[消毒劇場]05:それ、本当に消毒してる?

「もうあいつとは飯は食わない」とブリブリ怒っている友人の話を聞いた。「感染予防に鈍感にすぎる」という。無理もない。一事が万事。無頓着で無神経で無教養な人が近くにいると、感染リスクがハネあがる。もらい事故は避けたいに決まっている。

まず黙々と食べるのが正解

数日前、プロジェクトチームの数名で食事をした。とくになにも言わずとも、全員、マスクを外さずに話し、料理が出てきたら黙って食べ、そしてまたマスクをつけて話す。安心できる仲間たちである。

しかし同じ店の別の席は、大勢でもりあがっている。声は大きいし、大笑いするし、どんどん酒を頼む。もちろんマスクはせず、料理もテーブルに乗ったまま。10メートルは離れていたし、空調を確認するとこちらのほうが上流だったのでやり過ごしたが、もっと近くて、かつこちらに空気が流れる状況なら、さっさと店を出たと思う。無自覚な人たちの巻き添えはご勘弁だ。中国・韓国では、レストランやカフェでのクラスターが報告されているが、論文をみると空調の下流の人たちが感染している。

翌日、贔屓のラーメン店に入ったら、こんな貼り紙がしてあった。正しい。世の中、ワクチンの接種開始でもう解決したかのような錯覚に陥ってるが、そんなことはまったくない。まだ自分の順番は来ていないでしょ? ちょっとゆるみすぎだと思う。少なくとも自分も周囲もほぼ全員がワクチン接種するまでは、まったく油断はできない状態だ。

スプレーしている時点で疑わしい

しかしこのラーメン店も、箸は箸立てに裸のままささっていて、調味料類もテーブル上に出たまま。惜しい。そして客が出たあとは、次亜塩素酸水で拭いていた。本当に消毒ができているのだろうか。

感染者がクシャミをすると、数百万個のウイルスが吐出されるという。その大半が下に落ちるし、食べるときはマスクを外すから、飲食店のテーブルはウイルスまみれになっている可能性がある。

これまで目にしてきた飲食店の消毒作業は、例外なく、薬剤をテーブルの上にスプレーして、それを往復運動で拭き取っていた。スプレーは激しく空気を出すので、テーブルのウイルスが舞い上がるだろう。もうこの時点で、消毒作業の効果が疑わしくなる。クロスにスプレーして、濡らしてから拭いてほしい。

そして「往復運動」は、ウイルスをテーブルに塗りたくるだけだ。カンタンに確かめられるので、ウソだと思う人はやってみてほしい。きれいなクロスを水に濡らして、ガラスを往復運動で拭いてみるだけである。「往」でかきとった汚れを、「復」で再びなすりつける。いつまでもきれいにならないことを実感できるはずだ。

次亜塩素酸水を使うならひたひたに

さらにもうひとつ、イヤな想像をしないといけない。手にしている消毒液が有効か? ということである。個人的な体験の積み重ねにすぎないが、圧倒的多数は次亜塩素酸水をスプレーしていた。たしかに試験管での試験では有効な薬剤だが、以下の問題点がある。

  • 有機物の汚れに反応して除菌力が失われる(水に戻る)
  • 反応しやすいため、時間経過とともに水に戻る

このため、国は「出来立ての次亜塩素酸水を、有効な濃度で、対象物をまずきれいにしてから、ひたひたに使い、時間をおいてから拭き取ること」と注意喚起している。逆にいうと、私が目にしてきた飲食店の消毒作業は、これを守っていない。「出来立てをひたひた」どころか、「詰めてから日数が経過している次亜塩素酸水を、軽くシュシュッとやるだけで、即座に往復拭き取り」だ。

ひょっとして、この作業は、ウイルスになんらのダメージを与えることなく、テーブルに塗りひろげているだけじゃないか、と疑ってしまう。SARSが問題になったとき、香港で建物の清掃員が、雑巾でウイルスを建物中の「手に触れる場所」に塗りひろげてしまい、大規模クラスターをだしたという事例がある。高齢者施設でクラスターが頻発する原因のひとつではないかという疑いさえもっている。

そこを拭かないなら消毒作業の意味半減

「今日は驚いた」という別の友人は、「新幹線を待つ間、清掃作業を見ていたんだけれど、テーブルは拭くのに、ノッチを拭かないんだよ!」という。写真の赤い部分である。

ここを清掃しないのはさすがにマズイ。テーブルよりも、ノッチを消毒してほしいくらいだ。「手を触れる場所」にウイルスがついている可能性が高いからである。

いや、でも、いまの作業方法なら、拭かないほうがリスクが小さくなる可能性もある。時間に追われながら、汚染されたクロスで次々に拭いているので、ウイルスを塗りたくる作業になる可能性がある。微妙だな。本当の正解は、ここを自分で消毒してから触るか、あるいはもう使わないかだろう。

私がBNUHC-18(GSEのみを使う除菌剤)を開発した理由は、こうした消毒作業への不信からである。有機物があっても効き目がなくなることなく、効果に持続性もある、純植物性の除菌剤だ。まずこれをクロスにスプレーして、単方向に拭き取り、また面を替えて単方向に拭き取る、という作業を想定している。

実験室の結果では、ウイルスや菌の抑制に10秒程度はかかるから、クロスの面を替えながら拭くところがポイントである。しかし、拭き終わったあとのクロスは抗菌性を保っているので、感染力のあるウイルスを塗りひろげることもない。