[COVID-19]第二波への覚悟

めまぐるしく状況が変わる。阪神の藤浪晋太郎選手やヴィッセル神戸の酒井高徳選手が感染し、志村けんさんが亡くなった。そして、感染者数が日々、増えている。

油断したところに、第二波

2月以降、日本は比較的うまく対応できていたと思う。これは、たまたまだと私は思っている。ハグしない、キスしないどころか、握手もまずしない。靴をぬぐ、毎日お風呂に入るという生活習慣も大きいだろう。水をふんだんに使えるのは、じつにありがたい。

しかし、3月下旬から、様相が変わってきた。東京都の感染者数が増加傾向にあり、そして山形県・富山県などでも感染者が見つかっている。桜が咲いて、浮かれた気分になっているところに、海外からの帰国者が「第二波」を持ち込んできたようだ。京都の大学で発生したクラスターなど、その典型である。卒業旅行で、ヨーロッパを旅してきた学生が感染し、スプレッダーとなってしまった。

種類が違うウイルス

やっかいなのは、この第二波が、また種類の違う新型コロナウイルスらしい、ということである。以下のページによると、いま日本で広がりはじめているのは「L亜型」のようだ。欧米で流行している、感染力の強いタイプである(これまで、国内で確認されていたのは「S亜型」)。L亜型の「2次感染、3次感染が発生していると考えるべき」だという。

COVID-19情報(横浜市立大学生命ナノシステム科学研究科佐藤彰洋特任教授)
https://www.fttsus.jp/covinfo/

このページにシミュレーションが出ている。それによると、いますぐ人と人との接触を禁止し、それを14日間継続しないと、感染拡大をとめられない。3月30日夜、小池百合子東京都知事は記者会見し、夜遊びを自粛するように求めていたが、それでは生ぬるいということを、私たちは自覚しなくてはならないだろう。

もう批判はたくさん

ウイルスの型が違うこと、そしてこのシミュレーションをみれば、誰もが絶句するのではないか。本当に、これまでは「たまたまうまくいっていただけ」だ。次の瞬間、日本のすべての都市を封鎖する必要があるかもしれない状況だ。

ここにいたっても、新型コロナウイルス対策を政争の道具、政権批判のネタにするのは、やめていただけないかと思う。与党も野党もない。「検査しないのはいかがなものか」ではなく、「こうしたらもっと検査できるのではないか」という提案をすべき時期だ。批判よりも協力を、である。

1分1秒がもったいない。一瞬で、感染は爆発するのだし、批判に費やす時間があるなら、経済面で、国民の生活をどう守るかという議論をしてもらいたい。数週間、店を閉めろ、コンサートもするな、という「お願い」で済ませていることこそ、無責任きわまわりない。

検査への誤解

陰謀論も、そろそろ勘弁してほしい。「オリンピックを控えて意図的に検査をしなかった」「延期を決定した瞬間に感染者!」という物言いは、最前線で新型コロナウイルスと戦っている医療関係者の心をくじく。

もしもその通りで、国の方針がまったく間違っているなら、感染症の専門家たちが黙っていないだろう。意図的に検査せず、感染者を野放しにしていたのであれば、いまごろ、病院の廊下にまで重症者があふれているはずである。病院が治療を断っていたのであれば、遺族が顛末を週刊文春にもちこんでいる。

検査しろ検査しろと批判を重ねた人の中に、感染症の専門家がいただろうか。口を揃えて「韓国は」というが、感染者の発生状況が異なる。韓国は局地的に感染者が爆発したから、そこでは無症状の人も検査するという対策をとっただけではないか。韓国全土で全数検査をしているわけではない。

いまは瀬戸際というか、土俵際というか、一瞬先がわからない状況である。我が身を守ること、大切な友人や家族を守ることを最優先にする行動をとるしかない。うっかり帰省すると、地方の高齢者がバタバタと倒れることになるかもしれないのである。この記事にも、目を通してほしい。

新型コロナウイルスはこうして広がっている、遺伝子技術で判明
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/033000204/

追記:専門家が考えていること

厚生労働省対策推進本部クラスター対策班 の押谷仁・東北大学教授がまとめた資料が、とてもわかりやすい。都知事の記者会見の背景には、この研究がある。必読だ。

COVID-19への対策の概念(PDF)
https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf