マスク信仰を払拭する機会

マスクが品薄だそうだ。言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症のせいである。ただでさえ、花粉症やインフルエンザが流行する時期だ。足りなくなるに決まっている。爆買いのオマケつきだ。

マスクで防げるのか?

しかし、焦ることはない。手洗いとアルコール除菌が感染防止に有効だと専門家が口を揃えている。それに、そもそもマスクで感染を防げるものだろうか。ちょうどいいタイミングで、首相官邸ウェブページに、
新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~
が掲載されたから、確認してほしい。はっきりと「マスクを着⽤することによる効果はあまり認められていません」と書かれている。

マスクには二つの問題があると思う。第一に、マスクの種類によっては、ウイルスは平気で通りぬけてしまう。これでは単なる気休めだ。そして第二に、防げたとしても、マスクを取り外すときに、指にウイルスをつけてしまう人が多い。

口・鼻付近のマスクの外側に、わんさか(呼吸で集めた)ウイルスが付着しているはずだから、絶対にそこを触らないようにしないといけない。そこを手でもって外したり、マスクの位置をなおしたりする人をよく見かける。これでは、指にウイルスが付着してしまうから、感染リスクが逆に高くなる。

もっと怖いのは、口・鼻側を内側に二つ折りにしてポケットにいれ、またそのマスクを使う人だ。ポケットの中にまでウイルスを蔓延させてどうする(どうしてもそれをする必要があるなら、内側が外側になるように折るべき)。マスクは使い捨てにするのが鉄則だと思う。満員電車でウイルスをマスクに収集して、ポケットにも溜めて、またそれを口・鼻に接触させるなんていうのは、愚の骨頂である。

むしろマスクは、他人のためにつけるものだと割り切るほうがいい。咳やクシャミによる飛沫を防ぐ。ウイルスに関していえば、マスクは防御するのではなく、周囲の人を攻撃しないためのエチケットツールである。そういう症状のない人は、マスクを医療従事者と花粉症の方に譲るべきだろう。

マスク信仰が問題だと思った地下鉄サリン事件

「マスクで防げる」と思いこむことの怖さをまざまざと感じたのは、地下鉄サリン事件(1995年3月20日)のときだった。築地小学校の生徒たち全員に、ふつうのガーゼのマスクをさせて、集団下校しているニュース映像にショックを受けたのである。

サリンのような毒ガスに見舞われたら、ともかく衣類をすべて脱いでシャワー、というのが常識だ。衣類に付着したサリンを吸い続けることになるからだ。にもかかわらず、わざわざ子供たちの顔にガーゼをあてて下校させるなんて! かつ、それを「安全対策をして下校させた」と報じるテレビ。あまりの無知、あまりのナンセンスさに、絶望的な気分になったものである。

日本人の「マスク信仰」は、この機会に払拭したほうがいい。花粉症には有効な自衛手段になり得るが、ウイルスに対抗するには限界がある。それどころか、扱いを誤ると、マスクをつけることで、かえって感染リスクを大きくしてしまう。

手洗いと洗顔+アルコール消毒

冒頭で紹介した首相官邸の情報には、手洗いが有効とあり、その洗い方までイラストで解説されている。マスクよりも、手洗いが重要だ。そしてアルコール消毒を併用しよう。新型コロナウイルスは、幸いなことにエンベロープ型ウイルスであり、アルコール殺菌が効く(ノロウイルスやロタウイルスなどにはエンベロープ(脂溶性の殻)がなく、アルコール殺菌は無効)。

マスク信仰に続いて、もうひとつ意味がわからないのが、うがいである。喉に病原菌やウイルスが体内に侵入するのをブロックする機能があるとは思えない。喉にウイルスが多数いるくらいなら、もう感染していると思ったほうがいいだろう。むしろ、たんに水を頻繁に飲んで、洗い流すほうがいい。うがいの努力よりは、手洗いとアルコール消毒、そして洗顔だと思う。

追記
厚生労働省のTwitterをフォローしておこう
https://twitter.com/MHLWitter

リンク先のイラストが参考になる。
マスクの効果と正しい使用方法(自治医科大学付属さいたま医療センター)

他人へのエチケットとしてマスクをしたいが、入手できないときの参考
ハンカチマスクの作り方
キッチンペーパーマスクの作り方

ニューヨークタイムスの特集記事。わかりやすい。
How Bad Will the Coronavirus Outbreak Get? Here Are 6 Key Factors

開業医によるまとめ
【新型コロナウイルス】『一般の人にマスクは効果はありません』という医療関係者にとっては当たり前の事実について科学的に書いてみた【2019-nCoV】

朝日新聞にマスクの効果についてのわかりやすい解説がのっていた
飛沫感染、マスクの予防効果は?
これによると、一般的な不織布マスクは5マイクロメートルの隙間。細菌とウイルスはすりぬける。

日刊ゲンダイが、子どもはマスクの表面を触ってしまうことが多く、かえってマスクさせると感染リスクを高めるという話を記事にしている(2.27)
マスクは感染リスクを高める恐れ「子どもには厳禁」と医師が見解【新型コロナを正しく恐れる】