く人は多い。そしてそれを持つから、もうそこで接触感染機会がある。それだけではない。床に落ちた病原体は、乾燥すると(多くはホコリに付着して)浮き上がるという問題がある。これを吸いこんで感染することを「塵埃感染」という。
塵埃感染・糞口感染を防ぐ
これまで、塵埃感染の危険が指摘されたことはほとんどないけれども、私は過去のクラスター事例からいっても、塵埃感染の可能性は高いと考えている。これまでは室内でもマスクをするのが普通だったので、それが目立つことはなかっただけではないだろうか。
こう推定するのは、トイレで病原体が拡散している事例があるからである。大便中には菌もウイルスもいる。水を流したときにそれが周囲に拡散され、感染源となることは実証されている。蓋をしめていてもそれは変わらない*15。トイレは、感染リスクの高い場所だ(これは「糞口感染」といわれる)。
さらに海外の事例だが、マンションのトイレの配管を通じて、ウイルスが他の階に広がり、マンション全体に感染がひろがる大規模クラスターとなったことがある*16(この現象は、下の階からの臭気をシャットダウンするドレインが乾燥してしまって機能しなかったからであり、日本ではまず起きる心配はない)。トイレの配管ルートでマンション全体にクラスターを発生させるほどのウイルスが他の階まで拡散するのだから、飛沫が乾燥してから浮遊したと想定するのが妥当だと思う。
このリスクも、トイレ清掃にGSEを使っていれば、大きく下げることができると推定できる。GSE水溶液が性質として似ているのは水性ペイントだ。乾燥後は表面にGSEが貼りつき、除菌効果を持続する。GSEが主成分のキッチン除菌剤には、効果一か月保証をうたうものもある。使う人の多いトイレなら毎日、家庭のトイレなら週に一度くらいのタイミングでGSEを便器・壁・床に使ってもらいたい。これが、「対策の穴を埋める」という第一の利点だ。
事実、これで成果をあげている幼稚園もある。トイレ清掃・床清掃・おもちゃ清掃にGSEを活用し、アルコールの効かない手足口病をはじめ、新型コロナやインフルエンザの園内感染を防いでいる。もちろん、換気に気を配り、スタッフはマスク(子どもは症状がある場合に着用)を徹底していることも重要だ。
cf.
■「いまだ園内クラスターなし」――ある幼稚園の使用例
https://bnuhc.info/archives/2024/casestudy20240129/
手指衛生・毛髪衛生・衣服衛生で対策の徹底
第二の利点は対策を徹底できることである。石鹸を使った手洗いは非常に効果があるが、それを実行できる場面は限られるという問題がある。たとえば気になるのが、食事中の汚染だ。飲食店スタッフの動きを観察すると、テーブルは丁寧に清掃するが、調味料容器はそのまま。多数の人が手にするものだから、菌・ウイルスが付着している可能性は高い。
食事中に調味料を手にしたからといって、いちいち手洗い場に戻るわけにもいかないだろう。そしてアルコール消毒は食事を匂いで台無しにする。その点、GSEは無臭で食事を邪魔しないし、既存添加物(食品添加物)として認められている自然由来の薬剤なので、手指衛生中に多少、料理にふりかかっても気にする必要がない。
既存添加物として認められている安全性もポイントである。海外ではサプリメントとして飲用されているのがGSEだ(腸内のカンジダ対策などを目的として勧められている*17)。化粧水に保湿剤として添加もされており、頻繁に使っても手荒れすることもなければ、万一、子どもが舐めても安全である(アルコールは噴霧した指を舐めた子どもが急性アルコール中毒で救急搬送された例がある)。
外出前に、毛髪と衣服にも使うことも勧めたい。GSEには効果の持続性があるからである。2020‐2022年には電車内でもみんながマスクをしていたら、こんな自衛策は必要なかった。いまは違う、浮遊するウイルスが毛髪や衣服に付着するし、飛沫もかぶっている。座ると、立っている人からの飛沫を頭からかぶる。
オミクロンが大流行したとき、「私以外の保育士は全員が感染した」というGSEユーザーの話を聞いたことがある。彼女は「私だけが感染していなかったから、風邪等症状で隔離した病児の保育を担当させられた」そうだが、部屋に入る前に頭と衣服にGSEを使い、しつこく手指衛生をしたそうだ。
cf.
■ユーザーの声からみるGSE活用術
https://bnuhc.info/archives/2024/howtousegse/
菌・真菌を生活空間から遠ざける
冒頭で指摘したように、私たちは感染症の世紀を生きている。最新の抗体保有調査をみても、そろそろ感染していない人のほうが少数派となってきた。そして、その結果(新型コロナ感染者が増えた結果)、日本でも複数の感染症が、かつてない増加ぶりを見せている。
ここで見逃せないのが、溶連菌やアスペルギルスなどによる菌・真菌感染症も増えていることだ。溶連菌感染症が典型例で、致死率の高い劇症型が増えていることも話題になっている。新型コロナ感染によって、免疫にダメージが出ることが、その後の菌・真菌感染症を増やしていることは明白だ。
ヒト・ヒト感染の病原体は、基本的に感染者を遠ざければ対処ができる。たとえば、直近一か月間、新型コロナ感染者が足を踏み入れていない部屋は、新型コロナフリーな部屋だ。汚染はされておらず、感染リスクはゼロである。しかし、菌・真菌感染症(とくに日和見感染)はそうはいかない。どこにでもいる菌・真菌にヒトの免疫が負けて発症するからだ。対応するのはかなり難しい。せめてもの対策として、生活空間にひそむ菌・真菌を減らすしかない。
だからGSEなのである。既に説明したように、環境除菌に安心して使える植物エッセンスであり、800種類の菌・真菌・ウイルスを抑制する能力がある上、効果に持続性がある。床や壁など生活空間の除菌に使うことで、生活空間中の病原体を減らすことができる。免疫がダメージを受けているということは、少ない菌・真菌数でも感染が成立し、発症してしまうということである。ならば、出会いの数を少なくするしかない。
同時感染を減らすことが重症化を防ぐ可能性
私は「新型コロナにおける七転八倒問題」において、体内でのウイルス増殖量を抑えることが、重症化を防ぐ鍵だと説明した。マスクは初期感染細胞数を減らすのに有効だし、ワクチンの更新は早期に適応免疫が起動すること可能にする。そして、抗ウイルス薬も増殖を防ぐことを目的とするものだ。早期の服用が推奨されるのは、増殖しきった後に抗ウイルス薬をのんでも、後の祭りになるからである。
ただ、これらの論文をみるかぎり、インフルエンザや新型コロナの重症化に、同時感染する真菌感染症も関係しているようだ。
cf.
■Invasive fungal diseases during COVID-19: We should be prepared
https://doi.org/10.1016/j.mycmed.2020.100971
■Incidence and risk factors for coronavirus disease 2019-associated pulmonary aspergillosis using administrative claims data
https://doi.org/10.1111/myc.13773
重症化したから真菌感染症を併発しているのかもしれないが、真菌感染症に同時感染していいことはひとつもないことは確実である。うてる手はGSEによる環境除菌と換気・空気清浄機しかないと思う。
GSEを開発したJacob Harich博士の意図
GSEの開発者であるJacob Harich博士(1919‐1996)は免疫学者で、晩年はエイズ患者の悩みをGSEで解決しようとしていたように思われる(「GSE開発物語」参照)。免疫不全のため、さまざまな菌・真菌・ウイルスに感染しやすくなっているエイズ患者をケアするには、病原体を遠ざけることが必要だ。植物由来でヒトにやさしく、頻繁に使っても手荒れなどの悪影響がないGSEはぴったりである。
博士の死後、エイズ治療は劇的に進み、いまではHIV感染者がエイズを発症することを抑えられるようになっているから、もう「エイズにGSE」という研究をする必要はなくなっていた。しかし、そのタイミングで流行してしまったのが、新型コロナウイルス感染症だ。HIVが免疫に与えるダメージとは比べるべくもないが、新型コロナウイルスもヒトの免疫を機能不全に陥らせ、感染症への耐性を弱めてしまう。勝手な思いだが、もしもHarich博士が存命なら、新型コロナウイルス感染者にGSEを使う研究を始めていただろうと思う。
なお、ネット検索をすると、GSEには合成殺菌剤成分が含まれている、という記事も出てくるが、それについては「GSEのコンタミネーション問題」で解説をした。いまは問題なくなっている。種子成分にはフラノクマリンが含まれていないため、高血圧の薬を飲んでいる方にも問題はない。
感染対策の穴を埋め、徹底して菌・真菌・ウイルスを遠ざけるために、活用していただきたいと思う。私が開発したGSE製品は以下のストアでの直販方式で販売している。
記事のトップ画像はMISTECTを保育園で実施している例で、これは空間除菌システムではなく、ブラウン運動を利用してGSEを露出表面に自動定着させるシステムである。保育園や老人保健施設や産婦人科クリニックで実績を出している。マスクをとったオフィスにも勧めたい。
一般家庭の日常利用には、水溶液であるBNUHC-18の「災害対策備蓄スターター」を勧める。BNUHC-18は5L/20Lのバルク販売方式とし、任意のスプレーボトルに詰め替えてお使いいただくことで、コストを下げた製品だ。頻繁な手指衛生とトイレやリビングの床清掃に使っていただくことを想定しているが、水害時の清掃などにも強い味方となるだろう。組み合わせるお勧めのスプレーボトルはこちらの記事にまとめてある。
注記
*1
H5N1鳥インフルエンザウイルスはこれまでのところ致死率が高い(53%前後)ことから、世界的に監視が続いているウイルスである。ヒトに感染した事例は多数あるが、ヒト‐ヒト感染するには至っていない。
これまではH5N1が発生した養鶏場の鶏を殺処分することで拡散と変異を防いできた。しかし、2023年から哺乳類への感染が目立つようになり、2024年にはアメリカで乳牛への感染がひろまり、ついに豚にも感染するようになったことから、パンデミックに近づいたという危惧が広がっている。豚はヒトインフルエンザと鳥インフルエンザの両方に感染することから、豚で変異してヒト‐ヒト感染をはじめる可能性があるからだ(2009年の新型インフルエンザがこのパターンだった)。
非常に心配な状況で、明日にもヒト‐ヒト感染するH5N1が生まれてしまうかもしれない。ただし、そうなった場合の病原性はまだ不明である。致死率が低くなる可能性もある(高くなる可能性もあるわけだが)。
*2
Mpox(サル痘)は重症化リスクが高くなった変異体・Clade Ibの感染例がヨーロッパなどから報告されるようになっており、監視が続いている。いますぐパンデミックを起こす状況だとは思わないが、頭の片隅にいれておいたほうがいい状態だ。たとえば、イギリスの報告がこちら。
■UKHSA detects first case of Clade Ib mpox(2024年10月30日)
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-detects-first-case-of-clade-ib-mpox
MERS(Middle East Respiratory Syndrome. 中東呼吸器症候群)はヒトコブラクダを宿主とするコロナウイルスが原因の新型コロナウイルス感染症であり、基本的には抑え込めている病気だが、2024年9月5日にサウジアラビア王国保健省(KSA)より、ヒト感染1例が報告されている。ラクダとの接触歴がないことから、これも監視が続いている。WHOの報告はこちら。
■Middle East respiratory syndrome coronavirus – Kingdom of Saudi Arabia
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2024-DON536
結核は古い病気だが、新型コロナウイルス感染による免疫のダメージによって結核を発症しやすくなると言われており、いまでも世界各地でクラスター事例が報告されている。日本も例外ではなく、直近では2024年11月8日に、出雲市で30人以上の結核集団感染が発生している。
WHOによると、2023年には世界で約820万人が新規感染しており、その数は1995年にWHOが統計をとりはじめてから、最多となったという。つまりいまでも、最も人命を奪っている感染症は結核である。
■Tuberculosis resurges as top infectious disease killer(2024年10月29日)
https://www.who.int/news/item/29-10-2024-tuberculosis-resurges-as-top-infectious-disease-killer
*3
クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)は水道などに混入することもある原虫で、海外では2023年頃から感染事例が増えている。イギリスの新型コロナウイルス感染グラフとクリプトスポリジウム症のそれを重ね合わせたグラフをこの投稿で確認できる。
この病気は、免疫が弱っているエイズ患者にも多いことで知られる。
■Widespread occurrence of Cryptosporidium infections in patients with HIV/AIDS: Epidemiology, clinical feature, diagnosis, and therapy
https://doi.org/10.1016/j.actatropica.2018.08.018
*4
新型コロナウイルスが、たとえ急性期が軽症であっても免疫にダメージを与える証拠(研究結果)は続々と報告されているが、ここでは最新の一例を出しておく。新型コロナウイルスは他の呼吸器感染症よりも、CD4およびCD8 T細胞の細胞老化と疲弊を急速に増加させる(老化と疲弊を分けているところが大事)。そしてこのことは、若くても複数回感染した人の免疫は老化し、(様々な病気による被害の大きい)高齢者のそれと同様になっている可能性があるということである。
■Rapid progression of CD8 and CD4 T cells to cellular exhaustion and senescence during SARS-CoV2 infection(2024年9月19日公開)
https://doi.org/10.1093/jleuko/qiae180
また、新型コロナ感染が重症化した場合、生得免疫(innate immunity)が持続的な変化を起こし、炎症を起こし続けるという報告もある。ワクチンを更新し、マスクで大量のウイルスに曝露することを防ぐのは、生得免疫を守るためにも必要なことだと言っていいだろう。
■Epigenetic memory of coronavirus infection in innate immune cells and their progenitors
https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.07.019
さらに、前回記事の注記も参考になると思うので、再掲しておく。
劇症型溶連菌感染症など侵襲性真菌感染症は人類の脅威となりつつあるとWHOも警告している。そして新型コロナ・パンデミックを経験し、侵襲性真菌感染症は増加傾向にあるが、その理由は、インフルエンザや新型コロナに感染すると、侵襲性真菌感染に対抗するために必要な、これまで知られていなかった生得免疫(自然免疫)が破壊されるからだった。
■A B1a–natural IgG–neutrophil axis is impaired in viral- and steroid-associated aspergillosis
https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abq668
真菌のアスペルギルス・スミガータスはどこにでもいる真菌だが、たまに侵襲性感染症をひきおこす(通常は免疫がこの真菌に侵襲されることを防いでいるから無事なのだ)。この防御の仕組みがinnate B1a cells, natural IgG antibodies, neutrophils(好中球)を軸とする生得免疫機構であること、インフルエンザ感染や新型コロナ感染でこれが破壊されることが明らかになっている。感染後はB細胞がやる気をなくし、好中球も働かない。
さらに新型コロナ感染者は真菌感染症を併発することもあり、重篤化要因にもなるようだ。主要な真菌病原体はアスペルギルス属、カンジダ属、ムコール属であり、死亡率も高い。
■A Systematic Review and Global Meta-analysis of Secondary Fungal Infections Associated with COVID-19(プレプリント)
https://doi.org/10.1101/2024.10.25.24316125
*5
2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症を5類感染症にする際、「国はもう新型コロナウイルス感染症に関与しない。感染者数を調査して報告するのみにするから、あとは各自が責任をもって感染対策をしてください」と国民にお願いをするべきだったのに、「インフルエンザより致死率が低くなった」という信頼性の低い情報を流し、「もう感染対策も不要」というイメージを植えつけて5類化を実施したことを指している。
また、マスクについても「個人の判断」(2023年3月にだした方針)を「個人の自由」に解釈する人をそのままにしている上、学級閉鎖が急増し、潜伏期間の長いマイコプラズマ肺炎が大流行しているのに、学校の奪マスクを指導したことを変更しようともしていない。
*6
10‐19歳の306,801例の研究で、新型コロナ感染者は他の呼吸器感染症に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが有意に高いことがわかっている(ただし、大人になったら治るのかもしれない)。
■SARS-CoV-2 Infection and New-Onset Type 2 Diabetes Among Pediatric Patients, 2020 to 2022
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.39444
また、イギリスからは一部地域でパンデミック以来、26%も40歳以下の2型糖尿病患者が増えているという報告もある。
■Huge rise in number of young people in Dorset with type 2 diabetes
https://www.dorsetecho.co.uk/news/24631873.huge-rise-number-young-people-dorset-type-2-diabetes/
この記事ではロックダウンによる肥満増も要因として挙げられているが、新型コロナウイルスは膵臓に感染しダメージを与えるから、感染の影響とみるべきだろう。
■SARS-CoV-2 infects human pancreatic β cells and elicits β cell impairment
https://doi.org/10.1016/j.cmet.2021.05.013
*7
新型コロナ1回感染者と比較して、再感染患者は喘息(3.0;1.32-6.84)、COPD(3.07;1.42-6.65)、ILD(3.61;1.11-11.8)、肺がん(3.20;1.59-6.45)のリスクが高くなる。なお、COPDは慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)、ILDは間質性肺炎(Interstitial Lung Disease)。
■Long-term risks of respiratory diseases in patients infected with SARS-CoV-2: a longitudinal, population-based cohort study
https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2024.102500
*8
手指衛生で最も効果があるのは、石鹸を使った二度洗いだ。実験で確認されている。もう一度、2020年に流行した丁寧な洗い方を思いだそう。ウイルスは爪の間や皺の中に潜む。これを二度やると、アルコールやGSEを使った手指衛生よりも効果が高い。
■Norovirusの代替指標としてFeline Calicivirusを用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討
https://doi.org/10.11150/kansenshogakuzasshi1970.80.496
*9
Corsi-Rosenthal BoxはMERV13フィルターとファンで自作する空気清浄機。材料はAmazonで手に入る。安価で、フィルター面積を大きくとれることが特徴。実証もされており、高価なHEPAフィルターを使ったものと遜色のない効果がある。
■Can 10× cheaper, lower-efficiency particulate air filters and box fans complement High-Efficiency Particulate Air (HEPA) purifiers to help control the COVID-19 pandemic?
https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2022.155884
*10
手についたウイルスを目・鼻・口にもっていくと感染するのだから、飛沫が落ちた料理を口にするのはリスクとなるに決まっている。飛沫中のウイルス量は、エアロゾルよりもはるかに多いし、菌・真菌感染症のリスクもある。
病原体の大半は熱に弱いので、熱々のうちに食べるのが最もリスクが低く、テーブルの上に延々とのっている冷たい料理を口にするのが、最もリスクが高い。宴会やカラオケの酒の肴で、ずっとテーブルにあるものがそれだ。いろんな人の飛沫を浴びている(カラオケと飲食は別々にするほうがいいだろう)。
飲食店を選ぶ場合は、1)厨房とホールの両方でスタッフがマスクをしていること、2)換気のいい店であることの二つを確認すると、さらに万全である。最近、ノロウイルスも空気感染・飛沫感染することがわかっており、ノーマスクの無症状のスタッフを感染源とするクラスターも起きている。
*11
市販の除菌剤の効果を確認した研究があり、汚濁環境で効果があるのはアルコールとGSEのみで、塩素系の薬剤は成績が悪い。これは汚濁環境では、有機物に反応してしまうからである。
■“除菌”などをうたった製品の消毒効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei/36/3/36_157/_pdf/-char/ja
(表中のシトラリッチが、BNUHC-18相当のGSE水溶液である)
厚生労働省や経済産業省は、このことから、次亜塩素酸水を使う場合は、まず対象物の汚れをあらかじめ落として(有機物を取り除いて)から使うことを推奨している。
■「次亜塩素酸水」を使ってモノのウイルス対策をする場合の使用方法
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001260667.pdf
*12
GSEは「グレープフルーツ種子抽出物」なので、柑橘系の匂いを想像する人が多いのだが、あの匂いのもとは皮や果実に含まれているだけで、種子にその香り成分はなく、ほぼ無臭である。むしろGSEには消臭能力もあり、くつ箱などにスプレーすると、除菌効果と消臭効果の両方を実感できる。
*13
■SARS-CoV-2 burden on the floor was associated with COVID-19 cases and outbreaks in two acute care hospitals: a prospective cohort study
https://doi.org/10.1017/ice.2024.121
*14
新型コロナウイルス初期、換気などの感染対策を万全にしていた劇団でも大規模クラスターが起きたことがあった。「これだけ対策していたのになぜ?」と保健所の職員がクビをひねったと話題になった事例だが、私は演技で床に臥せたり、休憩中は床に体育座りしたりしたことで、床を経由した感染が起きたと考えている。
*15
■「便器のふたを閉めて流してください」は衛生的か?(産総研)
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241028/pr20241028.html
*16
SARSの流行時、香港のマンション・アモイガーデンで大規模なクラスターが発生し、分析された「犯人」がトイレの配管だった。ドレインが乾いていたため、浮遊するウイルスが他の階にも拡散したのである。
そして中国では、同じことが新型コロナウイルスでも起きている。
■COVID-19 Cluster Linked to Aerosol Transmission of SARS-CoV-2 via Floor Drains
https://doi.org/10.1093/infdis/jiab598
*17
一例として、アメリカのUniversity Health Newsが紹介しているGSEの活用法を紹介しておく。
- 喉のうがい(風邪や喉の痛みのため)
- マウスウォッシュ(歯茎と歯の健康のため)
- 鼻/副鼻腔洗浄(副鼻腔感染症や風邪のため)
- 耳の点滴
- 消化器系の不調(カンジダや旅行者下痢を含む)
- 皮膚の傷
- 果物と野菜の洗浄
皮膚の傷は注目で、GSEは溶連菌もよく抑制するから、劇症型溶連菌感染症(STSS)の予防ができる可能性が高い。また、Long COVID患者は腸内細菌叢にCandida albicansが増えて炎症を起こしていることが報告されているから、飲用することでLong COVIDの症状がやわらぐ可能性もある(未確認)。
cf.
7 Grapefruit Seed Extract Uses, and the Risks to Know Before Using It
https://universityhealthnews.com/daily/nutrition/grapefruit-seed-extract-uses-and-benefits/