スーパーキャパシタへの道

キャパシタ(Capacitor)は、コンデンサのお化けである。「電気を貯める新しいデバイス」として、注目を集めている。従来のバッテリの困った点を、ほとんど解決しているからだ。

第一は、寿命が長いことである。スマートフォンのバッテリ劣化に困った経験は、いまや誰もがあるだろう。充電と放電を繰り返すたびに、バッテリは劣化する。鉛電池にしろ、ニッケル水素電池にせよ、リチウムイオン電池にせよ、化学変化でエネルギーを蓄積する方式であり、変化させるたびに変質していくからである。

対して、キャパシタは物理的に電気を貯める。バケツに水を放り込むようなものである。何度水をいれても、バケツは劣化しない。これはとてもうれしい性質だ。プリウスやテスラのようなHV車、EV車を見るたびに、「廃棄物をどうする?」という心配が頭をよぎる。今後毎年、数100万個単位で、消耗し、使えなくなったバッテリがゴミとして出てくるわけだ。

第二は、充電が早いことだ。スマートフォンの普及で、「電源をお借りします」といわれることが増えた。消費した電力を返す人に会ったことがないので、「お借りします」ではなく、「いただきます」というべきではないかという話はさておき、貸したところで、充電はなかなか進まない。化学変化で電気を蓄えるので、反応がゆっくりなのだ。

キャパシタは物理的に貯めるから、充電が一瞬で終わる。数10秒~数分で満充電になる。これはとても大きい。多少、持ちが悪くても、充電がすぐに終わるなら、使い勝手はいい。たとえば、冷凍冷蔵トラックがサービスエリアで休憩するたびに満充電にできるから、走行中の「冷やすエネルギー」をキャパシタでまかなうことも可能だ。

欠点の解消に希望

一方で、キャパシタには大きな欠点がある。それは、エネルギー密度が小さいことだ。現状のキャパシタは鉛電池の15分の1程度のエネルギー密度しかない。同じパワーを得るのに、15倍の重さのバッテリになってしまうということだ。これでは、使える場所は限定的である。

もっとキャパシタを「使えるもの」にするためには、エネルギー密度の向上が不可欠だ。それに成功しはじめているのが、東京大学の我々の研究グループである。ナノテクノロジーを利用し、電極材料を革新した。電極としての性能を高めつつ、その表面積を増やした。単位質量あたりの面積が大きくなればなるほど、多くの電気を貯めることができる。開発したのは、窒素を添加した3D-NDP-ACM(多孔質活性炭モノリスの三次元構造体)である。

詳細は以下の論文を参照してもらいたい。

Yanqing Wang, Bunshi Fugetsu, et al. 2017. Nitrogen-doped porous carbon monoliths from polyacrylonitrile (PAN) and carbon nanotubes as electrodes for supercapacitors. [online] 11 Jan. Available at: <http://www.nature.com/articles/srep40259>