再び、独占禁止法について書く。法律を理解するには、その法律の目的というか、つくられた背景を考えるのが早い。たとえば著作権法は、著作物を財産として規定すると同時に、「正当な引用」「私的利用」というふたつの条件をつくり、他人の著作物を安心して利用できるルールも定めている。
独占禁止法の背景
独占禁止法の背景は「不公正な競争」である。結果として独占となるのはいいが、「汚い手を使って独占するのはダメ」ということだ。代表的な事例がカルテルだ。手を組めば市場を独占できる大手企業が手を組み、応札価格を決めたりしたら、公正な競争は起きない。
これを「私的独占」という。市場において独占的な立場にある事業者が、その立場を利用して、市場における競争を実質的に制限することである。独占禁止法は、私的独占を禁止する法律だ。
「強い立場」を自覚しての圧力
実際にビジネスの現場にいると、想像以上に、私的独占に酔っているバカな経営者に遭遇して驚く。
「あそこの荷物を運ぶなら、うちには出入り禁止だ」
と出入りの運輸会社に圧力をかけた地方の有力組織など、典型例だろう。その有力組織から仕事を切られると死活問題だから、言うことをきくに決まっているという構造があるかぎり、私的独占の疑いがついてまわる。
最近経験したのは、特別な薬剤をもつ企業が、「あそこの薬剤も仕入れるなら、うちの薬剤は売らない」といって圧力をかけた例だ。バカなの?
どちらも、私的独占のうちの「排除」にあたる。「排他的取引や供給拒絶を行って競争者の事業活動の継続を困難にさせたり,新規参入者の事業開始を困難にさせたりすること」である。
儲けることは大事だが、品格はもっと大事である。排除を多用すると、恨みを持つ事業者も同時に生産してしまう。いつか足元をすくわれるに違いない。