福島県喜多方市から驚愕のニュースが飛び込んできた。市議会の令和7年第8回(12月)定例会において、全会一致で「mRNAワクチン(レプリコンワクチンを含む)の接種事業中止の意見書提出を求める陳情」を採択したという*1。頭が頭痛になりそうな話だ。
最初に書いておく。アメリカのトランプ大統領は、2025年10月10日に新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの接種を受けている*2。これが回答だ。その意見書の「接種事業中止を求める理由」が科学的に妥当な内容なら、トランプ大統領の周囲は力づくでも新型コロナワクチンの接種をやめさせていただろう。
もしも「不都合な情報を大統領に隠し、新型コロナワクチンが有害であることを知りつつ、意図的に接種させた」のなら、それは故意だ。もしも大統領の健康を預かる立場の人間が、意見書が指摘する「事実」を知らずに接種させていたのなら、それは未必の故意だ。江戸時代なら前者は打首獄門、後者は切腹ものである。
意見書こそ看過できない
国に提出することを全会一致で採択された「mRNAワクチン(レプリコンワクチンを含む)接種事業中止を求める意見書」は、こちらで読める。
https://www.city.kitakata.fukushima.jp/uploaded/attachment/53388.pdf
以下、ひとつひとつ誤謬を正していく。この意見書こそ看過できないものだ。
<接種当日と翌日の死亡者が294人確認されている>
当日と翌日に死亡したという事実から、「ワクチンのせいだ」と決めつけることを「前後即因果の誤謬」という。この場合
- ワクチンをうったせいで亡くなった
- 亡くなる寸前にたまたまワクチンをうった
の二つの可能性がある。
新型コロナワクチンは100歳を越える高齢者まで、全年齢層にうっている。日本は人口が多く、毎日約4,300人が死亡する国だ。そのうち約200人が突然死だから、全年齢層に接種すると、後者の例が多くなるのは必然である。
他のワクチンに同じ傾向が見られないのは、新型コロナワクチンが危険だからではない。他のワクチンは10歳までに接種するものがほとんどで、この年代は70代80代90代に比べて、死亡率が低いからである。
ある人が「うちの高齢の祖父は、ワクチン接種会場に向かう途中に脳梗塞で倒れて死亡した。順番が逆ならワクチンの副反応として報告されていたんだろうね」という話をしていたが、まさにその通りだ。接種後に脳梗塞で死亡だと、医師には「副反応疑い報告」をする義務がある。
そして統計的に相違を調べる。ワクチン接種群と未接種群を比べて、脳梗塞が接種群に多いかどうかである。接種群に特異的に多いなら、「ワクチンは脳梗塞を増やす危険がある」と判断され、高齢者への接種を中止するなどの措置がとられる。副反応疑い報告は、こういう判断をするために運用されている制度だ。
現時点で、ワクチン接種群に脳梗塞が増えているという統計はない。それどころか、2800万人以上の人々を対象とし、接種開始からの4年間を分析したフランスの研究で、
「mRNA新型コロナワクチン接種者は新型コロナによる死亡リスクが74%低く、全死因による死亡リスクが25%低い」
ことが判明している。接種群は、最初の接種から半年間の死亡率が、非接種群より29%も低く、この傾向が持続していたのである*3。新型コロナに限定せず、全死因死亡について調べた類似の研究は他国からも出ており*4、結果も同じだ。はっきり言えば、「長生きしたいならmRNA新型コロナワクチンを接種しておけ」が結論である。
「死亡例が報告されているが、重大な懸念はない」
という矛盾した表現の謎もこれで解けるだろう。接種後に脳梗塞で亡くなった人がいるのは事実だが、接種した集団のほうが脳梗塞になりにくいから、「ワクチンは脳梗塞のリスクを減らす」というのが現時点での知見だ。むしろうたないほうが重大な懸念である(新型コロナウイルスは心血管系にダメージを与えるから、感染後は脳梗塞のリスクが高くなる。ワクチンはそれを防ぐ)。
<これらの死亡記録を分析したところ、最後の接種から約3か月から4か月後に死亡のピークがみられ、接種後半年以上にわたって死亡率が上昇する傾向があるとの指摘もあり、それらの死因は特定されていないが、看過できない。>
これのもとになったデータは、ワクチンを接種するたびにカウントをゼロリセットするという、杜撰な集計である。毎年接種のワクチンで起算日を最後の接種にすれば、死亡者の全員が「ワクチンをうったら1年以内に死ぬ」という状態だ。なんの意味がある数字なのかわからない。「最後の誕生日を起算日にしたら、誰もが1年以内に死亡している。誕生日は危険だ」と言っているようなものだ。
なにより、秋に定期接種していれば、接種後3か月から4か月に死亡のピークがあるのは当たり前である。単に、冬にさしかかっただけのことだ。高齢者の死亡率は冬に高くなる。
<令和7年6月18日時点で累計進達受理件数13,788件、累計認定件数9,187件、死亡一時金または葬祭料に係る累計認定件数1,020件が公表されている。しかし、前述の自治体データの分析を踏まえると、これらは健康影響の全体像の一部に過ぎない可能性がある。>
ワクチンによる健康被害の認定が遅いこと自体、mRNA新型コロナワクチンが安全である証拠である。さきの例で言えば「接種後に脳梗塞で死亡した」としても、「接種群に脳梗塞が減っている」のであるから、これもそれもワクチンのせいにするのは無理がある。健康影響の全体像をみれば、mRNA新型コロナワクチン接種群のほうが未接種群よりも全死因死亡リスクが低いし、Long COVIDを防ぐ効果があるから、明らかにプラスだ。「接種後の死亡や不調をすべてワクチンのせいにする誤謬」を犯してはならない。
<新型コロナワクチンに使用されたmRNAワクチンは、「標的細胞」が明確に示されないまま特例承認され、接種が開始されたとされており、筋肉注射された薬液が全身をめぐることで、様々な細胞がmRNAを取り込む可能性が指摘されている。その結果、スパイクタンパク質を発現した細胞が免疫反応を受ける可能性がある。>
mRNAは脂質ナノ粒子(LNP)に包まれて筋肉注射され、主に注射部位の筋肉細胞や樹状細胞、リンパ節のマクロファージなどの免疫細胞に取り込まれる。これらの細胞でmRNAが翻訳され、スパイクタンパク質が産生・提示されて免疫応答を誘導する仕組みだ。「薬液が全身をめぐる」としても、ヒトの免疫は外部からのmRNAは異物として認識してすぐ分解にかかるので、長続きはしない*5。
<また、このスパイクタンパク質は、当初すぐに分解されると説明されていたが、接種後長期にわたり検出されたとする報告もある。>
注意してもらいたいのは、
- 接種者全員に起きること
- ごく稀に起きること
- 動物を使った薬物動態試験で起きること
を区別することである。例外的な現象を観察された人は、免疫がものすごく弱っているHIV患者やHCV患者だったりする。本当に年齢や持病を問わず、いろんな人に接種したので、ごく稀に起きる特異な現象はある。しかし、そのことがただちにmRNA新型コロナワクチンの危険性を示すものではない。
がん患者など本当に様々な疾患をもつ人にも接種した結果、現時点でmRNA新型コロナワクチンは「予想以上に安全なワクチンだ」というのが医学的・科学的なコンセンサスだ。その証拠が、全死因死亡の低下である。他の疾患の死亡率まで減らしている(ただし、ワクチンをうつ人のほうが、健康に気を使う人であるというバイアスも関係はしているだろう。それでも、他の病気の死亡リスクを増やしていないことは確かである)。
さらに、動物実験では標準接種量の200倍なんていうとんでもない量のワクチンをうって、何が起きるかをみていたりする。その結果で騒ぐのは慎むべきである。「いっぺんにワクチンを200本もうったりするな」で終わる話だ。
<さらに、新型コロナワクチンの繰り返し接種では、IgG4の誘導等による免疫抑制などが指摘されており、人体への長期的影響について懸念が示されている。>
IgG4抗体が増加するのは、抗原が体内に入りこんだことに対する自然な免疫反応だとみるべきだし、それによって免疫が抑制されているという事実は観察されていない。もしもそれが起きているなら、2021年から医療が大崩壊しているはずだ。1億人が一斉に感染症にかかり、病院通いをするところを想像してみたらいい。収容しきれないし、薬は間違いなく枯渇する。
また、IgG4抗体は新型コロナウイルスに感染しても増加する。ワクチンだけを問題視するのはおかしい。それならば「感染による人体への長期的影響について懸念がある」と言うべきだ(事実である)。これまでの実績をもとに言えば、
「mRNA新型コロナワクチンの接種を中止して、ワクチンによる保護がない状態で、新型コロナに何度も感染するほうが、よっぽど人体への長期的影響の懸念がある」
である。
政治家は国民の人権を守り、生きやすい社会にするのが仕事だろう。より具体的に言えば、安全と健康と財産を守るのが仕事だ。当然、その判断は科学的根拠に基づくものでなければならない。この意見書はじつに残念である。
我田引水だが、喜多方市議会議員のみなさまにおかれては、拙著『制御不能――新型コロナウイルスの不都合な真実』(あけび書房)をご一読いただきたい。とくに第4章に記述したADE of cytokine production(抗体依存性免疫暴走)が重要だ。不活化全粒子ワクチンが失敗だった理由もわかる。いまなお、ワクチンをうって免疫に準備させ、マスクで初期曝露量を減らすことが、なにより大事であることが伝わってほしいと願わずにはいられない。
注記
*1
喜多方市議会・令和7年第8回(12月)定例会結果
https://www.city.kitakata.fukushima.jp/uploaded/attachment/53371.pdf
*2
Trump received Covid vaccine and flu shot during second physical of the year
https://edition.cnn.com/2025/10/10/politics/health-trump-covid-vaccine-flu-shot-physical
*3
COVID-19 mRNA Vaccination and 4-Year All-Cause Mortality Among Adults Aged 18 to 59 Years in France
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.46822
*4
■スウェーデンの報告
Effectiveness of a fourth dose of mRNA COVID-19 vaccine against all-cause mortality in long-term care facility residents and in the oldest old: A nationwide, retrospective cohort study in Sweden
https://doi.org/10.1016/j.lanepe.2022.100466
■日本の報告
Durability of effectiveness of a booster dose of COVID-19 bivalent (ancestral/BA.4-5) vaccine against all-cause mortality in older adults in Japan, October 2022 to September 2023
https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2025.127796
■オランダの報告
Effect of COVID-19 vaccination on mortality by COVID-19 and on mortality by other causes, the Netherlands, January 2021–January 2022
https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2023.06.005
■アメリカの報告
COVID-19 Vaccination and Non–COVID-19 Mortality Risk — Seven Integrated Health Care Organizations, United States, December 14, 2020–July 31, 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7043e2.htm
*5
mRNA新型コロナワクチン承認時の科学的知見がよくまとまっている資料なので、EMA (European Medicines Agency) のモデルナワクチンについての調査資料を紹介しておく。
https://www.ema.europa.eu/en/documents/assessment-report/spikevax-previously-covid-19-vaccine-moderna-epar-public-assessment-report_en.pdf


