自粛は「ハラスメント」にしておこう

けっこううんざりしているのが、こういうツイートだ。代表例を出しておく。政府が「自粛」で一貫しているので、責任をとらないぞ、という意見である。

紹介されている記事は平河エリ氏の記事で、特攻が上官命令ではなく、特攻隊員の「志願」とされ、上官が責任をとらなかったことをもちだして、いまの自粛要請が同じ構図であると指摘する文章だ。

記事には、つい首肯したくなる指摘が随所にある。私も、「どう責任をとるつもりなんだよ。具体的にはどうするんだよ」と言いたくなることはあった。「日本って、そうなんだよなあ」と言いたくなる指摘だ。

しかし、悲痛な神風特別攻撃隊が編成された1944年から、もう76年が経過している。この間、私たちの社会にはなんの進歩もないのか。共通項もたくさんあるけれど、憲法も変わり、社会の認識も変わった。とくに人権をめぐる戦後の葛藤と運動の歴史を、すべてないがしろにしている評論だと思う。

わかりやすい例を挙げる。セクシャルハラスメント問題だ。
身体を求めただけ。応じたあなたが悪い。イヤならホテルに来なきゃよかったでしょ。私に責任はない
と逃げ回る加害者を、セクハラという概念で追い込んだのが、近年の歴史である。この数年は、さらにMeToo運動で、業界の大物も追い込んだ。

たしかに平河氏が指摘する通り、今後、
自粛をもとめただけ。応じたあなたが悪い。イヤなら自粛しなきゃよかったでしょ。こちらに責任はない
と言いはりそうな雰囲気はあるが、上のセクハラの文章と見比べて欲しい。構造はまったく同じだ。

つまり、いまの政府の自粛要請は、パワーハラスメントだと認定することができる。国家が国家権力をもって、自粛を要請したのだ。「イヤなら自粛しなきゃよかったでしょ」は到底、成り立たない

今後、集団訴訟をおこすなど、国に責任をとらせる方法はある。そもそも、特別措置法に外出禁止・営業禁止などの強い権限をもたせようとすると、それはそれで「軍国主義の復活」といって、反対するに決まっているのであるから、私はこのままにして、ハラスメント構造を武器にしていくべきだと思う。

追記

大阪で、休業要請に応じないパチンコ店が話題になっているが、今後も応じない場合、行政はこのような手段をとるらしい。これは、なかなか怖いよ。ハラスメントとは言い切れないから、対抗するのは難しい。

一方、世界のあちこちで、「言いつけを守らない国民」を射殺している。これが強権そのもの。こっちの世界のほうがいいですか? 日本はゆるすぎますが、このゆるい状態で新型コロナウイルス危機をしのぎきったら、かなり新しいですよ。