ナノテクノロジー研究のプロデュース

2016年12月1日付で、東京大学政策ビジョン研究センターの非常勤講師を拝命。本郷キャンパスに週に一度、通う生活が始まった。

東京大学本郷キャンパス久しぶりのキャンパス、見た目はあまり変わっていないが、細部は大きく変わっている。そもそも、学生時代になじみの法文2号館(学生時代に学んだのは文学部)を通りすぎ、工学部に足を踏み入れること自体が、ほぼ初体験。

所属はナノテクノロジー研究ユニット。「カーボンナノチューブ」(CNT)  という言葉を聞いてからずいぶん時間が経過しているが、いよいよ、様々な応用が始まっている。これからの鍵はセルロースナノファイバー(CNF)との組み合わせだ。これを「バイオカーボン」と名付けた「アドバンストバイオカーボンコンソーシアム」という研究開発プロジェクトが、信州大学と東京大学の間で立ち上がっている。私は「代表プロデューサー」という役割でかかわっており、本年秋、農林水産省の「『知』の集積と活用の場による研究開発モデル事業」に採択された。研究リーダーは遠藤守信・信州大学特別特任教授と坂田一郎・東京大学教授である。

この研究開発プロジェクトの大きな目標は、植物由来のセルロースナノファイバーを大量に使うような新素材の開発とその産業化を果たすことだ。これは何を意味しているかというと、「山に捨てられている間伐材も、山を浸食している竹林も、可食部分ではない、という理由で廃棄されているトウモロコシの芯も、工業原料になる」ということ。日本の農林業をがらりと変える可能性、荒れ果てた山を復活させる可能性をもつプロジェクトなのである。

持続可能な産業革命が、これからまた始まるのだ。現時点で、日本はその最先端を走っている。