この記事が役立つと思われる人

  • 新型コロナにかかりたくない人、二度とかかりたくない人
  • 子どもや家族がよく熱を出して困っている人
  • H5N1鳥インフルエンザが気になる環境の人
  • 感染症が増えている理由を知りたい人
  • 社員と事業を守りたい経営者

by Offside
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新型コロナウイルス感染症が5類に分類変更されて1年が経過した。心底驚いたのは、新型コロナの脅威が過ぎ去った、もう終わったという雰囲気を政府とマスメディアがつくったことである。

そして、あまりにも情報が減った。不自然なほど減った。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がいまだ流行中であり、死者が出続けており、脳や血管にも感染する厄介なウイルスであって、後遺症(Long COVID)に悩む人が増える一方だということを、多くの国民が知らないまま過ごしている。

思い込みから大きな誤解をしている恐れ

同時に「こんなのただの風邪だ」という人が増えた。私は、勝手な思い込みでこのような誤解がひろまったのではないかと疑っている。コロナウイルスは風邪をひきおこすウイルスとして認知されていた。そこにやってきたのが新型コロナウイルスだ。

ウイルス名はSARS-CoV-2. SARSはSevere Acute Respiratory Syndrome(重症急性呼吸器症候群)の略であり、特徴は重症肺炎をおこすことだと紹介された。事実、海外では人工呼吸器が足りなくなり、国内でも志村けんさんらがECMO管理となり、治療の甲斐なく亡くなられ(合掌)、社会に衝撃を与えた。

一方、2021年末から2022年初頭にかけて世界を席巻したオミクロン変異体で、めっきり肺炎患者が減った。このことから「弱毒化した」というのが定説となってしまい、肺炎をおこす特別なコロナウイルスが肺炎をおこさなくなったのだから、もはや「ただの風邪」であるというデマがひろがってしまったように思う。数式のように表現すると

  [肺炎をおこす風邪]-[肺炎]=[ただの風邪]

という論理である。

これは思い込みによる大きな誤解だ。COVID-19は到底、「ただの風邪」ではない。肺炎をおこさなくなったのは、新型コロナワクチンが効いたからであり、弱毒化したからではない。このことは、いまもワクチン未接種者には重症肺炎となる事例が多く出ていることが証明している。ワクチンのおかげで、肺炎にならずに済んでいる人が多いだけだ。

「ただの風邪」との相違点

ワクチンが効いてSARS(重症急性呼吸器症候群)らしい症例が滅多にみられなくなったわけだが、それだけで安心するのは早い。ただの風邪とはまるで違う、ということが次々と判明している*1

第一に感染範囲だ。風邪は上気道炎にとどまるものをいう。新型コロナウイルスは脳にも血管にも心臓にも腸にも感染し、炎症をおこす。この時点でもはや風邪ではない。

心臓や血管に感染することが判明した時点で「呼吸器系ウイルスではなく、心血管系ウイルスだ」と訂正されたのだが、さらに最近では、精巣や卵巣や筋肉など、ほぼ全身に影響が出ることがわかってきた。イタリアとスペインのサッカー選手を対象にした研究で、感染者に筋肉系の故障が増えていることがわかっている*2。なんと新型コロナウイルス感染症は、全身性疾患である。全身に感染し、炎症を起こし、細胞を劣化させる。

結果として起きるのは老化だ。新型コロナウイルスは老化ウイルスだとも言える。脳も心臓も肺も血管も、10年20年と歳をとったのと同じような劣化をしてしまう。60代でも感染後、老衰のような亡くなり方をする例が報告されている。

第二に、影響が長引くことである。風邪は急性期が終わるとケロッと治り、ごく一部の例外を除いて後をひかない。新型コロナは違った。きわめて高い確率で後遺症(Long COVID)が残る上、合併症が目につく。新型コロナの致死率は急性期の死者数だけで算出すべきではない。その後、心筋梗塞や脳梗塞などで突然死する事例が目立つからである。これまでの統計を見るかぎり、感染死が1人出ると、関連死が2人出ている(これが超過死亡の実態である)。

そして第三に、脳に大きな影響があることだ。感染すると軽症な人でもIQが落ちるとか、短期記憶がなくなるとか、空間認識能力がおかしくなるといったことが報告されている。アメリカの18‐44歳対象の調査では、「記憶・集中・判断の能力が著しく低下した」という人が37%もいるという*3

いずれも、風邪とは明らかに異なる。日本社会、とくに会社と学校はこのことをよく認識したほうがいい。以上の特徴を踏まえると、「感染から復帰した人の身体は、まだボロボロである」という結論になるからだ。自覚はできないが、体内の臓器や血管などいろんなところがウイルスによって傷つけられている。新型コロナ感染後に必要なのは「養生」だ。無理をさせてはいけない。

残念なことだが、本当の被害はここから

2020‐2021年の日本は、律儀にマスクをした国民性のおかげもあって、G7諸国ではまさにレベチといっていいほど被害を抑えることに成功していた。そこにワクチンが間に合い、オミクロンで弱毒化して、2023年5月8日には5類にもなり、マスコミが一斉に「明けた」といい始めた。

この流れなら、やっと「終わった」という気になるのも無理はない。しかし、現実には終わってもいないし、明けてもいない。被害はこれから信じられないほど大きくなる。これは断言してもいい。その根拠は、感染者が日本よりはるかに多い国々、つまり感染先進国の様子である。

日本は5類化を機に感染拡大を容認する政策に転換したので、周回遅れで感染先進国の後を追っている。現に、2022年の欧米で起きていたトリプルデミック(新型コロナ/インフルエンザ/RSVの同時流行)が、2023年の日本でも起きている。ちょうど1年遅れだ。すなわち、2023年の欧米で起きていたことが、2024年の日本を予測する。

では2023年の欧米で起きたことを箇条書きでまとめておこう。このまま感染拡大を放置すると、今年から来年にかけての日本でも再現される可能性が極めて高い。「終わった」というのは早計にすぎる。本当に被害が大きくなるのは、ここからだ。

  • 感染の波はおさまらない。そして変異体の個性によっては、入院率が高くなったりもする*4
  • 新型コロナは免疫にダメージを与えるため、トリプルデミックにとどまらず、溶連菌感染症など菌感染症も同時流行し、マルチデミックとなる
  • 厄介なことに、極悪な劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)までも急増
  • 複数回感染でLong COVIDを発症する率が高くなる。3回感染だと40%もの高率
  • 高齢者は致死率が高いが、現役世代はLong COVIDリスクが高い。アメリカでは20代‐40代を中心に1780万人がLong COVID(2024年3月時点)を発症*5
  • アメリカでは6.9%が、イギリスでは2%が病気を理由に失職している
  • カナダではLong COVIDに悩む就労者や学生の22%以上が、平均24日間仕事や学校を欠席し、約10万人が病気のため仕事/学校に戻れていない*6

まったくうんざりな状況が、これから本格化するということだ。「コロナも明けて」というマスコミの常套句を真に受けていると、とんでもない被害を受けてしまう可能性が高い。

改めて注意喚起しておく。幸せな4人家族を一瞬で暗転させる邪悪なパワーをもつのが新型コロナウイルスだ。上の子が学校から持ち帰り、生まれたばかりの下の子が感染して死亡。母親がLong COVIDで寝たきり、父親が失業なんていう不幸のどん底のようなシナリオがあり得る。「高齢者だけが死ぬ病気」と宣伝した漫画家がいたが、デマだ。

バランスが崩れた世界。21世紀は感染症の世紀

「早く2019年の世界に戻りたい」という声をよく聞く。わかる。しかし、この発言は危ない。「たまたま、とんでもないウイルスが流行してしまっただけ」という気持ちがよく出ているからだ。

思考実験をしてみよう。もしも新型コロナウイルスが誕生していなければ、私たちはずっと平穏だったのか、である。きっとそうではない。示唆する例が二つある。第一は、1998年に報告されたカエルツボカビ症だ。1980年代以降、両生類にカエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)による感染症が流行しており、501種の両生類が減少。90種が絶滅したと推定されている*7

なぜ突然、このようなことが起きるのか。原因はツボカビの変異だが、要因として疑わしいのは地球環境の変化だ。1960年代くらいから始まった石油エネルギーを潤沢に使っての大量生産・大量消費時代の到来である。人口増も進み、「開発」という名の自然破壊が進んだ(Long COVIDをもじってLong HOVID: Human Origin Violence Induced Damageと書いている人がいて、うまいことを言うなと感心した*8)。

この変化に大きな影響を受けるのが、微生物の世界である。たとえば、地球温暖化が進んで平均気温があがると、環境中の細菌叢に変化が出たりする。そして既存の平衡状態を崩すのだ。

そして、開発はヒトと動物との境界線も変えるし、接触も増える。これは人獣共通感染症(Zoonosis)リスクが高くなるということだ。それを如実に示すのが鳥インフルエンザウイルスである。これが第二の例だ。

インフルエンザウイルスはもともと水鳥と共生するウイルスだ(水鳥には不顕性感染する)。これが変異しヒトも宿主とするようになり、被害を出している。そしていま、致死率53%‐56%のH5N1型鳥インフルエンザウイルスがヒト・ヒト感染する寸前と言われている。2022年頃から哺乳類に感染する事例が多く出ていたが、2024年に入り、アメリカで乳牛への感染がひろがっているためだ。

つまり、温暖化を主因とする地球環境の変化によって、菌の世界のバランスが崩れている一方、人口増(=住む場所の自然への浸食)と開発によって、ヒトと動物のバランスも崩れ、そこに菌やウイルスが新天地を発見して活性化しているという構図である。

したがって、もしも新型コロナウイルスが生まれていなかったとしても、きっと何か別の菌かウイルスでパンデミックが起きていたに違いないと思われるのだ。温暖化でシベリアの凍土がゆるむと、封印されていた菌・ウイルスが復活し、パンデミックをおこすと警鐘をならす学者もいる。

そして見落としてはならないのが、物流・人流の世界規模での活発化である。よくひきあいにだされるのが100年前のスペイン風邪のパンデミックだが、あの当時はいまとでは物流・人流が違いすぎる。よく「新型コロナウイルスは変異が早い」というが、正確には「変異したウイルスが世界規模で流行してしまうのが早い」である。大量の物流・人流が病原体を運んでしまうためだ。

私は、21世紀は感染症の世紀になると考えている。地球環境の変化で平衡が失われた混沌の中で、ウイルスが新しい宿主を見つけたり、菌が住み心地のいい場所を見つけたりしている。これが再度平衡するまで続く。

この世界観が、新型コロナウイルスの人工説を支持しない理由でもある。しつこく人工説をとなえる人はきっと「こんな邪悪なものが突然出てくるのはおかしい。どこかに犯人がいるに違いない」という世界観だと思う。私は「突然、邪悪なウイルスがふってわいてきた」のではなく、菌・ウイルスとヒトとのバランスが崩れ、人獣共通感染症が多く出てしまう状況だからこそ生まれたものだと考えている。

少なくとも、新型コロナウイルスを作出した犯人が逮捕されたとしても、だからといって安心できる世界がやってくるわけではない。天然ものの、別のウイルスや菌が襲ってくるだけだ。

ダメージコントロールに頭を切り替えよう

私たちはダイナミズムを感じるのが苦手で、自然を見渡しても「きれいな風景だな」で終わるが、その風景をミクロでみれば、太陽からエネルギーをもらいながら、微生物から哺乳類までが弱肉強食と共生関係で動的平衡状態となっている。

そしていま、その平衡が崩れ、新しい平衡状態を求めて激しく変動している状況だ。私たちの体内でも起きている。2020年に「新型コロナウイルスを一言で定義しろ」と言われたら、「重症肺炎を起こす危険なウイルス」と返答しただろうが、いまは違う。「生体内のバランスを崩し、様々な病気の引き金をひく厄介者」と返答する。

この病気は感染したばかりの急性期の症状(これは免疫反応である)ではなく、その後のアンバランスが問題となる病気だ。持続感染することもあり、炎症や血栓などの影響が長く続く。そして他の病気にかかりやすくなったり、認知症や糖尿病や自己免疫疾患や心疾患になりやすくなったりする*9

本当に厄介なウイルスが出てきたものだ。さらに私たちの社会も厄介なことになっている。5類化は「もう気にすべき病気ではなくなった」という誤解を生み、「国はもうなにもしないということは、私たちもなにもする必要はないようだ」と感染対策を放棄し、マスコミも「明けた」とばかり言っている。

せめて公共交通機関とスーパーマーケット・病院だけでもマスクを全員が続けてほしいし、とくに学校は感染対策をしっかりやって子どもを守って欲しいところだが、いまのところそれもかなわない。大変残念なことだが、我が国は感染先進国の失敗を知っていながら、まったく同じ失敗を繰り返すつもりだ。

新型コロナウイルスの感染力からいって、こうなってしまうと逃げきるのはものすごく難しい。頭を切り替えるしかない。「感染しない対策」ではなく、「感染してもダメージを最小限にする対策」をとるしかないだろう。ダメージコントロールである。

被害が本当に大きいウイルスだが、感染してもたいしたことなく終わっている人のほうが多いこともまた事実である。Long COVID率は3回感染で40%と極めて高い数字だが、逆にいうと60%は後遺症と無縁なわけだ*10。同じ感染でも、後遺症が残る人と残らない人がいる。これは果たして、何が違うのか、ということだ。

曝露量を減らすことが重要

マウスなどの動物実験をしている研究者は肌で違いを感じている。感染時のウイルス曝露量が多いと、重症化しやすいのだ。それはそうだろう。どれだけウイルスの被害を受けるかは、ウイルスが体内でどれほど増殖して暴れまわるかに依存する。被害の広さと深さが問題なのだ。

もちろん、侵入してきた外敵に対して免疫が働き、やっつけようとする。この免疫反応に二つの穴がある。第一はタイムラグだ。最初に自然免疫が対応し、手に負えなかった場合、より強力な適応免疫が起動する仕組みになっているのだが、この適応免疫の起動までに数日かかる。曝露するウイルス量が多い場合、この数日間に大量増殖されてしまうわけだ。

第二は免疫の備蓄というか、能力だ。銃があっても銃弾が切れると戦闘能力を喪失する。相手にするウイルス量が多いと、免疫が弾切れ状態になりやすい。こうなるとウイルスがやりたい放題増殖する。そしてあっという間に1000億個くらいになる。当然、Sタンパク質もNタンパク質も大量に抱え込むことになるし、ウイルスのカケラも大量に体内に残り、炎症を起こし続ける*11

新型コロナウイルスのダメージコントロールは、したがって、曝露量を抑えることに尽きる*12。ワクチンをうっていれば、事前学習で適応免疫の起動も早く、ウイルス迎撃能力が高くなっているのだが、それでも大量のウイルスに曝露し、防御能力を越えてしまったら話は同じである(接種しても重症化する人がいるのは、これで説明できる)。

では、新型コロナウイルスへの大量曝露を避けるにはどうすればいいか。鉄則は

  • 空間ウイルス浮遊量が多いところではマスクをし
  • 短時間で抜け出す

の二つである。もう少し具体的に説明しておこう。

大量曝露を避けるテクニック

大量のウイルスに曝露することを避けるには、危険を察知する能力を磨くしかない。新型コロナウイルスのIRPs(Infectious Respiratory Particles. 感染性呼吸器粒子)はタバコの煙のようにひろがると言われている。最近は喫煙できる場所も限られており隔離されているから、実体験する機会はほぼないが、周辺に喫煙者がいると仮定して、「タバコの煙を吸わないようにする」行動をとればいいわけだ。

飲食店では換気を気にしよう。料理のいい香りがする店は、残念ながら勧められない。とんかつや天ぷらの店なのに、油の匂いがしてこないようなところがいい。可能なら、携帯型のCO2モニターや粒子計を持ち歩き、いろいろ測定するといい。だんだん計測しなくても、「ここは換気がいい」とわかるようになる。

私が実測したかぎり、天井の高さがかなり影響する。天井が高いところはおしなべて数値がいい。容積が大きいとIRPsの濃度がうすくなるということだ(これはブラウン運動によるものと推定される)。

電車やバスなどは天井が低い上、人も多いので難関だ。なにしろ、飲食店は選べるが電車は選択の余地がない。ラッシュ時などは、否応なしにウイルス量の多い空間に身をおいてしまうことはある。常にN95マスクのような高性能マスクを持ち歩いて、つけかえるといい。なければ、不織布マスクの上に布マスクをする等で、肌への密着度を高める。隙間がなければ、不織布マスクでもN95マスクにひけをとらない。

満員電車よりひょっとするとリスクが高いのが、新幹線や特急電車だ。実測すると換気はほとんどできていないし、なにしろ乗っている時間が長い。やはり高性能マスク一択である。

新幹線に限らず、「時間」は気にしたほうがいい。同じ空間に長くいることも、同じ人と長く一緒にいることも、曝露ウイルス量を多くしてしまう要因になる。会社のデスクではノーマスクで過ごすとしても、会議室ではマスクをしたほうがいいし、なるべく短時間で終わらせるほうがいい。ヒートアップして長くなるなら、休憩をいれて換気をするか、Corsi-Rosenthal Boxのような空気清浄機を設置しておく。

意外な穴がトイレと「外」だ。トイレの個室を使うならマスクをしたほうがいい。そしてさっさと済ませる。便の中にウイルスがひそむことが多く、水洗時にそれが飛び散り、乾燥してくると浮遊する。ノーマスクでゆっくりしていると、大量に曝露する可能性はある。

外を歩くときは、臨機応変に着用しよう。前を歩く人間の歩きタバコにイラついたことがあるだろう。風のある日は別にして、前の人間が吐き出すウイルスのIRPsを吸い込む可能性があるということだ。野外コンサートなどでも同じである。隣が喫煙すると煙を吸い込むだろうなという場面なら、マスクである。

BBQも外だが、クラスターが発生するくらいでリスクはある。ともかく、風下に立たないことだ。向かい合って話ながら食べるよりは、並んで同じ方向を向くほうがいい。こうすることで相手の飛沫が料理に落ちることも避けられる。

手指衛生は頻繁にやることが大事

じつは最近、気になる論文が発表されている。以下だ。
Substantial transmission of SARS-CoV-2 through casual contact in retail stores: Evidence from matched administrative microdata on card payments and testing
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2317589121
これはクレジットカードの履歴と感染のデータを比較し、新型コロナ感染の多くは小売店での買い物で起きていることを証明した研究である。やはり買い物でも、マスクと手指衛生は必須だ。ノーマスクな小売店では、接触感染・飛沫感染・空気媒介感染のいずれもが起きていると私は考えている。

不思議なことに、「新型コロナウイルスは空気媒介感染する」となったとたん、手洗いの習慣がすたれてしまった。これはよろしくない傾向である。とくに感染経験者は手指衛生を頻繁にやるべきだ。未感染者より、溶連菌などさまざまな菌・ウイルスに感染しやすくなっているからである。

利害関係者であることをお断りした上で、私はGSE(Grapefruit Seed Extract. グレープフルーツ種子抽出物)の活用を勧めている。石鹸による手洗いを二度繰り返すのがベストだが、水場がないとできないという欠点がある。GSEは汚濁環境でも除菌効果があることが確認されており、新型コロナウイルスだけでなく、鳥インフルエンザウイルスもSTSSを引き起こす溶連菌なども抑制できる。

無臭で頻繁に使っても肌が荒れることなく、皮膚のバリア機能をこわすこともない。子どもにも安全だ。幼児がナメてもアルコール中毒のような危険はない。曝露ウイルス量を減らす目的にも有用である。私は電車に乗る前に、髪の毛や衣服にスプレーしている。GSEは効果に持続性があるから、付着したウイルスを抑制する(つまりウイルスを減らす)ことが期待できる。H5N1リスクが気になるなら、動物と接する前後にもしておくといい。

私たち人類は、温暖化や乱開発などで「平衡」が崩れた中、ウイルスが新しい宿主を見つけ、菌が居心地のいいところを見つけて、ダイナミックに新しい平衡を見つけようと動いているところに巻き込まれている。ヒトは、現時点ではやられる一方だ。ヒトが微生物(微物を含む)に押されまくっているのである。

その影響を最小限にとどめるには、ヒトに安全でありながら菌・ウイルスを抑制する能力のあるものが必要だというのが私の意見である。微生物を押し返し、生活空間から遠ざけるしかない。GSEの開発者であるJacob Harich博士は晩年、免疫不全に陥ったエイズ患者のケアに利用する研究をしていた。きっと同じことを考えていたに違いない。
cf.
「GSE開発物語」
https://furuse-yukihiro.info/2024/04/gsehistory/

いずれにせよ、新型コロナウイルスによる被害の程度は、体内で早期撃退できるかどうかにかかっている。その確率を高めるには、ワクチン接種に加えてウイルス曝露量を下げておくことが重要だ。

マスクに意味はある。

by Offside
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注記

*1 こちらの記事で根拠論文とともに詳述している。
「パンデミック 2.0が始まった」
https://furuse-yukihiro.info/2023covidcolumn22/

*2 イタリアとスペインの1部リーグのプロサッカー選手で調査。新型コロナ感染経験者は、筋肉損傷の可能性が3.7倍から5.1倍高い(プレプリント)
How long is the long COVID? a retrospective analysis of football players in two major European Championships
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2023.03.11.23287138v1

*3 Long COVID’s Impact on Patients, Workers, & Society: A review
https://journals.lww.com/md-journal/fulltext/2024/03220/long_covid_s_impact_on_patients,_workers,__.50.aspx

*4 たとえば2024年春の変異体・FLiRTによって、英米では症例数や死者数が増加している。変異体による波はおさまっていない。
cf.
New Covid strain dubbed ‘FLiRT’ is ‘harder to stop’ and has increased vaccine immunity
https://www.dailystar.co.uk/news/world-news/new-covid-strain-dubbed-flirt-32747928

*5 Long Covid at Work: A Manager’s Guide
https://hbr.org/2024/05/long-covid-at-work-a-managers-guide

*6 Experiences of Canadians with long-term symptoms following COVID-19
https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/75-006-x/2023001/article/00015-eng.htm

*7 Amphibian fungal panzootic causes catastrophic and ongoing loss of biodiversity
https://www.science.org/doi/10.1126/science.aav0379

*8 https://twitter.com/Yash25571056/status/1788690350275547375

*9 心臓発作など主に高齢者がおこすものだったが、新型コロナ感染で若い人にも目立つようになっている。たとえば、2023年には
・25‐44歳の心臓発作死は29.9%増
・45‐64歳は19.6%増
・65歳以上は13.7%増
が観察されている。
cf.
Young people are more likely to die of heart attacks post-COVID, study finds. But why?
https://www.today.com/health/covid-heart-attack-young-people-rcna69903

*10 後遺症が出ていなくても、血管や心臓に自覚できない後遺症が続いている可能性はあるから、安心するのは早い。やはり感染後は養生に徹するべきだ。

*11 急性期が終わったあと、体内に残る新型コロナウイルスの断片が再集合し、炎症を起こし続けることがわかっているから、ウイルス曝露量が多く、大量に増殖するのを許すのは、それだけでもリスクである。
cf.
Viral afterlife: SARS-CoV-2 as a reservoir of immunomimetic peptides that reassemble into proinflammatory supramolecular complexes
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2300644120

*12 もちろんこの研究が示すように、ウイルスの曝露量だけでなく、諸個人の免疫の状態も重症化と大きく関係しているが、遺伝的要素などは個人の努力で変更できるものではないので、ここでは割愛する。
cf.
Cellular heterogeneity in disease severity and clinical outcome: Granular understanding of immune response is key
https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2022.973070/full