私家版新型コロナ感染予防策

厭戦気分はわかる。「オミクロンで、ただの風邪になった」と思いたい気持ちもわかる。私も気持ちは同じだ。いい加減マスクもやめたい。でもいまはまだ、緩めないほうがいい。感染しないほうがいい。

新型コロナウイルスはけっして弱毒化はしていないし、ワクチンの普及で重症者は減っているが、感染者数が多いので、2022年8月の一カ月間で、20-50歳代の現役世代も100人以上が落命している。それぞれに家族がいて、仲間がいたはずだ。到底、「寿命でした」で済ませるわけにはいかない。

国は盛んに「感染予防策の徹底を」と言っている。換気・マスク・手洗い・3密の回避だ。もう聞き飽きただろうから、もっと踏み込んだ私なりの感染予防策をまとめておくことにする。

いまは「減らす」だけでいい。大きな進歩

ワクチン前は、ゼロウイルスにする必要があった。ヒトに免疫がなく、数個のウイルスでも感染してしまうから、感染を予防するには環境中の新型コロナウイルスをゼロにしなくてはいけない。これは厳しい。

しかしいまや、減らすだけでいいのである。大きな進歩だ。ワクチンである程度の免疫がついているので、目・鼻・口の粘膜が大量のウイルスに曝露することさえ防げば、感染を高い確率で回避できる。たとえワクチンを接種済でも、感染予防策が必要であることは、「ワクチンをうっても感染するのはなぜか」で説明した通りである。

以下、「ウイルスを減らせばいい」という前提で、かつ「感染者がとても多い状況」を前提にしての、大人の感染予防策をまとめる。たとえば黙食を推奨するが、これは感染者が多い場合の対策であって、感染者が激減している時期には必要ない。感染状況に応じて、対策を取捨選択していただきたい。

問題はマスクをとる場面

互いにワクチンを接種し、互いに不織布マスク以上の高性能マスクをきちんと着用していれば、感染する確率を小さくできる。逆にいうと、注意しなくてはならないのは、マスクをとる場面だ。「マスクをしているのに感染者が世界一だ。意味がない」という意見をよく見かけるが、主として感染はマスクをとった場面で起きていると考えられる*1。

第一は、会食である。第二は、場面の切り替わりだ(たとえば温泉の脱衣場が典型例)。そして第三は、家庭である(子どもはワクチン接種が進んでいないし、子どもと家庭内感染の対策は最後にまとめる)。


会食での感染予防策


会食は黙食がベスト

8月中旬のような感染爆発期に会食するなら、料理が出てきたら黙食し、食べ終わってからマスクをして話す。
  黙食×話すならマスク
ということである。「いま、感染が凄いですから」と相手に提案すれば、失礼と思われることもないだろう。むしろ接待では、相手に感染させたくないという心遣いが伝われば、好感をもたれるはずだ。

念のため再度記すが、黙食×マスク会話は感染爆発期において推奨する対策である。けっして「一生黙って食べろ」とは言っていない。感染者が減り、世の中が落ち着いていればこの対策は不要だ。

換気のいいお店を選ぶ

もちろん換気のいい店を選ぼう。CO2センサーを持ち歩くと、参考になる。一般論としては、焼肉店やとんかつ店、焼鳥店など日頃から換気扇が活躍しているお店や、隣のテーブルとの距離が適度にあるお店がいい。

店の雰囲気に注意

客の雰囲気も重要である。大笑いの多い明るいグループが宴会をしている場合、感染リスクは高まる。ノーマスクの大笑いと大声で、マイクロエアロゾルが大量に宙を舞っているからだ。

換気がしっかりしていればあまり心配することもないが、感染爆発期は気にすべきだろう。20人のグループなら1人や2人は感染者だ*2。全員がおだやかに話す店のほうが好ましい(店舗も感染爆発期には、「静かにお願いします」と注意していいと思う)。

短時間で店を変える

あまり言われていないが、これも鉄則だ。換気が悪いのにギュウギュウに客をいれているなど、お店そのものにリスクがある場合は避ければいいが、静かなお店だけど、たまたますぐ隣に感染者がいた場合の危険は察知できない。

居心地がよくても、一つのお店に長居しないことである。積極的に短時間でハシゴするほうが、リスクを分散できるし、経済も回る。

メンバーはなるべく固定する

これも注意喚起は少ないが、重要なことだ。飲み歩いてもいいが、メンバーを固定しよう。これだけで感染リスクは小さくできる。ヒト・ヒト感染症だから、ヒトとの接触を避けることが感染予防の基本だ。これは「会食する人間を固定する」ことでも達成できる。

毎晩、デートする相手を変えるようなモテはうらやましい反面、そのうちの誰かからウイルスをもらってしまう可能性が高いという話である。

会食は4人まで

感染拡大期には、人数を絞ることも有効である。経験上、5人以上になると、テーブル配置も問題なら、話も錯綜してつい大声を出すことになりやすい。そして人が多ければ多いほど、そこに感染者が混じる可能性も大きくなる。4人までを原則にしておくと、落ち着いて会食ができる。

料理内容に気を使う

第7波では激しい咽頭痛に悩む患者が多かった。全員がそうならオミクロンBA.5の個性だろうが、咽頭痛になる人もならない人もいるので、私はウイルス入り飛沫を大量に含む食事をとり、咽頭に大量にウイルスを付着させた人が咽頭痛をおこしていると考えている(仮説である)。Ct=25以下の感染者が飛ばすツバには、数10万個‐数100万個のウイルスがいると推定される*3。

ウイルスは熱に弱いので、熱々の料理を熱々のまま食べるなら、いくらウイルス入り飛沫が降り注いでいても気にする必要はない。気になるのは、テーブルの上に料理が置かれっぱなしの場合だ。たとえば、ポテトフライやサラダなどである。なるべく熱々のメニューにし、そうでないものは、短時間に食べきるほうが安全である。

食事中も頻繁に手指衛生

入店時に手指消毒を求められることが多いが、それで終わりかよ、ということである。前の客が感染者なら、マスクをとって食べている間に、大量にウイルスを出している。当然、調味料容器などにも付着するだろう。しかし、飲食店でテーブル清掃は当然だが、調味料容器を拭いているのは見たことがない。

いちいち環境消毒をするよりは、手指衛生するほうが確実でカンタンだ。食事中も、何かを触ったあとは、すぐに消毒するといい。ともかく食事中は、想像するよりずっと、手を使っている。テーブルに除菌液を置くレストランは、「わかっている」のである。積極的に使ったほうがいい。

BBQでは向かい合わない

「空気感染(マイクロエアロゾル感染)もするから換気が有効」という話が、いつの間にか「空気感染だから、外では感染しない」に脳内変換されてしまっていることも多いようだ。換気がいいに決まっている屋外のBBQでも、クラスターが発生している。

これは飛沫感染だろう。相手の唾が自分の料理にかかり、それを食べての感染としか考えられない。対策はひとつ。向かい合わないことである。話すにしても、隣あい、同じ方向を向いて話せば、相手の飛沫が自分の料理にかかることはない。ただし、風向きには要注意だ。相手の風下に位置してはならない


場面の切り替わりでの感染予防策


温泉は安全だ

私はヨーロッパで温泉入浴体験があるが、温度が低くてつまらなかった。やはり日本の温泉が最高である(当社比)。この温度なら、ウイルスも活力を失う。その上、湯気が多く湿度が高いので、空気中を漂うウイルスは下に落ち、石鹸とともに流される。飛沫をかぶる距離で話すことだけ避ければ、温泉は安全だ。

脱衣場は要注意

しかし温泉でも感染することはある。危ないのは脱衣場である。着替えるからマスクを外している。そこでうっかり、しゃべってしまう。「トレーニングジムでクラスター」という事例も、調べてみたら、更衣室での会話が原因だったこともある。ともかく、マスクなしで、近い距離で話すのはよろしくない。同じことは会社の更衣室などでも言える。

しゃべらなければ喫煙室は安全

同じ理由でリスクが高いのは喫煙室である。ただ幸いなことに、煙対策で換気能力が極めて高いので、マイクロエアロゾル感染の心配はまずない。マスクをとってタバコを吸っているのを忘れて、友人と話さないことである。

エレベータでも黙ろう

ついしゃべってしまいがちだが、エレベータは密室で狭く、フィジカルディスタンシングがとれないことが多いから、エチケットとしては黙ったほうがいい。マスクをしていてもだ。

電車ではきちんとマスクを

もちろん電車移動中は、きちんとマスクを着用しよう。コツはノーズフィットをきちんと使い、鼻の形にあわせて、密着させることである。隙間があると防御能力が落ちる。そして防御能力以上に重要なのが、飛沫を周囲に飛ばすのをとめる機能である。つまりあなたが感染者だった場合に、感染をひろげない効果がある。

感染爆発中の東京でシミュレーションすると、300名の満員電車の中に、20名以上の感染者が乗っている。隣の人が感染者かもしれない。こんな時期にノーマスク運動なんて、迷惑きわまりない行為だ。

電車から降りたら注意

密な電車に乗ってしまった場合は、全身にウイルスをかぶっている可能性があると考えて行動すべきだ。真後ろにたっていた人間が感染者だったかもしれない。

とくに髪の毛に注意したい。静電気や整髪料でウイルスをひきつけている可能性がある上、それこそ場面のきりかわりで、うっかり髪の毛を触るクセをもつ人がいる。なるべく髪の毛は触らない。触ったら手を洗う(または手指消毒をする)。

帽子をかぶるのも有効な対策だ。

コロナ対応ファッションに変更

ついでに書いておきたいのが、コロナ対応ファッションの勧めだ。クールビズでノーネクタイにしたのだから、感染爆発期にもできるだろう。ネクタイは手で触る上、相手の飛沫をかぶる位置にあり、かつ洗わない。ウイルスを首からぶら下げて歩いている可能性が高い。ノーネクタイで、洗える服装を標準にすべきだ。

行楽列車でもお静かに

感染者がほとんどいない状況では話は別である。感染爆発中の旅行では、列車内でもなるべく会話は慎もう。危険なのは、ビールをあけてからしばらくしたところだ。いい気分で、マスクを外したままついしゃべってしまうから、飛沫を周囲に撒き散らす。よろしくない。

共用車ならマスクを

「ひとりでクルマを運転しているのにマスクしているバカがいたんだよ」という投稿を見かけた。半分は当たっている。マスクの大きな効果は、他人に飛沫を飛ばさないことだ。同乗者がいないなら、マスクは本来、必要ない。

しかし、複数の人間が運転する社用車等共用車の場合、話は変わってくる。その前に運転した人間が感染者で、ひとり運転中に歌ったりしていたとすると、ダッシュボードからステアリングまで、あらゆるところにウイルス入り飛沫を飛ばしている。マスクはこれを防ぐ。

クルマは対角線で二か所の窓を開ける

同乗者がいるなら、もちろん車内でもマスクは必須だ。その上で、運転席側の窓と後部左側の窓、あるいは助手席側の窓と運転席後ろの窓など、対角線で二か所の窓をあけて走行するといいだろう。きちんと不織布マスクをしているなら、窓を大きくあける必要はない。空気中のウイルスを減らせばいいのだ。

公衆トイレに長居しない、化粧なおしをしない

新型コロナウイルスは腸にもとりついて増殖するので、大便に多数、ウイルスが含まれていることがある。これが水洗のときに飛び散ると言われている(水の落差を利用して洗い流す「洗い落とし式」の水洗便器の場合)。問題はその先で、水分が蒸発すると、飛び散ったウイルスが空気中を漂う可能性がある。

このウイルスに感染性があるかどうかは議論があるが、念のため避けたほうがいいだろう。滞在時間を短くすることだ。また、飛び散るのを防ぐために、便座の蓋をしめてから流すといい。こうすると、ノロウイルスなど別のウイルスの飛散も防げる(「サイフォン式なら蓋をしめなくていい」という指摘もあり、それには同意する)。

化粧直しもやめたほうがいいと思う。目や口をウイルスの付着した手でいじることになるかもしれない。


家庭内感染の予防策


最後に家庭内感染の話である。これはなかなか頭が痛い。オミクロン期に入ってから、子どもの感染が急増している。いまや感染者の中心は子どもたちだ。デルタ変異体までは、親が感染し、子どもにうつしていたのだが、いまは逆である。子どもが感染し、親が自宅待機になっている。つまり、子どもが感染者ではないか、という想定で動くことが求められる。

この背景には、子ども(5-11歳)のワクチン接種がちっとも進んでいない。0-4歳のワクチン接種は、始まってもいないという事情がある。重症化リスクを小さくするためにも、早急に接種を進めるべきだ*4。

とはいえ、対策は難しい。家庭内では互いにマスクというわけにはいかない。むしろ、学校等でマスクをさせられる分、家庭ではマスクを外して、表情を読む経験を積ませるほうがいい。その上、どうやっても親子関係だから「密」になる。悪条件が重なっている。家庭内感染を防ぐのは至難だ。

それでも、できることはやっておこう。

帰宅したら親子ともどもお風呂へ

子どもに感染が急増したのは、オミクロン変異体になってから、唾液中のウイルスが増えたためと私は考えている。唾液PCRや唾液抗体検査の陽性の精度があがっていることが、その証左だ。子ども同士は距離が近く、互いの飛沫を飛ばしあう間柄だ。

つまり、皮膚にも髪の毛にも衣服にも、ウイルス入り飛沫が付着している。新型コロナウイルスはモノの表面で長寿命という厄介な性質があり、帰宅した時点で、全身ウイルスまみれであると想定される。

すぐにお風呂に入ろう。二つの目的がある。ひとつは髪の毛や皮膚についたウイルスを洗い流すこと、もうひとつは、ウイルスまみれの衣服を洗濯機にいれて着替えることだ。

手洗いをしっかり

飛沫が手にもつくことを想定して、子どもには「頻繁に手を洗いなさい」と教え込んでおこう。水で流すだけでも効果はある。第7波で明らかになったのは、発熱外来にくる子どもの中には、RSウイルスなど手洗いで防げる病気の子もいたということだ。これはつまり、換気に気をとられて、手洗いがおろそかになっていたからだと推定できる。改めて「休み時間には毎回手を洗いなさい」と言うべきだろう。

食事のとり方を工夫する

基本的な考え方は会食でのリスク管理と同じだが、親子で黙食・マスク会話というわけにはいかない。ではどうするか。まず、(学校などで感染してしまったかもしれない)子どもからの飛沫を、自分の皿に受けないようにすることである。配置を工夫しよう。あるいは、同時に食べるのをやめ、すこし距離をとっての話し相手に徹しよう。

食べ残しを食べない

親なら当たり前のようにやっていた、子どもの食べ残しの処理であるが、いまはやめておいたほうがいい。食べ残しを片づけて感染した例が報告されている。

ゴミの片づけにも注意

感染していたとしたら、子ども部屋のごみ箱のティッシュペーパーは、ウイルスまみれである。そっとビニール袋をかぶせて密閉して捨てる。できれば、子ども部屋の掃除のときはマスクをきちんと着用するといい。

終わったら、もちろん丁寧な手洗いが必須である。

歯ブラシとタオルは個別管理に

インフルエンザの話だが、家族全員分の歯ブラシを一か所においていて、歯ブラシ同士の接触で感染がひろがった事例がある。歯ブラシとタオルを個別管理に変更しよう。歯ブラシ同士を接触させない、同じタオルを共用しないことが大事だ。

トイレと洗面所は消毒しよう

これは子どもの感染が確定した上、自宅療養となった場合の話である。当然に子どもに一部屋あてがい、そこに隔離するしかない。看病するときは、換気に留意しつつ、最低限高性能マスクをきちんと着用し、ヘアキャップをしよう(可能なら子どもにも、看病の間だけでもマスクをさせよう。互いに高性能マスクなら、短時間の看病なら感染を避けられる*5)。

その上で、トイレと洗面所は消毒をする。この二つは感染していても使うからである。

掃除は日頃からこまめに

悩ましいのが掃除だ。感染者がノーマスクで吐出したウイルスは、唾液などを含んで重いため、床に落ちる。やがて唾液が乾燥し、ホコリなどにのって宙を舞う(このウイルスが感染性をもつかどうかは議論があるが、もつと私は推定している)。

うっかり掃除機をかけると、部屋中にウイルスをふりまくことになる可能性がある。かといって、掃除しないでいると、ホコリがウイルスを運んでしまう。ともかく、掃除をするときはしっかり不織布マスクを着用することだ。

そして終わったらすぐに風呂にいく。そして日頃からこまめに掃除しておこう。

まとめ

早く、なにも気にしないで、マスクもしないで暮らせる日々がくるように願うしかないのだが、第7波が冷酷に私たちに伝えたのは、いきなりそのような昔の生活に戻るのは難しいということだ。

それでも、ワクチンを接種して、マスクをすれば、かなりの程度、経済を回すことができる。そもそも「マスクをすると止まる経済」はごくわずかだ。いかにも面倒だが、留意しながら経済を回すしか、いまの我々に残された選択肢はない。参考になれば幸いである。

注記

*1
21,770人の感染者が出た東京の8月31日のデータをみると、4,785人が濃厚接触者としての感染で、内訳は施設内620人/職場内238人/家庭内3,559人/会食46人/夜の街1人/その他321人。ダントツに家庭内感染だ。当然、マスクを外していたと考えられる(その他の16,976人は感染ルート不明)。

*2
2022年7月28日の東京都(人口1396万人)の感染者数は40,395人であった。20人の宴会なら、1,2名の感染者がまじっていると想定できる感染状況である。

*3
「ガラスの破片を突き刺したような激しい痛み」だという。これは咽頭の組織が激しくウイルスにやられ、生体が激しくそれに反応していることを示す。咽頭に付着させてしまったウイルス量も多かったと推定できる。

なおCtはCycle thresholdの略で、PCR検査で使われる単位だ。数字が小さいほうが、ウイルス量が多いことを示す。詳しくは「PCRと死因のデマに踊る人々」を参照。Ct=25以下の人の唾液の1ccには、約1800万個のウイルスがいるとされている。

*4
第36回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料として提出された新潟大学小児科の齋藤昭彦氏の資料によると、第7波で重症の小児が急増しており、かつ、そのうちの68%は基礎疾患がない。ワクチン接種が急がれる。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000984874.pdf

「子どもは感染しても無症状か軽症」と感染を煽る大学准教授もいるが、まったくの虚偽である。死亡する子も重症の肺炎になる子も脳症になる子もいるのが現実だ。

なお、「子どもはいろんな病気に感染して強くなるもんだ。子どもにワクチンなど必要ない」と言い放つ地方議員も国会議員もいるが、これは「弱い子はこの段階で死になさい」と言っているのと同じだ。

すっかり忘れているようだが、戦後を過ぎるまで、多数の幼児がジフテリアや百日せき、ポリオといった感染症で命を落としている。この状況を変えたのがワクチンだ。乳児死亡率はこの60年間で約20分の1に低下した。新型コロナにワクチンなど不要、と叫ぶ議員は、戦前まで時間軸を巻き戻したいのか。

中には「病気で子どもが死ぬのは自然なことだから仕方がないが、予防接種による被害は人為的なことなのだから許されない」という価値観の人もいる。相いれない。ワクチン接種で救える命をみすみす失うのは、「自然なこと」と済ませるべきものではないと私は考えている。

*5
感染者と非感染者が同席した場合、ノーマスクからサージカルマスクまでの組み合わせで、何分まで感染せずに済むかを示した表がこちら。縦の男性が感染者である。互いにノーマスクなら15分の接触で感染。感染者がサージカルマスクで、非感染者の女性が布マスクなら、40分間は看病できる。
(ただし、オミクロン変異体では、この半分の時間を想定したほうがよさそうだ。)

出典:https://healthfeedback.org/claimreview/scientific-evidence-shows-mask-wearing-effective-at-limiting-community-transmission-claims-face-masks-increase-mortality-based-on-flawed-correlation-studies/